【経済学】おすすめ経済学本ランキングベスト4【オールタイムベスト】
青春小説
「グッバイ・コロンバス」フィリップ・ロス 評価:2点|1950年代のユダヤ系アメリカ人コミュニティにおける若者の恋愛と家庭や世代による価値観の相克について【海外純文学】
1959年に出版されたアメリカの恋愛純文学小説で、20代のユダヤ系アメリカ人同士の恋愛を主題としつつ、アメリカにおけるユダヤ人コミュニティ内での価値観分裂に焦点を当てた作品です。若者同士の恋愛については現代日本人から見てもまだ通じる話にはなっているのですが、当時のアメリカ社会の様相であったり、その中で重視されている価値観(特に信仰や純潔についての拘り)という面では、これは現代日本とは全く違う世界の話なのだということを意識しつつ読まなければ混乱するような筋書きになっております。著者は本書を表題作とする短編集で1960年の全米図書館協会賞を受賞しており、当時としてはまさに瑞々しくセンセーショナルな作品だったのでしょう。確かに、翻訳の良さも手伝って瑞々しく端正な文章には惹きつけられるものの、物語そのものにはあまりのめり込めなかったなというのが率直な感想です。あらすじ主人公は大学卒業後図書館員として働いているニール・クルーグマンという青年。ある日、プールで出会ったブレンダ・パティムキンに一目惚れすると、たちまち彼女にアプローチをして成功し、二人は付き合うことになる。しばらくは清純な関係を楽しん...
「涼宮ハルヒの動揺」谷川流 評価:2点|伝説的なライブ回の原作から長編に繋がる布石編までを収録したサブエピソード集【ライトノベル】
中短編集だった第5巻「涼宮ハルヒの暴走」に続く第6巻ですが、本作も中短編集となっております。内容としても前作と同様、夏・秋・冬を中心とした作品が収録されており、長編でいえば「涼宮ハルヒの溜息」や「涼宮ハルヒの消失」の前後に起こった話となっております。感想としては、見どころのある話とそうではない話の差が大きく、それらを平均して評価2点(平均かそれ以下の、凡庸な作品)をつけております。なお、第1巻及び前作(第5巻)の感想はこちらです。あらすじ・ライブアライブついにやって来た文化祭当日。艱難辛苦の末になんとか撮影及び編集を終わらせたSOS団映画「朝比奈あさひなミクルの冒険 Episode00」の上映を尻目に、主人公であるキョンは自分なりの文化祭を楽しんでいた。そんなキョンがふと訪れたのは講堂であり、そこでは数々のバンドが出演するライブが行われている。騒々しいロックバンドが退場したのち、現れたガールズバンドの構成員にはなぜかSOS団の団長である涼宮すずみやハルヒと、その団員である長門ながと有希ゆきの姿があり......。・朝比奈ミクルの冒険 Episode00バニーガールスタイルで商店街の宣伝...
「涼宮ハルヒの暴走」谷川流 評価:2点|無限ループする夏休みに絶体絶命のゲーム対決、そして吹雪の洋館からの脱出劇、SOS団の日常を描いた中編集【ライトノベル】
シリーズ最高傑作と名高い第4巻「涼宮ハルヒの消失」に続く第5巻が本作です。主人公及びヒロインが所属するSOS団の日常(といっても突飛な事件やイベントに巻き込まれる物語ばかりですが)を描いた中編が3編収録されており、それぞれ、夏、秋、そして冬を舞台とした作品になっております。「涼宮ハルヒの消失」がクリスマス前からクリスマスにかけての話だったので、夏と秋の話は前作よりも時系列的に前の話であり、こうしたランダムな刊行順もこの「涼宮ハルヒ」シリーズの特徴だといえるでしょう。さて、そんな本作の感想ですが、中短編集だった第2巻と同様、本作も「涼宮ハルヒ」シリーズに登場するキャラクターが好きな人に向けた中編集となっており、それぞれの作品を単独で見た場合に物語的な美点があるかといえばそうでもない話ばかりだったという印象です。それゆえ、本作を楽しむためにはキャラクターがはしゃいでいるのを見守るといったような読み方がどうしても必要となるでしょう。また、アニメ化の際に良くも悪くも話題となった「エンドレスエイト」も収録されておりますので、原作とアニメの両方を鑑賞して違いを楽しむといった読書方法も悪くはないかも...
「涼宮ハルヒの消失」谷川流 評価:3点|素敵な非日常をもたらす存在、それを肯定することの尊さを描くシリーズ屈指の人気作【ライトノベル】
著名なライトノベルシリーズである「涼宮ハルヒ」シリーズですが、既刊12巻の中でも本作は非常に評価が高く、ファンの中でも本作をシリーズの最高傑作に挙げる人が多い印象です。個人的には第1巻「涼宮ハルヒの憂鬱」を第1位に推したいのですが(おそらくファンの中では第1巻を最高傑作に挙げる人が第4巻を最高傑作として挙げる人に次いで多いのではないかと思います)、本作も手堅い面白さがあり、特に主人公が第1巻冒頭で持っていた価値観が明示的に180度転換する描写があることから第1期完結作として本作を扱うこともできるでしょう。実際、本作による盛り上がりを最後に「涼宮ハルヒ」シリーズの面白さが減衰していってしまうのが辛いところです。また、本作はアニメ映画化もされており、そちらもアニメファンから高い評価を得ています。162分という長尺の映画なのですが、原作に忠実な展開が美麗な作画と意欲的な演出によってさらに面白く描かれており、映画が原作を超えた稀有な例であると言っても反発は少ないと思います。それでは、そんな本作のあらすじと感想を述べていくことにいたしましょう。なお、第1巻及び前作(第3巻)の感想はこちらです。あ...
「かがみの孤城」辻村深月 評価:2点|不登校の少年少女が不思議な空間で深める友情と立ちはだかる「学校」そして「家庭」という苦難【青春小説】
「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞に選ばれてデビュー、その後も破竹の勢いで大ヒット作を連発し、いまや大人気作家としての地位を盤石とした辻村深月さん。特に十代から二十代の若者を主人公とした作品が多く、ミステリという枠組みで宣伝される著作が中心ですが、あくまでミステリ成分は「風味」程度に抑えられており、ミステリ作家というよりも若者の繊細な感情を巧みに描く青春小説の名手として認識されている読書子が多いのではないでしょうか。そんな辻村さんが2017年に著したのが本作です。不登校の中学生たちが一つの不思議な空間に集められ、あるゲームに参加させられる、といういかにも若者的なあらすじの作品であり、第一印象として特段目新しさを感じる書籍ではないのですが、現実には100万部以上が刷られており、2018年度の本屋大賞を受賞、漫画化もされており、2022年の12月には映画化もされるなど、出版不況をものともしない売れっ子ぶりが発揮された作品となっております。というわけでそれなりに期待して読んだのですが、思ったよりは凡庸な作品だったなという印象です。さすがはベストセラー連発作家のエンタメ作品だけあってすい...
「涼宮ハルヒの退屈」谷川流 評価:2点|シリーズファンには嬉しい、キャラクターたちの日常を描いた中短編集【ライトノベル】
ゼロ年代を代表するライトノベルシリーズ、「涼宮ハルヒ」シリーズの第3巻です。第1巻が主人公の高校入学直後を描いた話だったのに対して、第2巻は半年飛んで文化祭の話、そしてこの第3巻になってようやく、時間は第1巻の直後に戻ってきます。構成としても4編が収められた中短編集となっており、あの伝説的第1巻の後にSOS団員たちがどう過ごしていたのかを描いた日常譚を4編収録、そのうち1編が今後の展開への布石となるヒロインの過去話になっております。その意味では、第2巻ではなく、この第3巻こそが第1巻の正統な続編だと言えるでしょう。第1巻及び第2巻の感想はこちら。さて、そんな本作の感想ですが、率直に言えば可もなく不可もなくといったところ。第1巻のような、エンタメと文学を高いレベルで両立する物語性こそありませんが、第2巻のようにひたすら退屈で、醜悪であるとまで評価できるような駄文が書かれているということもありません。第1巻を読んで「涼宮ハルヒ」シリーズのキャラクターが好きになった人にとっては、そんなキャラクターたちの日常を楽しむという限りにおいて、それなりに満足できる作品であると思います。上述の通り、次な...
「涼宮ハルヒの溜息」谷川流 評価:1点|第1巻が持っていた斬新な魅力に急ブレーキをかけてしまった、伝説的人気シリーズの第2巻【ライトノベル】
シリーズ累計発行部数2000万部超を誇る、ライトノベル界の金字塔的シリーズ第2巻です。第1巻についてはその面白さを絶賛したのですが、続巻である本作は一転して低評価としております。第1巻の感想はこちらからどうぞ。本作を低評価とした理由は、第1巻を高評価とした理由と同根となっております。つまり、エンタメに次ぐエンタメという怒涛の展開もなければ、文学的な深みもなく、ただひたすらに、つまらなく、くだらない、物語とさえ呼ぶことが躊躇われる駄文を垂れ流しているからです。あの「涼宮ハルヒの憂鬱」の続巻が出るということで喜び勇んで本作を購入した当時もかなり失望したものですが、あらためて読み返してみても酷いとしか言いようがない作品です。第1巻で完結のつもりだった作品を無理やり引き延ばそうとしたからなのではないか、という噂もありましたが、そんな匂いが如実に感じられる作品であり、「涼宮ハルヒ」シリーズを全巻読破してやろうという気合の入った人以外は本巻を飛ばして第3巻である「涼宮ハルヒの退屈」に進むべきだと助言したくなるほどの駄作となっております。あらすじ涼宮ハルヒとの衝撃的な出会いから半年が経過し、北高にも...
「涼宮ハルヒの憂鬱」谷川流 評価:4点|独特な語り口と突飛な設定から生まれるエンタメの中に文学的テーマ性を潜ませたゼロ年代オタク界隈の金字塔作品【ライトノベル】
2000年代に少しでも「オタク界隈」に触れていた人で、本作のタイトルを知らない人はいないでしょう。大ヒットしたアニメの効果もあり、シリーズ累計発行部数は2000万部超。これを既刊12巻で割ると1巻あたり約167万部ですから、その凄まじさが分かるというもの。均せば12巻連続でミリオンセラーなんて記録は、日本の文芸界において後にも先にも本作だけなのではないでしょうか。ライトノベルが隆盛を極め、エンタメ文芸の本流に立つのではという評価さえあった時期に出現した、まさに「ライトノベル」というジャンルを代表する作品の一つである本作。それでいて、「ライトノベル」といえば異世界ファンタジーか露骨なラブコメディが主流だった状況において、SF要素を加味したジュブナイル青春学園モノとして登場した異端作でもあります。しかも、ライトノベル的なエンタメ要素を備えながらも、世の中や人生に対する洞察という文学的な側面も持ち合わせている作品としても評価されたという、純文学としても一般エンタメ小説としてもライトノベルとしても異端でありながら、そのテーマの普遍性と深さによって様々な界隈に考察と評論の嵐を巻き起こした文芸界の...
「青が散る」宮本輝 評価:5点|テニスと恋愛、勝利と敗北、情熱と哀愁、青春の全てを表現した最高傑作【青春純文学】
1970年代から令和の現在にかけて第一線で活躍し続ける純文学作家、宮本輝さんの作品。1970~80年代には「泥の河」で太宰治賞、「螢側」で芥川賞、「優駿」で吉川英治文学賞を獲得し、2010年代にも「骸骨ビルの庭」で司馬遼太郎賞、「流転の海」で毎日芸術賞を獲得しており、その勢いは留まるところを知りません。その功績が認められ、2010年には紫綬褒章、2020年には旭日小綬章を授与されるなど、格の違う文化的功労者という立場を確固たるものにしています。そんな宮本輝さんの作品の中でも、本作は無冠の作品。松田聖子さんの「青いフォトグラフ」を主題歌にドラマ化がされており、人気作であることは間違いないのですが、宮本さんの代表作と呼ぶ人はすくないでしょう。しかしながら、私の個人的な読書経験史上において、本作は一、二を争う名作として燦然と輝いております。新設大学の一期生として入学した主人公を中心とした、せつなくて情熱的な青春群像劇。「青春小説」というカテゴリにおいて、日本の小説史上1番の面白さと趣深さを持っていると言っても過言ではない作品です。あらすじ主人公の椎名燎平(しいな りょうへい)は大阪府茨木市に...
「仮面の告白」三島由紀夫 評価:2点|同性愛者であることの苦悩と官能が青年の人生を蝕んでいく【古典純文学】
「潮騒」や「金閣寺」等の作品で知られ、戦後を代表する作家の一人として挙げられることが多い三島由紀夫の著した小説。三島由紀夫を文壇の寵児へと押し上げた記念碑的作品であり、代表作を一つ選ぶとすれば本作か「金閣寺」になるというくらいの有名作品です。同性愛を描いた刺激的な作品ということで、私もその革新性に期待して読んでみたのですが、いまとなっては凡庸だなというのが率直な感想。小難しい書きぶりは良くいえば芸術的で妖艶なのでしょうが、個人的には無駄に装飾的なように思われましたし、自分自身が同性愛者であることを主人公が徐々に理解しながら苦悩する、という筋書きにもそれほど衝撃を受けませんでした。つまらないわけではないですが、今日において特段に持て囃されるべき作品かと言われれば、それは違うという印象です。あらすじ病弱な身体に生まれた「私」は、祖母によって外遊びを禁じられ、祖母の眼鏡に適った女友達とばかり遊ぶ幼少期を過ごすことになる。そんな「私」はしかし、幼い頃から女性に惹かれることがなく、魅力を感じるのは専ら逞しい男性の肢体ばかりであった。しかし、大学生になった「私」には園子という恋人ができる。園子に対...
【エンタメ小説】有名エンタメ小説低評価批評集【閲覧注意】
評価1点(最低評価)・珍妙な登場人物たちの謎言動記録・寒々しい恋人描写と軽薄なSF展開・中学生の気持ちを分かっているつもりの作者・お前はいったい何を言いたいんだ?・猫みたいな彼女が理想なんて気色悪いよ・心を操ることができたらミステリは成立しない・冗長で稚拙で安っぽくて何もない青春・高校生男女が出逢えば物語になるわけではない・儚くて繊細な少女を描いたつもり
【青春夜間歩行】小説「夜のピクニック」恩田陸 評価:4点【青春小説】
長期間に渡って小説界の第一線で活躍する作家、恩田陸さんの作品。2016年に「蜂蜜と遠雷」で直木賞を獲るまでは本作が筆頭の代表作として挙げられることが多かったように思います。第2回本屋大賞を受賞してから爆発的に売れ始め、まさに発掘された名作となった作品。その内容は、高校生三年生たちが80kmの夜間歩行に挑むというだけの物語。しかし、その過程で繰り広げられるささやかな心理的すれ違いについての描写が超一級品という、特異な魅力を持った作品です。輝きと後ろめたさの両方を伴う、未熟な友情・恋愛の機微に誰もが郷愁を感じるのではないでしょうか。派手な展開ではなく、耽美で繊細な心理描写と叙情的な夜間歩行の風景描写で魅せる作品。あまり小説を読んだことがない人でも、無類の小説好きでも感動できる小説です。あらすじ甲田貴子(こうだ たかこ)が通う学校には「歩行祭」という特別な行事がある。3年生全員が体育用のジャージを身に纏い、夜を徹して80kmもの道のりを歩くという行事。当日、友人である遊佐美和子(ゆさ みわこ)と歩きながら、貴子は自分に課した一つの試練を思い返していた。その試練とは、この歩行祭のあいだに、ク...
【海外エンタメ小説】おすすめ海外エンタメ小説ランキングベスト7【オールタイムベスト】
本ブログで紹介したエンタメ小説の中からベスト7を選んで掲載しています。「エンタメ小説」の定義は難しいところでありますが、本記事では、肩の力を抜いて楽しめる作品でありながら、同時に深い感動も味わえる作品を選ぶという方針でランキングをつくりました。第7位 「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティ【華麗な推理と意外な犯人が魅力の名作古典ミステリ小説】・あらすじ舞台は真冬の欧州を走る国際寝台列車オリエント急行の車内。ロンドンへ移動するため、名探偵エルキュール・ポワロはイスタンブール発カレー行の列車に乗車していた。しかし、猛吹雪に飲まれた列車はヴィコンツィ(クロアチア)とブロド(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)のあいだで立ち往生してしまう。不安と焦燥に包み込まれる車内、そして事件は起こる。サミュエル・ラチェットというアメリカ人実業家が刺殺された姿で発見されたのだ。ポアロは乗り合わせた乗客たちを一人一人呼び出し、尋問にかける。相矛盾するような証言はしかし、どれもが真実めいて見える。十二か所もの刺し傷を負った死体の謎。果たして、犯人は誰なのだろうか。・短評序盤で殺人事件が起きたあとは、ポワロがひたすら...