【エンタメ】おすすめエンタメ評論雑記4選【雑記まとめ】
青春アニメ
「劇場版 からかい上手の高木さん」赤城博昭 評価:2点|日常系ラブコメの新機軸を打ち出した原作の雰囲気をそのままに表現した小さな感動作【アニメ映画】
2013年から小学館の月刊誌(ゲッサンmini→ゲッサン)に連載されているラブコメ漫画「からかい上手の高木さん」をアニメ映画化した作品。テレビシリーズもしくは原作漫画を鑑賞していることが前提の劇場版となっております。原作は所謂「日常系」のラブコメなのですが、ギャグを中心としたコメディ路線でもなければ、ハーレム的な路線でもなく、主人公が何らかの努力で意中の女の子を「落とす」という昭和・平成古典路線でもない、という点がまず原作の特徴だと言えるでしょう。それでは一体、原作は何をする漫画なのでしょうか。既読者には分かりきったことでしょうが、高木さんという中学生女子が西片という同級生男子に悪戯を仕掛け、西片が動揺するのを楽しむという過程を、西片目線で楽しむという漫画です。突き放した見方をすれば、自分が特に何もしなくても同級生女子が自分のことを好きになってくれて、その女子が好意の照れ隠しとして悪戯を仕掛けてくれるという、圧倒的な精神優位の状態で敢えて弄ばれるのを楽しむ作品となっております。(読者側からすれば高木さんが西片を好きなのは明白だが、超純粋中学生男子という設定の西片はそれに気づいていない。...
「THE FIRST SLAM DUNK」井上雄彦 評価:4点|令和に舞い降りたスポーツアニメーションの傑作、最新の3DCGで蘇った伝説的バスケットボール漫画【アニメ映画】
1990年代に「週刊少年ジャンプ」にて連載され、空前のバスケットボールブームを引き起こした大人気漫画「SLAM DUNK」。連載終了(1996年)から26年の時を経て映画化されることとなり、2022年の12月から上映されております。現在のところ商業的には非常に成功しておりまして、観客動員数も興行収入も大ヒットレベルに到達。公開されている映画の観客動員数ランキングでは毎週のように首位を獲得するなど、まさに破竹の勢いで観客を増やしている作品となっております。私もミーハー的な動機から映画館に足を運んでみたのですが、実際のところ、予想を遥かに上回る感動があり、名作だったな、というのが正直な評価です。「血と汗と涙のスポ根」物語を背景に、原作でも最も人気の高い湘南高校V.S.山王工業高校戦が描かれるという構成は長期連載作品である「SLAM DUNK」を一本の映画として纏めるのに相応しいばかりではなく、近年のフィクション作品に欠ける「情熱と友情」の大切さを赤裸々に押し出しながらも古臭さを感じさせません。むしろ、「SLAM DUNK」を未読の世代にとっては極めて清新かつ斬新な側面すらあり、こうした種類...
「海がきこえる」望月智充 評価:2点|スタジオジブリの若手スタッフたちによって製作された爽やかな青春映画【アニメ映画】
1993年に公開されたスタジオジブリのアニメ映画。監督が宮崎父子でもなければ高畑功でもないというジブリ映画の例外的な作品となっております。というのも、本作が若手スタッフに全てを任せて製作させてみるというジブリ内での企画により出来上がったという背景があります。原作は当時全盛を誇っていた集英社コバルト文庫のスター作家、氷室冴子さんの同名小説であり、確かに、男性作家が青春恋愛物語を描く際に生じがちな少女に対するギトギトした視点がなく、それでいて(友情と恋愛以外では)家族の問題に焦点を当てているという、典型的な女性作家らしい作品だったなと感じました。とはいえ、全体的な評価としては凡作という判断であります。確かにこれといった欠点は見当たらないのですが、かといって推せるポイントもなく、なんとも薄味な作品だったというのが率直な感想です。あらすじ舞台は高知県に存在する中高一貫の私立高校。高校二年生の二学期、主人公である杜崎もりさき拓たくが在籍するクラスに一人の少女が転校してくる。彼女の名前は武藤むとう里伽子りかこといい、田舎街には珍しい、東京からの転校生だった。成績優秀で運動神経抜群、容姿端麗な美少女...
「すずめの戸締り」新海誠 評価:2点|冒険・社会性・家族愛。全要素が中途半端になってしまった新海監督の最新作【アニメ映画】
「君の名は。」の衝撃的な大ヒットで邦画界にセンセーションを起こすと、続く「天気の子」も成功させて国民的アニメ映画監督の地位を固めつつある新海誠さん。そんな新海監督の最新作であり、2022年11月11日から公開されているのが本作となります。本記事執筆時点で興行収入は既に90億円近くに達しているようで、2022年における日本での興行収入ベスト5に入ることを確実にしています。そのうえ、三作連続での100億円超えも視野に入るという人気ぶりなのですから、単なる話題作という以上に多くの人が楽しんで鑑賞しているのでしょう。そんな本作ですが、個人的にはやや凡庸というか、面白い作品になりきれていないように思われました。少女と青年の出会いから始まる日本縦断のロードムービー、自然災害や過疎を題材にしているという現代性、日本的な神事から着想を得た物語展開、そしてもちろん、美麗な映像と音楽の組み合わせ。「面白そう」な要素が揃い踏みしていることは確かなのですが、その全ての要素について掘り下げが中途半端に終わってしまった結果、何とも長所を見出しづらい映画となっております。あらすじ物語の起点は九州某所の田舎町。女子高...
「ジョゼと虎と魚たち」タムラコータロー 評価:1点|名作邦画のリメイクアニメは非常に残念な凡庸恋愛映画【アニメ映画】
2020年12月25日に公開されたアニメーション作品。1984年に著された田辺聖子さんの短編小説が原作で、映画通のあいだでは2003年の実写映画版が名作として知られているようです。とはいえ、印象的なベッドシーンやヒロインが抱える障がいに独特の焦点を当てたことで評判になった実写版とは異なり、アニメ映画はクリスマスに相応しい清らかな純愛ものに仕上がっています。加えて、主人公とヒロインの声を俳優の中川大志さんと清原果耶さんが務め、お笑い芸人である「見取り図」の二人もチョイ役で参加しているところからも、大衆受けを狙ったのだろうなという感じは拭えません。そして、そういった大衆受け純愛路線が結果的に奏功していたかと問われれば、かなり失敗していたのではないかと感じました。著しく退屈というわけではないけれども、どうにも底の浅い凡庸な映画に仕上がってしまっていたというのが感想の大枠です。あらすじ主人公は男子大学生の恒夫つねお。大学では海洋生物学を専攻しており、趣味は海に潜ること。メキシコ留学に向けた資金を貯めるため、ダイビングショップでのアルバイトにも励んでいる。そんな恒夫がダイビングショップから帰る途...
「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」石原立也 評価:3点|スポ根要素と人間関係要素の両輪が魅力の青春吹奏楽アニメシリーズ続編映画【アニメ映画】
同名の小説を原作とするアニメシリーズの第3期に相当する部分ですが、TVシリーズとしてではなくアニメ映画として公開されました。原作の著者は武田綾乃さん。アニメ版は京都アニメーションが手掛けています。原作はともかくアニメ版は私もファンでありまして、本ブログでも継続して取り上げている作品の一つです。アニメ版の第1期、第2期のレビュー及び原作小説のレビューは以下の通りです。序盤~中盤にかけての部活人間関係&スポ根の在り方という本作の原点にまつわる展開の良さに敬意を表しつつも、2冊分の小説を1つの映画に纏めているからか、終盤を中心に粗雑さや異様な駆け足感もあってやや「濃密さ」の不足を感ましたので、評価は3点(全体のレベルが一定以上、なおかつ胸を揺さぶる要素が一つ以上ある佳作)といたしました。お勧めできる作品ではあります。面白かった前半部、イマイチだった後半部に分けて感想を述べていきます。【前半部】あらすじ悲願の全国大会出場を果たした北宇治高校吹奏楽部だったが、全国大会での評価は最低ランクである銅賞。悔しさを噛みしめながらもさらなる躍進を胸に秘める部員たち。しかし、3年生が引退したいま、目下の課題...
「響け!ユーフォニアム2」石原立也 評価:4点|せつなく激しい人間関係が交錯する、波乱万丈の吹奏楽スポ根 前編(第1話~第4話)【青春アニメ】
高校の吹奏楽部を舞台にした青春部活物語。大学生で作家デビューを果たした武田綾乃さんの原作を、深夜アニメ界隈では大きなブランド力を持つ京都アニメーションがアニメ化した作品です。第1期の出来が素晴らしかったため、個人的にも非常に期待していた第2期でした。第1期の感想はこちら。この第2期は、正直なところ第1期よりは良いとは言えず、終盤の失速は残念でした。しかし、それでも並大抵のアニメよりは十分に良いと言える作品だったことは間違いありません。深夜アニメ的すぎる要素を排して更なる工夫を加えれば、午後7時前後やゴールデンの時間帯に流しても評価を得られるような、そのれくらいのポテンシャルがあると感じる作品です。あらすじ主人公、黄前久美子(おうまえ くみこ)は京都府立北宇治高校に通う高校一年生。同じ中学校からの進学者が少ないというだけの理由で北宇治高校進学を決めた久美子は、中学校で所属していた吹奏楽部に引き続き入部する気もなく、また、入学時に聴いた吹奏楽部の演奏は酷いもので、当初は北宇治高校の吹奏楽部そのものに良い印象を抱いていなかった。しかし、同級生である川島緑輝(かわしま さふぁいあ)や加藤葉月(...
「夜は短し歩けよ乙女」湯浅政明 評価:3点|夜の京都を舞台にした不思議で楽しい幻想恋愛エンターテイメント【アニメ映画】
森見登美彦さんの人気小説を原作に、湯浅政明監督が映画化。「夜明け告げるルーのうた」でアヌシー賞を受賞された監督です。小気味よいファンタジー展開に加え締りの良いラストシーンは印象に残ります。エンターテイメントとしてはこういう作品がもっと世に出て欲しいですね。あらすじ冴えない大学生である「私」は美しき後輩、黒髪の乙女に恋をしていた。そんな「私」が乙女との距離を埋めるために執っていた作戦、その名も「ナカメ作戦」。「ナるべくカのじょのメにとまる」の略であり、要は付け回して偶然を装いすれ違うだけの行動である。サークルOB・OGの結婚式の二次会に参加している今日も、二次会で乙女に近づくチャンス。しかし、乙女の行先はいつも気まぐれ。夜の先斗町で飲み歩いたり、幼き日に読んだ絵本を探して古本市を訪ねてみたり、文化祭のゲリラ演劇で代役ヒロインを務めたり、風邪のお見舞いに京都じゅうを駆け巡ったり。そんな乙女に(勝手に)振り回される「私」と、幻想的なほどに可愛らしい「乙女」。そして、主人公を取り巻く愉快な大学生と大人たちが織り成す、一夜限りのファンタジックエンターテイメント。感想湯浅監督らしい、現在の日本にお...
「ユーリ!!! on Ice」山本沙代 評価:2点|リアルな試合描写が光るBL寄りのフィギュアスケートアニメ【テレビアニメ】
男子フィギュアスケートを題材にしたオリジナルアニメ。海外の有名スケーターにも注目されておりました。いわゆるBL的な描写はやや食傷気味でしたが、ほとんど全編をスケートの場面に費やす構成は思い切ったもので、良い効果を発揮していると感じました。あらすじ主人公、勝生勇利(かつき ゆうり)はフィギュアスケートの特別強化選手。しかし、シニア5年目のシーズン、初グランプリファイナルで大敗を喫してしまう。失意のまま実家のある長谷津に戻る勇利。大学を卒業したこの年、現役続行か否か悩んでいた。そんなとき、ネットにアップロードされた勇利の動画を見て、勇利に興味を抱き始めた人間がいた。その名はヴィクトル・ニキフォロフ。世界選手権5連覇を果たし、なおもフィギュアスケートの歴史を変え続けるロシアの選手。ひょんなことからヴィクトルが勇利のコーチになることが決まり、勇利は進退を賭けたシーズンに挑む。そして、このヴィクトルと勇利の出会いが、勇利の運命を大きく変えていくことになる。感想大筋のストーリーは勇利が日本の地方大会からグランプリファイナルまでを勝ち進んでいくだけで、大きな捻りがあったりするわけではありません。心理...
「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」 新房昭之 評価:1点|青春恋愛SF要素をそれっぽく詰め合わせただけの意味不明作品【アニメ映画】
1993年に岩井俊二監督が手掛けた同名テレビドラマを原作としたアニメ映画。広瀬すず、菅田将暉、松たか子と、有名女優・俳優が声優として起用されています。宣伝を含め、出版社やテレビ局が本腰を入れて予算を投入したのは分かるのですが、結果的に意味不明という評価を受けても仕方がない作品になってしまったと思います。あらすじとある海辺の町に暮らす中学一年生、島田典道(しまだ のりみち)。夏休みの登校日、クラスメイトの男子達は「花火は横から見たら丸いのか、平べったいのか」という話題で盛り上がっていた。そう、この日はお祭りで打ち上げ花火が上がる日でもあった。そんな中、典道はクラスメイトの女子である及川なずな(おいかわ なずな)から「かけおち」に誘われる。しかし、これは典道が導いた結果だった。当初、なずなは典道の友人である安曇祐介(あずみ ゆうすけ)を誘っていたのだが、典道は手に入れた「もしも」の力で運命を変えたのである。母親の再婚に伴う引っ越しに抵抗したいなずな。典道となずなは逃避行のなかで何度も両親や友人に捕まってしまうが、そのたびに「もしも」を使ってやり直す。そして、やり直すたびに歪になり、現実感を...
「響け!ユーフォニアム」石原立也 評価:4点|せつなく激しい人間関係が交錯する、波乱万丈の吹奏楽スポ根一筋縄ではいかない人間関係が交錯する波乱万丈の吹奏楽スポ根【青春アニメ】
2015年に放送された、高校の吹奏楽部を舞台にしたアニメーション作品。「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」を手掛け、深夜アニメ界隈では評価の高い京都アニメーションの制作です。原作は武田綾乃さんが著した同名小説であり、ライト文芸が全盛の文芸界ではありますが、どちらかというと昔ながらのジュブナイル青春小説という装いの作品です。「吹奏楽」がテーマなので、音声を入れられる映像表現でさらに磨きをかけられると思ったのかもしれませんが、ライトノベルでもライト文芸でもない原作で勝負をかけてくるところに、京都アニメーションが他のアニメ制作スタジオと一線を画そうとしている気概を感じます.そんな本作ですが、近年の深夜アニメでは稀にみる出色の作品であると感じました。昔ながらの「スポ根」的な要素を上手く現代に蘇らせた作品であり、なおかつ、人間関係を主軸としたヒューマンドラマを魅力的に描けている作品でもあります。時おり挟まる過度な、いわゆる「百合」描写を除けば、そのまま午後6~7時台で放送されていてもおかしくないような、そんな王道青春部活物語になっております。あらすじ舞台は京都府宇治市、主人公は高校の新入生である...