アニメ

クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲

「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲」原恵一 評価:2点|大人たちが選ぶのは無邪気な享楽か責任ある幸福か、子供向け映画の異色作【アニメ映画】

1992年に始まり、現在まで続く大人気アニメシリーズ「クレヨンしんちゃん」の劇場映画シリーズ第9作目にあたる作品です。 放映当初はその下品な内容から猛烈な批判を浴びるも、絶大な子供人気を誇ったことからゴールデンタイムのアニメとして定着。 その後、徐々に家族愛を中心としたハートフル寄りの作風が意識されるようになり、いまなお地上波で放送され続ける超長寿アニメの一つとなっております。 そんな「クレヨンしんちゃん」シリーズは毎年アニメも放映しているのですが、中でも大きな人気を得ているのが本作。 「クレしん」らしいギャグテイストな作風を基調としながらも、当時の大人世代をターゲットにした切なくノスタルジックなテーマで物語がつくられており、子供は爆笑し大人は泣いた作品として知られています。 そんな本作をいまになって見返してみたのですが、印象的な場面は多いものの物語の作り込みが甘く、一本調子感が拭えない映画であるように思われました。 基本的には子供に向けた作品でそこまで複雑な脚本にはできないだろうという批判は正論として受け取りますが、大人受けという意味で見ても、当...
アイの歌声を聴かせて

「アイの歌声を聴かせて」吉浦康裕 評価:2点|AI搭載の転校生がもたらす波乱万丈の青春学園物語【アニメ映画】

2021年10月29日に公開されたアニメ映画で、監督は吉浦康裕さん。 「イブの時間」「アルモニ」「さかさまのパテマ」等の作品を手掛けた監督で、国内の映画祭では文化庁メディア芸術祭では複数回入賞しており、アニメ映画界隈では知られた存在です。 そんな吉浦さんにとって久方ぶりの長編作品となる本作ですが、その内容は「イブの時間」 と同じく、吉浦さんのライフワークともいえる「AIとの共存」と「高校生学園もの」を掛け合わせた作品。 序盤の展開こそAIという要素を活かした面白い側面も見られましたが、全体としては凡庸な青春学園物語だったという印象があり、ぎりぎり佳作とは言えない凡作だと感じました。 あらすじ 舞台は世界的な巨大企業「星間エレクトロニクス」のAI実験都市である景部市。 極めて同質性の高い企業城下町となっており、市立景部高校に通う生徒の親はたいてい星間の関連企業に勤めているというほど。 農業ではロボット田植え機が活躍し、市内を走るバスは無人運転など、AI実験都市らしい光景が日常に溶け込んでいる。 そんな景部市に住む高校生、天野悟美(あまの ...
サマーゴースト

「サマーゴースト」loundraw 評価:3点|高校生たちと幽霊によるひと夏の不思議な経験【アニメ映画】

2021年11月12日に公開された上映時間40分の短編アニメーション映画です。 監督はイラストレーターのlaundrawという方で、近年書店でよく見かけるようになった青春系ライト文芸の表紙イラストを多く手掛けている人物。 やたらに青色で窓や空から光が神々しく射しているあの画風ですね。 イメージとしては、以下のような小説の表紙が代表的だと言えるでしょう。 また、脚本はエンタメ小説家として往年の売れっ子である安達寛高(=乙一)さんが務めており、イラストレーター出身者による監督と小説家出身者による脚本という野心的な意欲作となっております。 上映館も多くない作品ですので、そこまで期待せずに観に行ったのですが、思っていたより良質な作品だったという印象。 高校生たちが経験したひと夏の不思議な体験がさらりと描かれており、気軽に鑑賞するには十分な作品です。 あらすじ インターネットを通じて知り合った3人の高校生、友也、あおい、涼。 特定の場所で夏に花火をすると現れるという幽霊「サマーゴースト」を呼び出すため、三人は空港の跡地へと向かう。 ...
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☆☆(映画/アニメ)

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」石立太一 評価:2点|戦争しか知らない少女は「愛してる」の意味を知りたい【ファンタジーアニメ】

第5回京都アニメーション大賞を獲得した同名小説を原作とする深夜アニメです。 2019年及び2020年には映画も公開されており、2021年には金曜ロードショーでも放映されるなど、深夜アニメとしてはかなりの大ヒットを記録した作品となっております。 また、2019年の映画は本作の制作会社である「京都アニメーション」が死者36名を出す放火事件からの復帰後第一作にもあたり、特にアニメファンのあいだでは無事公開されたというだけでも感動はひとしおだったようです。 「京都アニメーション」といえば、古くは「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん」、最近では「響け!ユーフォニアム」といったヒット作を手掛けた会社として知られており、本作の美麗な作画にはその実力が存分に発揮されているといえるでしょう。 そんな本作ですが「戦争しか知らなかった元少女兵が代筆屋としての職務を通じて人間らしい心情を理解し獲得していく」という物語の大枠そのものは個人的にも好みで、20世紀前半のヨーロッパ風な世界を舞台にしている点も気に入っています。 ただ、一つ一つの物語(本作は一話完結形式です)の脚本や、キャラ...
機動戦士ガンダム

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」村瀬修功 評価:2点|普遍的なサスペンスに見せかけたガンダムオタク向け作品【アニメ映画】

1979年から続く「機動戦士ガンダム」シリーズの最新映画で、1989年に発売された同名小説が原作となっております。 いわゆる「ガンダム世界内の歴史」においては「逆襲のシャア」という映画の続編にあたり、初代ガンダム(ファーストガンダム)が宇宙世紀79-80年を描いた作品であるところ、本作は舞台は宇宙世紀105年、つまり約35年後の世界。 とはいえ、私が鑑賞した限りでは「逆襲のシャア」を知らなくても鑑賞に問題はないと思われました。 しかし、本作の問題は別の場所にあります。 気取らないドキュメンタリー調の演出や素晴らしい作画は褒めることができますが、物語の筋があまりにも意味不明で、市街地戦は迫力がある一方でモビルスーツ同士の戦闘は魅力に欠けます。 また、登場人物たちの寒い言動も影響してか、どうしても「子供が考えた『大人の世界』を描いた映画」という印象を抱いてしまいます。 あらすじ 宇宙世紀105年。 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀と35年が経過した世界。 地球に居住できるのは選ばれた特権階級とその生活を...
エンタメ

御伽原江良の引退に捧ぐ

2021年3月をもってVtuber事務所「にじさんじ」からの卒業を発表したバーチャルユーチューバー「御伽原江良」。 YouTubeチャンネルの登録者数は50万人を突破し、一時は「にじさんじ」内でも2位につけるなど、看板ライバーの一人でした。 2020年4月にはNBCユニバーサル・エンターテイメントからメジャーデビューを果たし、まさに成功者への道を歩んでいた途上における突然の引退。 Vtuberファン界隈が騒然としたのも不思議ではありません。 「あーゴミカスゥ、〇ね」のような小気味の良い暴言。 「我にじさんじぞ」のような独特の罵り文句。 3Dお披露目配信における「ギバラギバラ高収入」という掛け声。 同じく3Dお披露目配信における昆虫食のような捨て身の企画とそれに対するリアクション。 ゲーム実況の技量や歌唱力というより、その純粋なエンターテイメント性で人気を博していた点が私好みなVtuberだったこともあり、個人的にも喪失感はひとしおです。 4月にはチャンネル及び全アーカイブの削除が行われ、インターネットの伝説となった御伽原江良。 ...
新世紀エヴァンゲリオン

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」庵野秀明 評価:2点|伝説のコンテンツにピリオドを打つ苦肉の大団円【アニメ映画】

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』4部作の最終作であり、1995年のTVアニメシリーズから続くエヴァンゲリオンシリーズの完結作でもあります。 前作である「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の感想はこちらから。 そして本題である本作の感想ですが、どうにかこうにか「エヴァ」を終幕させた作品といったところ。 不満点を挙げればきりがありませんが、様々な要素が散逸して収集がつかなくなっている「新世紀エヴァンゲリオン」という作品の歴史にそれなりのエンディングを用意してなんとかピリオドを打った努力だけは激賞されるべきでしょう。 ここがおかしい、あれが変だ、と指摘するのは簡単なことですが、いまから「新世紀エヴァンゲリオン」を完結させにいくとして、本作よりもまともな形で終わらせることは誰が指揮をとろうが困難なのだろうと思います。 あの「エヴァ」が完結したということ、そのために相応の努力が払われたのだということを確認するための、まさに古参ファンのための作品です。 あらすじ フォースインパクトの発生後も葛城かつらぎミサト率いる反NERV組織WILLEは各地を転戦...
新世紀エヴァンゲリオン

【駄作への急落】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」庵野秀明 評価:1点【アニメ映画】

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の感想はこちら あらすじ エヴァ初号機と第10使徒との交戦により発生したニア・サードインパクトから14年が経過。 葛城ミサトは反NERV組織WILLEを率い、NERVによる人類補完計画を阻止するべく戦いを続けていた。 そんな中、14年振りに目覚めた碇シンジはWILLEの旗艦Wunder内部で葛城ミサトや式波・アスカ・ラングレーと再開する。 ところが、二人がシンジに向ける言葉や行動は非常に冷たく、シンジは異常を感じ取る。 WILLEの艦隊がNERVによる強襲を受けると、シンジは綾波レイ搭乗のエヴァ初号機と接触。 初号機に連れられてWunderを脱出し、レイとともにNERVへと向かうのだった。 NERVでレイとも顔を合わせ、新しい友人である渚カオル(なぎさ かおる)とも親しくなったシンジ。 ようやく元気を取り戻しかけたシンジだが、4年前に起こったニア・サードインパクトとその後の顛末を知ることになり……。 感想 何もかもぶち壊しにしてしまったという印象です。 シンジがエヴァン...
新世紀エヴァンゲリオン

【大人になれ、オトコになれ】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」庵野秀明 評価:4点【アニメ映画】

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の感想はこちら あらすじ エヴァンゲリオン初号機のパイロットとして幾度かの戦闘に参加し、戦果を収めてきた碇シンジ。 彼の住む第3新東京市に新しいエヴァンゲリオンとそのパイロットが現れる。 エヴァンゲリオン2号機と共に現れた少女の名前は式波・アスカ・ラングレー。 シンジとアスカ、そして零号機のパイロットである綾波レイは共闘して使徒と戦い、勝利を得る。 深まる三人の友情と、各所から寄せられる称賛にシンジは充実感を覚えていた。 そんなある日、アスカがエヴァンゲリオン3号機起動実験のテストパイロットとして起用されることになる。 しかし、3号機は突如暴走を開始。 シンジ搭乗の初号機が3号機を止めるために出撃するのだが……。 感想 「序」に引き続き、少年がどのように大人になっていくかが描かれます。 最序盤では精神的に幼いシンジと周囲との差が間接的に描写されることが印象的でした。 3人目のパイロットとしてアスカが来日するのですが、アスカはレイとシンジのことをそれぞれ「えこひいき...
新世紀エヴァンゲリオン

【大人になれ、オトコになれ】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」庵野秀明 評価:3点【アニメ映画】

1990年代に放映されたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版であり、原作を再構築(リビルド)した作品として製作されております。 90年代の作品ではあるものの、凄まじい人気はいまでも健在。 現実世界でも様々なコラボが行われているため、アニメ好きという方でなくとも名前くらいは知っているのではないでしょうか。 そんな名作のリメイクである映画シリーズは4部作となっており、これまで3作品が公開されております。 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」 舞楽における幕構成の概念「序破急」からタイトルが取られており、公開年はそれぞれ、2007年、2009年、2012年と、長い時間をかけて製作されているシリーズになっております。 ファンの方々の忍耐強さと、人気の根強さが伺えますね。 そんな三作品を視聴してみたのですが、特に「序」と「破」は良作だと感じました。 頼りなくて幼稚な自己認識・世間理解しか持っていなかった少年が大人の「オトコ」になっていく。 その過程を生々しく迫力満点に描写してい...
映画/アニメ特集

【アニメ映画】おすすめアニメ映画ランキングベスト5【オールタイムベスト】

本ブログで紹介したアニメ映画の中からベスト5を選んで掲載しております。 私の好みもあり、バトルやファンタジー、ハーレムというよりはヒューマンドラマをテーマとした作品が中心となっております。 第5位 「聲の形」山田尚子 【「いじめ・再生・聴覚障がい」異色の青春物語】 ・あらすじ 石田将也(いしだ しょうや)は活発な性格の小学6年生。 日常をそこそこ面白く過ごしていたが、どこか退屈でもあった。 そんなある日、将也のクラスに西宮硝子(にしみや しょうこ)という転校生がやってくる。 彼女は重い先天性の聴覚障がいを抱えており、声によるコミュニケーションを上手くとることができない人物だった。 将也のクラスでは硝子へのイジメが始まり、イジメの強度は次第に深刻化していく。 そして、硝子が不登校になってしまった日、クラスで学級裁判が行われることになる。 学級裁判の中で、将也はクラスメイト全員から裏切られ、唯一の主犯へと祭り上げられてしまうのだった。 翌日からイジメの新しいターゲットになってしまった将也は、過酷な状況に耐えな...
ジョゼと虎と魚たち

【青春恋愛】アニメ映画 「ジョゼと虎と魚たち」 監督:タムラコータロー 星2つ

1. ジョゼと虎と魚たち 2020年12月25日に公開されたアニメーション作品。 1984年に著された田辺聖子さんの短編小説が原作で、映画通のあいだでは2003年の実写映画版が名作として知られているようです。 とはいえ、印象的なベッドシーンやヒロインが抱える障がいに独特の焦点を当てたことで評判になった実写版とは異なり、アニメ映画はクリスマスに相応しい清らかな純愛ものに仕上がっています。 加えて、主人公とヒロインの声を俳優の中川大志さんと清原果耶さんが務め、お笑い芸人である「見取り図」の二人もチョイ役で参加しているところからも、大衆受けを狙ったのだろうなという感じは拭えません。 そして、そういった大衆受け純愛路線が結果的に奏功していたかと問われれば、かなり失敗していたのではないかと感じました。 著しく退屈というわけではないけれども、どうにも底の浅い凡庸な映画に仕上がってしまっていたというのが感想の大枠です。 2. あらすじ 主人公は男子大学生の恒夫(つねお)。 大学では海洋生物学を専攻しており、趣味は海に潜ること。 メ...
☆☆(映画/アニメ)

アニメ映画 「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」 監督:石立太一 星2つ

1. 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 京都アニメーションが手掛ける同名テレビアニメシリーズの映画版で、2020年9月18日に公開されました。既に100万人近い動員数と10億円以上の興行収入を記録しており、十分に大ヒットだと言えるでしょう。 しかし、個人的にはやや凡庸な映画だったという印象を受けました。 もちろん、美麗なアニメーションや音楽は流石の高品質だったのですが、欠点として、戦争描写の非現実性や、物語の最終目的が「愛している」の意味を知るという点が鼻につきます。 手紙の代筆を通じて家族や恋人を繋ぐ役割を果たす代筆屋の物語、という比較的リアル路線の部分が感動への訴求点となっている作品だったので、なおさら、時おり露呈するいかにも「深夜アニメ」や「ラノベ」的側面が本作の足をかなり引っ張っているように思えたのです。 2. あらすじ 4年間に渡る大陸戦争が終結してから幾何かの時間が経過し、世界には久方ぶりの平和が訪れていた。 ライデンシャフトリヒ国の首都ライデンに住む18歳の少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンもそんな平和を享受...
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