小説 「冬の巨人」 古橋秀之 星1つ

冬の巨人
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1. 冬の巨人

「ブラックロッド」で第2回電撃ゲーム小説大賞を受賞してデビューした、古き良きライトノベル作家である古橋秀之さんの作品。その人気は根強く、2007年に徳間デュアル文庫から刊行されたのち、2014年に富士見L文庫から新装版が発売されております。

フジテレビの「世にも奇妙な物語」で映像化もされた、「ある日、爆弾が落ちてきて」と並ぶ著者の代表作といえるでしょう。

そんな「冬の巨人」ですが、全体的な感想としては、あっさりし過ぎ、薄味すぎといったところです。冒険ものSFファンタジーの定番要素がこれでもかと並べ立てられるのですが、それぞれの掘り下げ方があまりにも浅く、良い意味で心に引っかかるところが何もないからこそすらすらと読めていける作品になってしまっています。

古橋 秀之 (著), 藤城 陽 (イラスト)

2. あらすじ

どこまでも極寒の雪原が広がる世界で、黒い塔のような巨人が背を曲げて歩き続けている。

そんな異形の巨人"ミール"の背の上に、人間たちは都市を築いて生活していた。

主人公であるオーリャも都市の住民であり、神学院でディエーニン教授の助手を務めることで生計を立てている。

ある日、野外調査のため気球で上空へと飛び立ったオーリャは、そこで空を舞う謎の少女、レーナと出会う。

変わった体質を持つレーナを"ミール"に持ち帰り、世話をするオーリャ。

そんな中、"ミール”についての厳しい事実が判明する。この雪原で人類が生きていくための最重要資源、"ミール"が生み出す熱が年々減少しているというのだ。

長いあいだ"ミール”に引きこもり続けていた人類の歴史は、その終わりが近づいている。

悲壮な予感の中で、ついに決定的事件が"ミール"を襲う。

人類は生き残ることができるのか。

そして、謎の少女レーナの正体とは......。

3. 感想

「え、これで終わり?」というのが読み終えた直後の感想です。

"天球"と呼ばれる階層に住み、熱源をほぼ独占している上流階級と、"天球"の下で暮らす下流階級に分断されている世界。人類はみな"ミール"内での生活ばかりに関心を寄せ、雪原の広がる外世界には無関心。

そんな中、下流階級出身ながら神学院で助手として働き、ディエーニン教授とともに外の世界を調査してこの世の真実を求めようとする主人公オーリャ。

そして、そんな主人公に惹かれる上流階級の娘ジェーニャ。

加えて、オーリャが上空で出会う謎の少女レーナ。

ここまで「それっぽい」役者がそろっているのに、ジェーニャやレーナはもちろん、オーリャですらあまり活躍せずに物語は終わってしまいます。

ジェーニャはオーリャに惚れている描写がされるだけの、登場した意味が分からない記号的ヒロインであり、レーナにいたっては意味深長な登場の仕方だったにも関わらず、最後まで身体が光ったり弱ったりするだけ。

オーリャもどちらかというと事態の傍観者であり、「問題」の解決に何ら貢献したりはしません。

物語の根幹となる「問題」というのは、"ミール"の熱源が失われて、人類が"ミール"内で生存する術を失っていく、ということなのですが、どうやって解決まで持っていくのだろうと思いきや、それはなんと、自然解決してしまいます。

オーリャが助手としての日常を過ごしながら、色んな人が色んな方法で「やばいやばい」と言い散らすのを聞いているだだけという、物語とも言えない物語になっています。

普通の物語で言えば、まだまだ登場人物と舞台設定が出そろった序盤、つまり、登場人物各々の立場や性格が説明され、"ミール"変質後の世界という舞台が整った時点、「さぁ、ここからどうなる・どうする」という時点で、なぜか「奇跡の自然解決」が起きて「問題」が消滅し、物語が終わってしまいます。

さすがにちょっと唖然としましたね。

私が読んだのは富士見L文庫の新装版で、ページ数は203。非常に短く、薄く、内容の存在しない小説です。やけに早く読み終わってしまいましたが、「何を読んだのか」を振り返ってみれば実に納得。「何も読んでいなかった」のです。

新装版が出るくらいの人気はある作品ですが、本作を評価している人というのは何を評価しているのでしょうか。

そこに戸惑いを感じてしまうくらい、何もない作品でした。

古橋 秀之 (著), 藤城 陽 (イラスト)

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