恋愛小説

島本理生

「ナラタージュ」島本理生 評価:2点|美しい文章と陳腐な少女漫画風の物語【恋愛純文学】

恋愛小説家として著名な島本理生さん。 高校在学中に「シルエット」で群像文学新人賞優秀賞を獲得して純文学文壇にデビューした若き俊英であった一方、2018年には「ファーストラヴ」で直木賞を獲得するなど、エンタメ小説家としての顔も持ちながら長きに渡って一線で活躍している作家です。 そんな島本さんの作品の中でも、おそらく一番有名なのが本作でしょう。 「この恋愛小説がすごい! 2006年版」で第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」で第1位、本屋大賞で第6位を獲得した作品で、著名な文学賞を獲得したわけではないものの、島本さんの代表作として挙げられることが多い作品です。 それゆえ、期待を持って読んでみたのですが、期待はずれだったというのが正直な感想。 文章表現の美しさはさすがと言わざるを得ない一方、陳腐な少女漫画風の物語は面白みもなく鼻につきます。 あらすじ 主人公は女子大学生の工藤泉(くどう いずみ)。 ある日、高校時代の恩師である葉山貴司(はやま たかし)から、演劇部の人数が足りないので助っ人として公演に出てくれないかと誘われる。 泉...
小説特集

【エンタメ小説】有名エンタメ小説低評価批評集【閲覧注意】

評価1点(最低評価) ・珍妙な登場人物たちの謎言動記録 ・寒々しい恋人描写と軽薄なSF展開 ・中学生の気持ちを分かっているつもりの作者 ・お前はいったい何を言いたいんだ? ・猫みたいな彼女が理想なんて気色悪いよ ・心を操ることができたらミステリは成立しない ・冗長で稚拙で安っぽくて何もない青春 ・高校生男女が出逢えば物語になるわけではない ・儚くて繊細な少女を描いたつもり
トマス・H・クック

【米国流の青春ミステリ】「夏草の記憶」トマス・H・クック 評価:2点【アメリカ文学】

日本では「記憶」三部作で有名なアメリカのミステリー作家、トマス・H・クック。 「緋色の記憶(原題:The Chatham School Affair)」でエドガー賞を獲得し、アメリカでも一定の評価を得ております。 本作「夏草の記憶(原題:Breakheart Hill)」も日本では記憶三部作として売り出された三作品の一角。 (原題を見ての通り作品間には何の関連もないのですが、プロモーションのため強引な訳出がされています) その内容はアメリカ風青春ミステリといった嗜好の作品であり、内気な男子高校生ベンの美人転校生ケリーに対する恋愛を軸に話が進みますので、まるでよくある日本の文芸作品を読んでいるかのような錯覚に陥ります。 もちろん、青春モノとしてだけではなくミステリとしても日本国内で評価されておりまして、2000年の「このミステリーがすごい! 海外編」では3位に入っております。 そんな「夏草の記憶」ですが、普通だったというのが端的な感想です。 決定的な悪い点はなく、良い点は微妙にある作品。 3点(平均以上の作品・佳作)と2点(平均的な作品)...
田辺聖子

「絵草紙 源氏物語」田辺聖子 評価:3点|美貌の貴公子に篭絡されていく女性たちを描いた平安女流文学【古典文学】

芥川賞作家である田辺聖子さんが訳し、絵草子画家として著名な岡田嘉夫さんの美麗な挿絵が多数掲載された作品。 ダイジェスト版の源氏物語が読みやすい訳で収録されており、手に取りやすい日本文学の古典となっております。 1984年の出版ですが、むしろ現代語訳としても全く古びておらず、近年の過度に崩した訳などよりはよほど読書に値するもので、源氏物語の耽美な世界を気軽に堪能するにはうってつけでしょう。 あらすじ 帝は妻の一人である桐壺更衣を溺愛するが、更衣がそれほど高い身分の出身でなかったために、生まれてきた息子は臣籍降下させられてしまう。 その息子の名前は光源氏。 世の人が賛美するほど美しい青年に育った源氏だが、妻として迎えた葵の上は堅物の貴婦人で満足できない。 世の魅力的な女性たちへの恋心を抑えられない源氏は、今日も閨へと忍び込む......。 感想 古文の授業では文法を理解する必要があって小難しい印象がある作品ですが、小説家が現代語訳しただけあって、本書はさらさらと読みやすく楽しめる商品になっております。 いかにも「平安時代...
立原正秋

【猥雑だった昭和の日本】小説「恋人たち」立原正秋 評価:2点【純文学】

1960~70年代にかけて一世を風靡した作家、立原正秋さんの作品です。 1966年に直木賞を獲っておりますが、それまでに芥川賞の候補にもなるなど、純文学も大衆文学もこなす万能の作家でした。 本作は根津甚八さんと大竹しのぶさんの主演でテレビドラマにもなっています。感想としては、現代の感覚からすれば「ありえない」作品です。 一般的に考えれば、この21世紀に純粋な娯楽作品として読んで楽しい作品ではないでしょう。 ただ、この作品・作家が「人気だった」ということを踏まえて読めば昭和という時代への洞察を得られるのではないかと思います。 あらすじ 1960年代前半、鎌倉の街に、三つ子の男兄弟が別々に暮らしていた。 彼らの父、中町周太郎には妻である初子がいたが、彼ら三兄弟は周太郎が結婚する前に交際していた笹本澄子という女性の子供だった。 初子が石女だったため周太郎には三人以外の子供はなく、中町家は三兄弟の長男である周太郎が継ぐことになっている。そんな道太郎だったが、大学を中退して以来、家庭教師と賭博で生計を立てていた。 酒場で娼婦を買い、...
川上弘美

「センセイの鞄」川上弘美 評価:2点|穏やかな大人の恋愛小説【純文学】

芥川賞作家、川上弘美さんのベストセラー小説です。 谷崎潤一郎賞を受賞した「純文学」なのですが、異例なほど売れた作品。 小泉今日子さん主演で映画化もされています。 大人の恋のなかにある淡くて切ない心境に感動できる一方、登場人物の現実感や物語の起伏という点ではイマイチな作品でした。 あらすじ 37歳独身のOL、大町月子は居酒屋で高校の恩師と再会する。 「センセイ」こと松本春綱は月子の30歳年上。 奥さんを亡くしているセンセイと、彼氏のいない月子。 二人は居酒屋で、あるいはキノコ狩りで、徐々に打ち解けあってゆく。 そんな中、高校の同級生である小島孝が月子にアプローチする。 月子はその誘いを断り、自分の中での先生への想いを明確にしていく。 それでも、なかなか決定的なところまで踏み出せない。 しかし、小島孝に旅行に誘われたことをセンセイに打ち明けると、意外にもセンセイが「島に行きませんか」と誘ってきて......。 感想 紳士的で穏やかなセンセイとの、大人の恋愛。 センセイに惹かれていく月子の内面が抒情的...
越谷オサム

「陽だまりの彼女」越谷オサム 評価:1点|ご都合主義的な展開と不自然なヒロインが織り成す駄作【恋愛小説】

「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」 そんなキャッチコピーのもと、一時期は書店でかなりプッシュされていた作品。 売り上げはミリオンセラーにまで至り、映画も大人気とのことですが、物語の構造的にちょっとこれを楽しむのは無理があるだろうという点が多くある作品で個人的には駄作だと感じました。 あらすじ 主人公、奥田浩介は交通広告代理店の若手営業マン。 ある日、営業先のランジェリーメーカーを訪れたとき、ある女性と再会する。 その女性の名前は渡会真緒。 浩介と彼女はかつて中学校の同級生であった。 非常に頼りなかったかつての彼女とは打って変わって、いまやデキるキャリアウーマン街道まっしぐらの真緒に、浩介は驚きを隠せない。 そんな真緒も、浩介との再開を喜んでいた。 かつて中学校でいじめられていたところを浩介に救われた彼女は、浩介と過ごした日々を大切に想っていたのである。 社会人として出会った二人だったが、その仲が縮まるのに時間はかからなかった。 無事、幸せな結婚生活が始まったのだが、しばらくすると、彼女に体調不良が頻発す...
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