1990年代に「週刊少年ジャンプ」にて連載され、空前のバスケットボールブームを引き起こした大人気漫画「SLAM DUNK」。
連載終了(1996年)から26年の時を経て映画化されることとなり、2022年の12月から上映されております。
現在のところ商業的には非常に成功しておりまして、観客動員数も興行収入も大ヒットレベルに到達。
公開されている映画の観客動員数ランキングでは毎週のように首位を獲得するなど、まさに破竹の勢いで観客を増やしている作品となっております。
私もミーハー的な動機から映画館に足を運んでみたのですが、実際のところ、予想を遥かに上回る感動があり、名作だったな、というのが正直な評価です。
「血と汗と涙のスポ根」物語を背景に、原作でも最も人気の高い湘南高校V.S.山王工業高校戦が描かれるという構成は長期連載作品である「SLAM DUNK」を一本の映画として纏めるのに相応しいばかりではなく、近年のフィクション作品に欠ける「情熱と友情」の大切さを赤裸々に押し出しながらも古臭さを感じさせません。
むしろ、「SLAM DUNK」を未読の世代にとっては極めて清新かつ斬新な側面すらあり、こうした種類の「物語」に触れる良いきっかけになったのではとすら思います。
アニメーションの質や音楽との調和も完璧で、まさに令和を代表するアニメーション映画作品の候補と呼んで過言ではない作品なのではないでしょうか。
あらすじ
神奈川県立湘北高校。
決してバスケットボールの強豪ではない高校だったが、主人公である桜木花道以下、そこに集った六人の男達による共闘の果てに、神奈川県内の強豪校を辛くも退けインターハイ出場の権利を勝ち取ったのだった。
インターハイ1回戦でも湘北の勢いは衰えを知らず、大阪代表の豊玉高校を撃破。
しかし、続く2回戦の相手、山王工業高校はここまでの敵とは一味違う。
前年度までにインターハイを三連覇している圧倒的優勝候補であり、誰の目から見ても湘北の劣勢は明らかだった。
実際に試合が始まるとやはり、その実力差は顕著であり、湘北は苦戦を強いられていた。
苦闘が続くなか、湘北のポイントガードである宮城リョータの脳裏には幼少期を過ごした沖縄での日々が思い出されてきて......。
感想
素晴らしい映画体験だった、というのが総合的な感想となるでしょう。
原作漫画における最後にして最高の試合である「湘南V.S.山王工業」が最新技術を駆使したアニメーションで描かれつつ、その狭間狭間で宮城リョータの過去話を中心に湘南高校のメンバーそれぞれがこの試合に至るまでどのような軌跡を辿って来たのか、という物語が簡潔ながら印象的に描かれます。
本作を語るうえで、まずアニメーション面から語り始めるのか、それとも、物語面から語り始めるのか、という二択は選ぶことが困難な二択ですが、この令和時代にあの「SLAM DUNK」を復活させる意義、という点を重んじるならば、やはり前者から語り始めるべきなのでしょう。
PVでもちらりと見せられては入るのですが、本作、試合シーンのアニメーションが上質です。
バスケットボールというコンタクトが激しいスポーツにおける各選手の動きが、非常に肉厚で、なおかつ繊細に描かれています。
英語で言うところの「リッチ」という形容詞がよく当て嵌まるのではないでしょうか。
これは、アニメーションの技術が近年において極めて進化してきているという事実を反映したクオリティなのでしょうし、それほど技術が熟成してきた現代においてなお、一週間に一度放映しなければならないTVアニメでは絶対に為し得ない表現の「厚み」なのだとおもいます。
まさに、映画館で見る「映画」としてのアニメーション価値、というものが体現されており、その熱い試合展開にはドキドキとワクワク、ハラハラが詰まっていて、比喩ではなく息を飲んでその趨勢を見守ってしまっていました。
(筆者は原作既読者なので結末も知っているのですが、それでも、胸の高鳴りは抑えられなかったです)
さらに言うならば、ひとくちに「アニメーション技術の進化」といっても、本作で表現された「進化」の部類は、あまり浮ついていない、質実剛健な「進化」であったことも個人的には高評価です。
近時においては、アニメーション的な表現の進化と言えば、たとえば新海誠作品に見られるような美麗さであったり、3DCGを用いた壮大で豪奢な表現が目立っているように思われます。
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