経済

川村元気

「億男」川村元気 評価:1点|宝くじで三億円を当てた男が旅の末に気づく「お金」と「幸福」の関係性【マネーエンタメ小説】

数々の大ヒット映画をプロデュースしたことで知られる川村元気さんの小説第2作が本作となります。 古くは「電車男」や「告白」といった実写映画でヒットを飛ばし、近年では「君の名は。」や「ドラえもん のび太の宝島」といったアニメ映画に携わったことで名を上げた人物です。 本作も何十万部と売れているとのことで期待して読み始めたのですが、全く期待外れな読書経験となりました。 しかも、単に期待外れではなく結構衝撃的な読書経験でもありました。 というのも、一般に良い小説を書くためにはこれをしてはいけないという事項が本書内では次々と実行され、まさにそういった要素によって本書はつまらない作品となっていたからです。 本当にこの作者は小説を読んだことがあるのだろうか、小説を読んで一度でも感動したことがあるのだろうか、そんな疑いさえ抱いてしまうほどです。 しかし、この作品が世間では受け入れられているのですから、もう小説というものは今後このような形になってしまうのかもしれないという思いもあり、非常に侘しく感じられます。 あらすじ 弟が残した三千万円の借金を肩代わりし...
生き方・自己啓発

「FIRE 最強の早期リタイア術」クリスティー・シェン&ブライス・リャン 評価:4点|FIRE入門から中級クラスの知識と手法を総覧する、本場アメリカ仕込みの決定版FIRE書籍【資産運用】

経済紙やビジネス書の界隈においてFIREという言葉が耳目を集めるようになって久しいですが、そんなFIREの考え方や具体的実践方法を示した書籍として、特にFIREの起源国であり本場でもあるアメリカ発の書籍として紹介されることの多い著作が本書となります。 当概念に詳しい方にとっては耳にタコかもしれませんが、FIREとはFinancial Independent Retire Earlyの略称であり、日本語に訳せば「経済的に独立して早期に退職する」という意味になります。 要は会社組織への金銭的な依存をなくし、一般的な退職年齢とされる60歳や65歳を待たずに退職することで自由な人生を謳歌しようというわけです。 そう聞くとフリーランスや一人親方として独立するということかな、と考える方が多数でありましょうし、そういった手に職をつけて独立するという観念もFIREと無関係なわけではありません。 しかし、この時代に置いて新しく設えられたFIREという言葉は、どちらかというと、そういった職業人としての自立を示すのではなく、専ら資産運用で生活費を賄えるようにすることで、(非自発的)...
社会学・歴史・スポーツ

「やさしくない国ニッポンの政治経済学」田中世紀 評価:2点|人助けもしなければ社会参加もせず、それでいて貧乏な日本とその処方箋【社会学】

日本人の良いところは他人に優しくするところであり、お人好し過ぎる点が国際外交やビジネスの場面で仇になってしまうほど日本人は優しいのだ。 こうしたステレオタイプ的な日本人像は、特に日本人のあいだで長く語られてきた典型的日本人像であります。 (自分で自分たちのことを「優しい」と思っているなんて、個人的にはどうしようもなく気持ち悪いですが......) 東京オリンピックの招致やインバウンド需要取り込みのために近年では「おもてなし」の精神が強調される機会も多く、こうした日本人の自己像はますます強化されているのではないでしょうか。 そんな風潮に一石を投じた記事が「Yahoo!ニュース」に投じられたのは2019年10月のこと。 本書のプロローグもまた、この記事の紹介から始まります。 日本人は、本当のところ世界の中でも全然「優しくない」集団なのではないか。 そんな疑念を皮切りに、日本人の利他性/利己性を社会科学的に分析。 貧困問題とも絡めながら論じた著作となっております。 目次 プロローグ 序章 人にやさしくない、貧しい...
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生き方・自己啓発

「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015」橘玲 評価:2点|サラリーマンはコスパが悪い【資産運用】

経済や金融に造詣がある作家として活躍している橘玲さんの著作。 2002年に発売された本書は内容の画期性からベストセラーかつロングセラーとなり、「2015」や「新版」という形で改訂されながら今日でも読まれています。 その内容は、資産形成を行って蓄財し、サラリーマンとしてでなくフリーランス、あるいはマイクロ法人の社長になることで徹底して節税しつつ有利に融資を得てさらに投資をしろ、というもの。 当時としては斬新だったかもしれませんが、投資や節約についての情報が氾濫している現代においては凡作になってしまったかな、というのが個人的な感想です。 目次 Prologue 1995-2014 PART1 人生を最適設計する資産運用の知識 PART2 人生を最適設計するマイクロ法人の知識 PART3 人生を最適設計する働き方 感想 Part1では、サラリーマンがなんとかお金持ちになる方法として、住居費と生命保険費用の見直しを中心とした節約と、投資の重要性が説かれます。 とはいえ、インデックス投資でガンガン積み立てろ、というスタンスではな...
経済・金融・経営・会計・統計

「勝っている投資家はみんな知っているチャート分析」福島理 評価:1点|本当に何も知らない初心者向けのチャート解説本【資産運用】

大手ネット証券会社マネックス証券のアナリストである福島理氏の著書。 株式投資の世界においては、各企業の業績や周辺環境から株価の割安/割高を判断するファンダメンタル分析と、株価そのものの推移傾向から将来の値動きを予想するチャート分析という、大きく分けて2つの分析手法があり、本書は後者の入門本という位置づけです。 もちろん、入門本なのですから、一から説明するという趣旨は分かります。 しかし、本書の説明はあまりにも形式的であり、インターネットで簡単に手に入る情報しか紹介されてないうえ、その内容が劇的に分かりやすかったりするわけでもありません。 おまけ程度についている各章僅か数ページずつの漫画もいまいちチャートとの関連性が分かりづらく、あまり理解の助けになっていないという印象。 投資ブームに乗っかっただけの著作だと感じました。 目次 Part1 過去の高値と安値 Part2 ローソク足 Part3 トレンドライン Part4 チャートパターン Part5 移動平均線 Part6 MACD Part7 ボリンジャーバ...
社会問題

あまりにもつまらない日本社会にまつわるデータと所感

「今日の仕事は楽しみですか」というキャッチコピーを掲げた広告がSNSで大炎上したのは最近のことです。 広告会社が批難され、広告が撤回されるという結末を迎えたわけですが、日本社会が抱える諸問題の結実として、目の前の一日が多くの人にとってあまりにもつまらないという現実があるのではないでしょうか。 ギャラップというアメリカの調査会社によると、熱意溢れる社員の割合において、日本は139か国中132位とあまりにも低い数字が叩き出されているようです。 引用元: 原因はいろいろあるのでしょうが、やはり、大企業では無意味なくせに複雑で難易度の高いペーパーワークや調整作業が蔓延っており、一方、中小零細企業や介護・外食・アパレルといった職種においてはブラック労働が蔓延っていることが原因なのでしょう。 大企業や公務員は年功序列賃金制が要因で、中小零細企業等や非正規・派遣労働は利益の薄さやその構造的な要因によって給料が上がりづらいことも、この「熱意」に関係しているのかもしれません。 また、多くの大企業が採用しているジョブローテーションと全国転勤も人生に対する自...
ドラゴン桜

「ドラゴン桜2」三田紀房 評価:3点|丸くなって復活した現代風教育漫画【青年漫画】

2007年に完結した「ドラゴン桜」の続編。 人気ドラマとなった前作に続き、本作もドラマ化されております。 低偏差値の高校生を画期的な方法で東大合格に導いていくカタルシスが絶妙だった前作とは違い、本作で東大を受験する生徒たちは偏差値50前後のいわば中偏差値な高校生たち。 しかも、東大合格に導く手法もアプリの活用であるなど「現代風」に媚びてしまっているのがやや破壊力不足に感じました。 普通の高校生が一年間頑張れば東大に合格することができる、をコンセプトにしているようですが、設定が丸くなったぶん展開も丸くなり、常識破りの方法で驚かせると言うよりも、現代の常識を伝える漫画になってしまっています。 それゆえ、やや漫画としての面白さには欠けると思ってしまった次第です。 ただ、現代における教育についての啓蒙漫画としてはそれなりによく出来ており、特に家庭教育についての助言や「勉強」の先にあるもの、現代社会を生きるうえで必要な「勉強」以外のスキルについての言及は示唆的であると思います。 (14巻までを読んだ感想です) あらすじ 桜木健二の活躍により...
☆☆☆☆(教養書)

【経済学入門の王道】教養書「マンキュー経済学 ミクロ編」グレゴリー・マンキュー 評価:4点【経済学】

目次 第Ⅰ部 イントロダクション 第Ⅱ部 市場はどのように機能するか 第Ⅲ部 市場と厚生 第Ⅳ部 公共部門の経済学 第Ⅴ部 企業行動と産業組織 第Ⅵ部 労働市場の経済学 第Ⅶ部 より進んだ話題 感想 世界で最も有名な経済学の教科書であり、特にアメリカでは長年に渡り有名大学で採用されてきた入門書です。 近年ではその古典派的な傾向が批判され、より(アメリカ的な意味での)リベラルな教科書への置き換えが進む傾向にあるという記事もありますが、本書こそ伝統的な経済学の考え方を学ぶにはうってつけだという証左でもあるのだと思います。 (よりリベラルな教科書となるとクルーグマンあたりでしょうか) オーソドックスな経済学の思考枠組みが丁寧に語られるという内容のため、経済学についての新しい知見という意味での驚きは少なかったのですが、大変優れた「教科書」であることはひしひしと実感できたため、本記事では本書の「教科書」としての美点を3つ語っていきます。 ①一から十まで論理的かつ丁寧に説明する 社会的な事象に...
ビジネス

【メディア論】おすすめメディア論雑記3選【雑記まとめ】

商業主義と価値観社会 テレビもニコニコ動画も敗北した 公共放送の将来 おすすめ社会学本ランキング 当ブログを訪問頂きありがとうございます 応援クリックお願いします!
ビジネス

【経済ビジネス】おすすめ経済ビジネス雑記5選【雑記まとめ】

新卒一括採用は構造的に永続する 電子書籍の普及が書籍の質を向上させる 無意味な大学教育を駆逐せよ 正社員共同体の虚しいほど強固な紐帯 学歴よりも資格よりも生き方が重要 当ブログを訪問頂きありがとうございます 応援クリックお願いします!
雑記

【現代社会】多くの人は10代で就職するべきだし、これからそうなっていくだろう

文部科学省の発表によると、令和2年の大学進学率(大学(学部)・短大(本科)進学率)は58.6%。 これは過去最高の数値である。 グラフの傾きを見る限り、大学進学率はこれからも伸びていきそうなものである。 しかし、個人的にはそうならないと予想する。 短期的にはコロナ不況の影響によって大学進学率は低下するだろう。 家計が苦しくなると大学進学を諦める高校生が多くなるからだ。 1998年以降、大学進学率が前年比で低下したのは2012年と2013年の二回。 2011年も前年比+0.1%と伸び率が非常に低かった。 リーマン・ショックの影響が家計に顕在化したためだと推測できる。 コロナ・ショックの影響も今後数年で顕在化してくるだろう。 だが、それ以上に深刻なのは労働者不足の問題だ。 リーマン・ショック以降の景気回復期において、常用労働者の過不足DI(※)は常に大幅な人手不足を示しており、コロナ不況下においてさえ働き手が不足している状態は変わらない。 ※労働者不足と回答した事業所の割合から過剰と回答し...
社会学・歴史・スポーツ

「ブルシット・ジョブ」デヴィッド・クレーバー 評価:3点|無意味な仕事ばかりが増大していく背景を社会学的に分析 【社会学】

イェール大学准教授やロンドン大学教授を歴任した社会人類学者、デヴィッド・グレーバー氏の著書。 社会人類学者としてはもちろん左派アナキストの活動家としても知られている人物であり、“Occupy Wall Street ”[ウォール街を占拠せよ](※)運動でも主導的な役割を果たしたことで一躍有名になりました。 ※リーマンショックの直後、金融機関の救済にのみ奔走し、若者の高い失業率等に対して有効な対策を打てなかったアメリカ政府に対する抗議運動。 本書の他にも「負債論──貨幣と暴力の5000年」や「官僚制のユートピア──テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則」といった著作があり、刺激的な理論を通じてアカデミズムと現実社会を積極的に繋ごうとしていた学者でもあります。 そんなグレーバー教授が2018年に著したのが、本作「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」。 原題は“Bullshit Jobs”のみですが、邦題では「クソどうでもいい仕事の理論」という副題が付されています。 さて、この「クソどうでもいい仕事」ですが、事務職の労働者であれば誰も...
政治制度・統治機構・法学

教養書 「コラプション なぜ汚職は起こるのか」 レイ・フィスマン他 星3つ

1. コラプション なぜ汚職は起こるのか ボストン大学の経済学者レイ・フィスマン教授とカリフォルニア大学の政治学者ミリアム・A・ゴールデン教授による「汚職」についての共著。二人とも異なるアプローチから「汚職」を研究してきたこの道の大家であり、それでいて本書は一般向け(といっても「汚職」の普遍的構造に関心を持つ「一般」向けですが)の著作になっております。 学術書ではないことから事例中心の記述となっておりますが、個々の汚職を個人の道徳的資質の問題として矮小化するのではなく、様々な汚職の事例を「均衡」という思考枠組みの中で捉え、学術的な視点から論じていくのはまさに本格派といったところ。度肝を抜かれる面白さとまではいきませんでしたが、この分野に興味がある方にとって知的な興奮をもたらしながらも肩の力を抜いて読める本だといえるでしょう。 2. 目次 第1章 はじめに第2章 汚職とは何だろう?第3章 汚職がいちばんひどいのはどこだろう?第4章 汚職はどんな影響をもたらすの?第5章 だれがなぜ汚職をするのだろうか?第6章 汚職の文化的基盤とは?第7章 政治制度が汚職に...
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