小説 「これは経費で落ちません ~経理部の森若さん~」 青木祐子 星1つ

これは経費で落ちません 経理部の森若さん
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1. これは経費で落ちません

いわゆる「ライト文芸」や「キャラ文芸」と呼ばれるジャンルの作品で、「働く女性(都市部の事務員)」が主人公と、流行りの要素を詰め込んだ作品。シリーズは現在(2019年9月)時点で6巻まで刊行されており、累計70万部突破と出版不況の中で気を吐く人気作品です。NHKでドラマ化もされており、2019年7月から放送されています。

しかしながら、私個人としてはあまり楽しめませんでした。いかにもフィクションな「キャラクター」で埋め尽くされる現実感のない職場が舞台で、「経理部」や「経費」という表題の要素もおまけ程度で掘り下げられることもなく、いわゆる「日常の謎」をさらに薄めたような、起伏も何もあったもんじゃない程度の出来事ばかりで物語は進行します。リアリティがないのに日常ものという長所が見出しづらい作品で、なぜヒットしているのか理解しがたいというのが正直な感想です。

2. あらすじ

主人公、 森若沙名子(もりわか さなこ)は 20代後半 。「天天コーポレーション」の経理部に勤めている。部長を含め4人の経理部の中では3番目の年次だが、その的確な経理処理で部長からの信頼も厚い。

そんな仕事ぶりに反映されているのが沙名子の性格であり、決まったスケジュール通り家事や食事を行い、趣味の映画鑑賞を楽しむ姿は堅実そのもの。とはいえ、そんな性格だからか浮いた話もない。

ところがある日、 仕事中の沙名子に一本の伝票が舞い込んでくる。それはテーマパーク代金の領収書。営業の山田太陽(やまだ たいよう)からもたらされたその伝票に沙名子は拭いきれない疑念を抱く。

それは、経費の私費流用の可能性。特に、太陽は会社の新企画「パラダイスカフェ」のプロデュースを任されており、最近はデザイナーとして起用している曽根崎メリー(そねざき めりー)と頻繁に出かけている様子だった。

しかも、太陽は同じ営業部の中島希梨香(なかじま きりか)と付き合っているかもしれないという噂まで立っていた。浮気という側面からも疑心暗鬼になる沙名子だったが、ひょんなことから太陽とメリーが一緒にいる現場に遭遇してしまい......。

3. 感想

ごく普通の、ある意味既に時代遅れのテンプレ的少女漫画の技法をそのまま採用しただけの物語です。地味な(といってもそれなりに美人の)ヒロインが平凡な日常を送っていると、自分とは関係のない世界にいたと思っていたかっこいいヒーロー(ここでは山田太陽、実は沙名子のことが好きで本シリーズは二人の仲の進展が中心軸になっています)が向こうからアプローチしてくれて幸福が転がり込んでくるというわけです。

周囲の人物もいかにも典型的で、(当て馬にされる)派手な美人だったり、お偉いさんの嫌味な女性秘書だったり、仕事でミスが多い若手(主人公がフォローを入れるために苦労する)といった面々。さすがにつまらないと思うのですが、売り上げを考慮するともしかするとある種の王道として受け入れられているのかもしれません。

加えて、恋愛要素に次ぐもう一本の柱、謎解きも全く淡白です。ほんの少しだけひやっとする事件が起こるものの、実は誰かの善意がそういった事態を引き越していたというほっこり展開。これが連作短編で幾度も語られるのですが、「だから?」と言わざるを得ないような小さな事件を特に表現の工夫なく垂れ流してくるのである意味衝撃です。これほどまでに記憶に残らない物語も珍しでしょう。

4. 結論

ときおり自分には全く理解できないコンテンツが流行する。それが世間や社会というものですが、その典型だと感じました。

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