補論
本書には面白い経済学コラムが多く掲載されており、それらが理解を補完してくれるのですが、なかでも印象に残っているのは奢侈税についてのコラムです。
奢侈税とは贅沢品にのみ課税される消費税のようなもので、かつてのアメリカではヨットや自家用飛行機、毛皮などに奢侈税が課されておりました。
しかし、この奢侈税で苦しんだのはお金持ちではなく一般労働者だったというのがコラムのオチです。
お金持ちは奢侈税をかけられた物品の購入を抑制して他の贅沢を楽しんだ一方、例えばヨット製造工場の労働者たちは賃金減少や解雇に苦しみました。
つまり、ヨットの需要は弾力性が高い(価格が少し高くなると大きく需要が失われる)のに対して、ヨットの供給は弾力性が低い(ヨットの製造に支払われる賃金が減っても、労働者はなかなか転職できないし、工場保有者も容易にはヨット工場を別の用途に転換できない)ため、ヨット製造に関わる人々ばかりが損をしたのです。
個人的な考えですが、こういった直観に反するような事象とその裏付けを発見し学ぶことにこそ社会科学探究の真髄があるのではないでしょうか。
直観に頼っても正しいことができるのであれば、特段、そのことについて学ばずとも人類は失敗を犯したりしないでしょう。
しかし、直観こそ間違っているのであれば、学びを通じて直観を補正しなければ失敗を犯してしまいます。
印象的なケース・スタディを通して、経済学的な驚きを思考にもたらしてくれることも本書の特長です。
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