日本史

社会学・歴史・スポーツ

教養書 「単一民族神話の起源」 小熊英二 星3つ

1. 単一民族神話の起源 その1 「日本人は1つの民族を起源としている」「日本人は大和民族の末裔である」。 政治に関心のある人ならば、そんな言説をどこかで耳にしたことがあるかもしれません。 あるいは、「日本人は農耕民族」「日本人気質」「島国根性」「統一性が高い」くらいならば政治に関係のない(と言うと政治に関心の高い人からは怒られるかもしれませんが)日常生活の中でも一度は聞いたことがあるに違いありません。 しかしながら、 厳密な意味であれ比喩的な意味であれ、日本人が単一の属性を持っている、もしくは、単一の民族から構成されているという言説や意識はどこから来ているのでしょうか。 よくよく考えるまでもないことですが、人類の祖先はアフリカのとある地域から世界各地へ広がったのですし、定住が始まって以降も世界との様々な交流の中で人類の混血は進んでいて、何がしかの意味で日本人(その定義自体も微妙ですが)の起源が特別に単一であるということはないでしょう。それでも、私たちの日常生活には広く「単一民族意識」的なものが敷衍しています。 「民族」という言葉はそれこそ定...
谷崎潤一郎

小説 「細雪」 谷崎潤一郎 星3つ

1. 細雪 戦前から戦後にかけて活躍した小説家、谷崎潤一郎。いまなお評価が高く、ファンの多い彼の代表作ともいえる作品が「細雪」です。新潮文庫版は上中下巻の構成で出版されておりまして、執筆に4年を費やしたという大作。映画化3回、テレビドラマ化6回という数字が文学の古典ながら世俗にも通じる魅力をもった作品であることを表していますね。 やや冗長な表現や本筋から外れたエピソードなどが多いながら、やはり読みごたえのある作品だったというのが感想です。もちろん、そういった冗長さや寄り道部分を評価する人もいるでしょうから、私の星3つという評価が低すぎると感じる人はいても高すぎると思う人は少ないのではないのでしょうか。凋落しつつある旧家の娘が結婚相手を探すというストーリーは婚活全盛の今日においてむしろ示唆的ですらありますし、人物の描かれ方の今日との対比という点でも深く読み込んでいける作品だと感じました。 2. あらすじ(上巻) 時代は1930年代、蒔岡家の次女幸子は芦屋に暮らしていた。同居するのは夫であり婿養子でもある貞之助と、一人娘の悦子、そして蒔岡家の三女である雪子に、四女...
百日紅

【百日紅】葛飾北斎とその娘が主人公。江戸時代を舞台にした連作短編漫画 評価:1点【杉浦日向子】

1. 百日紅 漫画家であり江戸風俗研究家でもあった杉浦日向子さんの作品。 杉浦さんのオリジナル作品として「百物語」と並ぶ代表作だとされています。 2015年には映画化されており、アヌシー国際アニメーション映画祭や第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門などで賞を獲得しております。 葛飾北斎とその娘であるお栄を中心に江戸の風俗を描く、という他にはない珍しいジャンルというところは目新しいのですが、物語は凡庸で、主人公格の二人が著名な絵師であるということもあまり活かされてはいません。 時代考証の精緻さという面で評価する人は評価するのでしょうが、決して娯楽的面白さを求めて手を出す作品ではないでしょう。 2. あらすじ 有名な絵師としての地位を確立しながらも、葛飾北斎は長屋で質素に暮らしている。 同居人は三女のお栄と居候の善次郎。 二人とも北斎の弟子であり、お栄は北斎の代筆をするほどの腕前。 善次郎も江戸の町で徐々に頭角を現してきていた。 しかし、お栄は地黒で、父の北斎にさえ「アゴ」と呼ばれるくらいに容姿が芳しくな...
田辺聖子

「絵草紙 源氏物語」田辺聖子 評価:3点|美貌の貴公子に篭絡されていく女性たちを描いた平安女流文学【古典文学】

芥川賞作家である田辺聖子さんが訳し、絵草子画家として著名な岡田嘉夫さんの美麗な挿絵が多数掲載された作品。 ダイジェスト版の源氏物語が読みやすい訳で収録されており、手に取りやすい日本文学の古典となっております。 1984年の出版ですが、むしろ現代語訳としても全く古びておらず、近年の過度に崩した訳などよりはよほど読書に値するもので、源氏物語の耽美な世界を気軽に堪能するにはうってつけでしょう。 あらすじ 帝は妻の一人である桐壺更衣を溺愛するが、更衣がそれほど高い身分の出身でなかったために、生まれてきた息子は臣籍降下させられてしまう。 その息子の名前は光源氏。 世の人が賛美するほど美しい青年に育った源氏だが、妻として迎えた葵の上は堅物の貴婦人で満足できない。 世の魅力的な女性たちへの恋心を抑えられない源氏は、今日も閨へと忍び込む......。 感想 古文の授業では文法を理解する必要があって小難しい印象がある作品ですが、小説家が現代語訳しただけあって、本書はさらさらと読みやすく楽しめる商品になっております。 いかにも「平安時代...
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