第一の理由は、彼らの給料が高いからです。
年功序列賃金制のもと、無能人材であってもそれなりの収入を得ているため、一人をリストラしたときの効果が高いのです。
第二の理由は、人材ピラミッドの構造上、中高年が余るからです。
縦型の指揮命令系統を持つ組織においては、上層部ほどポジションが少なく、下層部ではポジションが多くなっています。
下層部のポジションを埋めるための若手人材には質だけでなく頭数も求められる一方、上層部は一握りの有能人材で固めることが効率的なので、ピラミッド構造の上部で中高年が余ってしまうのです。
つまり、リストラ局面においてすら採用したばかりの無能人材には目が向けられず、新卒無能人材の影響が経営者の視界に入らない状態が継続するため、新卒一括採用を見直そうとはならないわけです。
以上の理由から、新卒一括採用制度はその自己保存力が強く、ひとたび新卒一括採用を始めてしまうとその制度が半永久的に継続されます。
そんな現状に変革が訪れるときが、果たしてやってくるのでしょうか。
個人的には、転職市場の活況に注目しております。
新卒一括採用を行わない外資系企業・ベンチャー企業の台頭により、日系大企業や官公庁から若手人材の流出が起こっているという話は最近よく聞きます。
日系大企業や官公庁の有能な若手は(年齢を問わない無能人材に支払う給料を補うため)給料が低く抑えられており、(年齢を問わない無能人材の低パフォーマンスを補うため)仕事も理不尽に激務なことが多いと思います。
そうした有能人材の流出が進んでいくと、日系大企業も中核部署に配属できるような若手が不足していることに気づき始めるでしょう。
うじゃうじゃと存在する新卒採用してしまった残存無能若手の束に愕然とするに違いありません。
慌てて若手をキャリア採用しようとしても、新卒一括採用と年功序列賃金制を残したままでは若手に出せる待遇が限られているため、有能な若手はやってきません。
あまりに雑然とした新卒一括採用で有能無能を十把一絡げに採用し、有能人材だけが超早期流出していく。
(リクルーター制度と適当な面接による選抜の精度が低いランダム採用であることは誰もが感じているはずです)
それにより、有能な若手が一握りも存在しなくなり、中核的業務に支障が生じ始める。
そんな状況に直面してはじめて、新卒一括採用の見直しが進むのではないでしょうか。
三菱UFJ銀行がDX人材を初任年収1000万円で採用予定という記事がありましたが、まさに新卒一括採用からポジション別採用への過渡を感じさせる事件であり、個人的にもこのあたりの動きには注目しております。
関連書籍紹介
日系大企業に特有の新卒一括採用はどのようにして始まったのでしょうか。
小熊英二さんが著した「日本社会のしくみ」という書籍では、日本の雇用慣行全体の仕組みとその社会的影響について総体的に論じつつ、新卒一括採用の起源についても詳しく述べられています。
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