社会学

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創作論・物語論

教養書 「千の顔を持つ英雄」 ジョーゼフ・キャンベル 星3つ

1. 千の顔を持つ英雄哲学者・神話学者として有名なジョーゼフ・キャンベル教授の代表的著作で、ジョージ・ルーカス監督が本作を参考にして映画「スター・ウォーズ」シリーズを製作したと述べていることでも有名です。世界各地の神話に見られる「英雄の旅」。一見、それぞれの神話は全く異なる物語や意味を提示しているようで、その実、そこには共通の構造や意味があり、それこそ過去の人々が神話を構築して後世に伝えようとしたある種の「真理」だという画期的な神話解釈で脚光を浴び、今日まで創作者のバイブルとして扱われています。2. 目次プロローグ モノミスー神話の原型第一部 英雄の旅第二部 宇宙創成の円環エピローグ 神話と社会3. 感想神話での「英雄の旅」における典型的な展開が短く説明されたのち、それを立証するために大量の古今東西神話エピソードが紹介されるという流れで基本的には話が進んでいきます。とはいえ、さすが「哲学者・神話学者」という著者の肩書だけあって、決して読みやすい本ではありません。紹介される神話のエピソードはほとんどが断片的なもので、普通の人にとって「ああ、あの話ね」とピンとくるエピソードはほとんどないと...
社会学・歴史・スポーツ

教養書 「単一民族神話の起源」 小熊英二 星3つ

1. 単一民族神話の起源 その1「日本人は1つの民族を起源としている」「日本人は大和民族の末裔である」。政治に関心のある人ならば、そんな言説をどこかで耳にしたことがあるかもしれません。あるいは、「日本人は農耕民族」「日本人気質」「島国根性」「統一性が高い」くらいならば政治に関係のない(と言うと政治に関心の高い人からは怒られるかもしれませんが)日常生活の中でも一度は聞いたことがあるに違いありません。しかしながら、 厳密な意味であれ比喩的な意味であれ、日本人が単一の属性を持っている、もしくは、単一の民族から構成されているという言説や意識はどこから来ているのでしょうか。 よくよく考えるまでもないことですが、人類の祖先はアフリカのとある地域から世界各地へ広がったのですし、定住が始まって以降も世界との様々な交流の中で人類の混血は進んでいて、何がしかの意味で日本人(その定義自体も微妙ですが)の起源が特別に単一であるということはないでしょう。それでも、私たちの日常生活には広く「単一民族意識」的なものが敷衍しています。 「民族」という言葉はそれこそ定義が曖昧かつ錯綜しているので、アカデミックな場では...
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」永田カビ 評価:2点|自分に自信がない状態を克服する再生物語【コミックエッセイ】

pixivで連載されていたコミックエッセイの書籍化作品。「寂しさのあまり性体験をしたこともないのにレズ風俗に行く」というセンセーショナルな煽り文句と、その切実な内容のコントラストが魅力です。あらすじ大学中退後、精神的な病気を患い、アルバイトも長く続かなかった著者、永田カビ。親との関係も上手くいかず、頭には「死」がよぎる。「なにくそ、立ち直ってやる」。そう意気込み、息苦しさから自分を解放するために選んだ手段。それはレズビアン風俗に行くことだった。生きづらい現代で自分に自信を持つとはどういうことか。レズ風俗での体験を通じ、著者が自分として生きていく方法を掴んでいく物語。感想共感できる人とできない人が真っ二つに分かれる作品でしょう。真っ二つになる基準は「自分に自信を持っているか否か」です。非常に個人的な観点ですが、現代を生きる人々を敢えて二つに切り分けるならば、その基準として「自分に自信を持っているか否か」を使うのはかなり良いアイデアなのではないかと感じます。そこには、個人の性格とそれを形成してきた家庭や社会の環境が如実に反映され、しかも、自信を持っている人/いない人同士は決して相互に理解し...
社会学・歴史・スポーツ

【社会学】「孤独なボウリング」 ロバート・パットナム 星4つ

1.孤独なボウリング「社会関係資本」という概念に光をあて、様々な分野に影響を与えた本です。著者のパットナム教授はこの本で一躍スター研究者となりました。ご近所づきあいや会合などの社会的紐帯の減少という、誰もが個人としては感じていることを米国全体というスケールで分析し、その原因、そして影響を社会的・政治的なものに結びつけた大著。もはやどの分野でも無視できなくなった「社会関係資本」をアカデミック界に知らしめた作品として、非常に読みごたえがありました。2. 感想本書は5部構成となっており、そのうちメインとなるのは第2部から第4部までです。 第2部では、社会関係資本の濃淡が20世紀のあいだにどのように推移してきたかが膨大なデータとともに語られます。政治参加・市民参加・宗教参加・職場でのつながり・慈善活動・インターネット。わたしたちをとりまくあらゆる「繋がり」が分析の対象となりますが、驚くことに、どの分野を分析しても結論はただ一つに収斂していきます。それはすなはち、米国における「社会関係資本」が、20世紀初頭に増加→大恐慌期に一時的減少→第二次世界大戦~60年代まで増加→十数年の停滞→現在まで続く...
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