その意味で、この「響け!ユーフォニアム」という作品は、後者の要素こそその独自性であったはずです。
若者たちの行動をややライトノベル寄りな筆致で描きながらも、大味ではない微妙な感情の揺らめきであったり、練習と実力の現実であったりが描写されている。
だからこそ、ある程度は生々しい迫真性のある熱い物語になっていたはずです。
しかし、「北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」と銘打たれたこの2巻では、その熱さが失われてしまっています。
主題となっているのは、社交的な希美と、内気なみぞれとの友情。
しかし、二人の関係性の描かれ方はかなり非現実的で、ラノベ的な演出が作風を乱してしまっており、辟易させられます。
二人の仲が修復されるシーンも、まるで安っぽいドラマを見ているようです。
リアル路線が推しどころである限り、もっと繊細で切ないば麺運びこそ、この小説における人間関係に求められているはずです。
正直なところイマイチで、第2巻単独で見れば星1つでしょう。
第3巻の感想
1. あらすじ
見事、全国大会への切符を掴んだ北宇治高校吹奏楽部。
最後の大会に向け練習にも熱が入る中、一つの噂が吹奏楽部に激震を走らせる。
副部長であり部長以上に部活の中心的存在、そしてユーフォニアムの名手でもある田中あすかが部を辞めるらしいのだ。
なんでも、母親が熱心に辞めさせたがっているとか。
実際に母親が職員室で娘を叩く場面を見てしまった久美子は動揺を隠せない。
そして、ひょんなことから久美子はあすかの家にお邪魔することになるのだが......。
2. 感想
離婚とか、勉強とか、そういうのに絡ませてなんとかドラマを起こそうと必死だなというのが感想でした。
あすか以外にも、滝先生が顧問になった理由や久美子の姉の進路等も明かされるのですが、その全てが手垢にまみれた理由で、この小説である独自性は欠片もありません。
せっかくシリーズものとして巻数を積み上げ、キャラクターを作り上げてきたのですから、第1巻・第2巻の展開やキャラクターの特性を活かした物語であって欲しかったです。
特に第1巻と違い、「吹奏楽部」でなくてもよいことばかりだったのが辛いところ。
もっとこの競技らしさ、この部活らしさがなければのめりこめません。
小説版に限っては失速の激しいシリーズだったという印象です。
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