小説 「1984年」 ジョージ・オーウェル 星3つ

1984年
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1. 1984年

全体主義への警鐘を鳴らす、言わずと知れた有名小説です。不安定な政治状況から近年でもアメリカなどを中心に売り上げを再び伸ばしています。

テレスクリーンによる監視や、思考の「幅」を狭める新言語ニュースピーク、「憎悪時間」など、全体主義体制が到る悲惨な政治的状況をこれでもかと描く力の鋭さ・強さにおいては文句のつけようがありませんが、小説としてのストーリーにはやや凡庸な面もあり、評価に迷う作品です。

2. あらすじ

舞台は架空の1984年。世界は3つの大国に分割支配されていた。ユーラシア、イースタシア、そしてオセアニアである。オセアニアの首都ロンドンに住むウィンストン・スミスは真理省記録局に勤める中年男性で、過去の新聞などの記録を改竄する仕事をしていた。

そう、オセアニアでは党が発信する都度都度の情報こそが「事実」であり、それにそぐわない過去の記録は全て書き換えられてしまうのである。

それどころか、国民の生活はいたるところに設置された「テレスクリーン」で監視され、少しでもおかしな挙動があれば「思考警察」に逮捕されて拷問を受けてしまう。子供たちへの洗脳教育も凄まじく、党による独裁体制は揺るぎないものに思われた。

そんなある日、スミスは同じ真理省の創作局に勤める女性ジュリアと出会う。ジュリアは表向き模範的な党員として振舞いながら、実は陰で党規違反のセックスを楽しむなど、党の方針に疑問を持ちつつ自分自身の快楽を追求する人物だった。

党による統治に疑問を抱く者同士として惹かれあう二人。やがて、「ブラザー同盟」という反体制地下組織に接触し、党の統治の矛盾を赤裸々に表明した「禁書」を読むことになる。スミスは己を捨て、ジュリアと地下活動のために尽くすことを決意するのだが......。

3. 感想

全体主義的な支配体制の描き方という点では脱帽するばかりです。当時のソ連やドイツの政治を見聞きするだけでこれほどの想像力を働かせられるオーウェルの小説家としての力量、それはいまさら私が言及するまでもないでしょう。

ビッグ・ブラザーやイングソック、ダブルシンクという造語はいまでも政治が全体主義に傾きかけたときに用いられるくらい一般用語となっています。後世の政治への影響力という意味では世界史におけるNo1小説なのではないでしょうか。

ただ、そういった用語や体制の説明が、例えば「禁書」の内容や「ニュースピークの諸原理」として、あくまで説明口調でだらだらと説明されてしまうのは物語性に欠け、概念としては面白くとも展開に起伏をもたせる助けにはなっていません。

また、本筋であるスミスとジュリアの関係や冒険も凡庸なもので、反体制的思想を密かに抱いている2人が通じ合い、地下組織に所属し、しかし、活動や思想が露見して逮捕され、拷問されて終わってしまう、という展開はあまりに捻りがありません。ニュースピークの表現やテレスクリーンの機能を逆手にとった、あっと驚かすような手法が体制側/反体制側のどちらかから出てきて大逆転が決まれば面白いのですが、逮捕される場面も「実は絵画の裏にテレスクリーンがあった」という凡庸な仕掛けが決め手になっており、いまいち感動に欠けます。

オセアニア及びこの1984年の世界を支配する政治的状況は読み物としてたいへん面白く、惹きこまれた面もあるのでかなり評価できますが、物語面では減点せざるを得ず、純粋な小説としての評価は星3つが妥当でしょう。

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