厚生労働省がコロナ対策として製作した接触確認アプリCOCOA。
しかし、肝心の接触通知機能に不具合があり、それが放置されてきたとして問題になっています。
こういうニュースを見ると、日本は時代に応じた公共インフラ整備さえできなくなってしまったのだなと悲しくなります。
昭和から平成前期にかけての「公共事業」といえば、道路敷設のような土木工事だったり、ハコモノづくりのような建設工事でした。
こうした公共事業の功績については賛否ありますが、兎にも角にもモノ自体はできていたわけです。
道路が陥没したり、橋梁が落下したり、ハコモノ施設が崩壊したり。
そんな発展途上国のようなことは滅多に起きず、自動車が通らない道や橋であれ、利用者のいないハコモノであれ、とりあえずモノはしっかりしていたのです。
特に土木関連のノウハウは世界でもかなり高いらしく、東日本大震災後の道路復旧速度なんかは技術の高さや管理体制の良さを示す例としてよく挙げられますよね。
ただ、こういった土木・建築関係の技術を社会インフラ構築に使う機会は急激に縮小していくでしょう。
消滅していくだけの地方に新しい道路やハコモノは必要なく、整備事業等も減少の一途。
三大都市圏と地方を結ぶ道路網や鉄道網の需要も薄くなっていくため、大規模な土木・建築系の公共事業に出番はありません。
人口が集中していて需要が密集している都会ならばハコモノは民間企業がつくりますし、整備すべき道路や鉄道の総延長もたいしたことありません。
それこそ、オリンピックとリニア新幹線が最後の大事業となるでしょう。
もう山の中腹を突っ切って高速道路をつくる必要はないのです。
一方、今回の接触確認アプリのように、IT系公共インフラ整備のニーズは増加していくでしょう。
接触確認アプリのような全国民向け無料ソフトウェアの開発だったり、マイナンバー整備等による電子政府の確立には必ず公共部門による財政支出が必要です。
儲からないから民間企業は参入しないけれども、社会全体を効率化していくために必要な投資だからです。
つまり、公共事業による社会インフラ整備の中心はITへと移行していきます。
移行していきます、と簡単に書きましたが、果たして、移行することはできるのでしょうか。
COCOAの件で明らかになったのは、日本社会にはアプリひとつ製作するノウハウすらないということです。
ここで言う「ノウハウ」とは、IT系の公共事業を完遂させるような、プロジェクト実行能力全体のことを指しています。
日本の官庁にはIT系のプロジェクトを管理する能力がないのです。
もちろん、受注する民間企業側の技量が乏しいのかもしれませんし、単にプログラマーの質と量が足りないのかもしれません。
確かなことは、増加するIT系公共事業ニーズに対応する技術がないということです。
だから、発展途上国で橋梁が落下してしまうのと同じ意味でアプリが機能しないのです。
おそらくですが、IT系公共事業が成功しないばかりに、国民が極端に困る事例がこれから何件も出てくるでしょう。
それこそ、道路がなく、橋がなく、鉄道がなく、電線や公園がないのと同じくらい困る事例が出てきます。
「私達は発展途上国(衰退途上国?)なので、脆弱なITインフラでやり過ごさないといけない」
そういった自覚のもとに過ごす日々は、もう近くまで迫っています。
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