【実写映画】おすすめ実写映画ランキングベスト4【オールタイムベスト】
「死ぬ瞬間の5つの後悔」ブロニー・ウェア 評価:3点|「もっとお金を儲ければよかった」という人はいない【生き方】
介護人として数多くの人物を看取ってきた著者がそれぞれの人物の最期に焦点を当て、彼ら/彼女らが死の直前にどのようなことを後悔していたのかを綴った著作になります。元々出版を予定していた本ではなく、著者のブログが世界的に読まれるようになり、その結果として出版に至ったという「草の根」の支持から生まれた本です。この手の本によくある、文字がやたらに大きくて行と行のあいだも極端に広く、見開き2ページごとにサブタイトルが一つという形式の本かなという先入観をもって購入したのですが、意外なことに、字がびっしりと詰まった読み応えのある本でした。著者に介護を受けた人々が、人生の最終盤に何を想い、著者とともにどのような行動を起こしたのか。人生でやりすぎてしまうこと、人生でやり残してしまうことの典型が淡々と語られる著作であり、ノンフィクション作品としての切ない魅力と、残りの人生をどう生きるかについて考えさせられる洞察を持った作品になっております。目次後悔一 自分に正直な人生を生きればよかった後悔二 働きすぎなければよかった後悔三 思い切って自分の気持ちを伝えればよかった後悔四 友人と連絡を取り続ければよかった後悔...
「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015」橘玲 評価:2点|サラリーマンはコスパが悪い【資産運用】
経済や金融に造詣がある作家として活躍している橘玲さんの著作。2002年に発売された本書は内容の画期性からベストセラーかつロングセラーとなり、「2015」や「新版」という形で改訂されながら今日でも読まれています。その内容は、資産形成を行って蓄財し、サラリーマンとしてでなくフリーランス、あるいはマイクロ法人の社長になることで徹底して節税しつつ有利に融資を得てさらに投資をしろ、というもの。当時としては斬新だったかもしれませんが、投資や節約についての情報が氾濫している現代においては凡作になってしまったかな、というのが個人的な感想です。目次Prologue 1995-2014PART1 人生を最適設計する資産運用の知識PART2 人生を最適設計するマイクロ法人の知識PART3 人生を最適設計する働き方感想Part1では、サラリーマンがなんとかお金持ちになる方法として、住居費と生命保険費用の見直しを中心とした節約と、投資の重要性が説かれます。とはいえ、インデックス投資でガンガン積み立てろ、というスタンスではないところに著者の新参者ではない感があります。20年近く下がり続けた日経平均株価の例や、IT...
「勝っている投資家はみんな知っているチャート分析」福島理 評価:1点|本当に何も知らない初心者向けのチャート解説本【資産運用】
大手ネット証券会社マネックス証券のアナリストである福島理氏の著書。株式投資の世界においては、各企業の業績や周辺環境から株価の割安/割高を判断するファンダメンタル分析と、株価そのものの推移傾向から将来の値動きを予想するチャート分析という、大きく分けて2つの分析手法があり、本書は後者の入門本という位置づけです。もちろん、入門本なのですから、一から説明するという趣旨は分かります。しかし、本書の説明はあまりにも形式的であり、インターネットで簡単に手に入る情報しか紹介されてないうえ、その内容が劇的に分かりやすかったりするわけでもありません。おまけ程度についている各章僅か数ページずつの漫画もいまいちチャートとの関連性が分かりづらく、あまり理解の助けになっていないという印象。投資ブームに乗っかっただけの著作だと感じました。目次Part1 過去の高値と安値Part2 ローソク足Part3 トレンドラインPart4 チャートパターンPart5 移動平均線Part6 MACDPart7 ボリンジャーバンドPart8 一目均衡表Part9 RSIPart10 フィボナッチ感想株式投資の経験がある人ならば、目...
「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」キングスレイ・ウォード 評価:2点|硬派なビジネス・エリートによる人生の指南書【生き方】
カナダ人の実業家、キングスレイ・ウォード氏が実の息子に宛てた手紙という形でビジネスマンとしての理想的な生き方を説く著作です。大学進学を控えた息子に贈る第一通から、会社を継いで新社長となる息子に贈る第三十通まで、ビジネスで成功する秘訣から、プライベートを含めた人生全体を成功させる秘訣までを、いかにもこの時代のアングロサクソンな父親らしい、情実のある書きぶりで語っていきます。実質的な中身としては、様々な自己啓発本やビジネス書に書かれている内容と重複するものばかりですが、平易な書きぶりと、息子の成長に合わせて段階を踏んで物事を伝えていくという部分に独自性があります。ただし、本作が善として推す価値観はまさに(カナダ人ですが)アメリカン・エリートのそれであり、いわゆるバリキャリ的で家父長的な行動原則に満ち溢れています。そういう書籍が好きな人、あるいは、エリートビジネスマンや管理職として、好んでタフな交渉に臨んだり、進んで部下を率いている人にとっては得るものがあるでしょう。ただ、文芸や映画が好きな人にとって面白い本かと言われれば、ちょっと胃もたれがするかな、といった印象です。目次第一通 敢えて挑戦...
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」石立太一 評価:2点|戦争しか知らない少女は「愛してる」の意味を知りたい【ファンタジーアニメ】
第5回京都アニメーション大賞を獲得した同名小説を原作とする深夜アニメです。2019年及び2020年には映画も公開されており、2021年には金曜ロードショーでも放映されるなど、深夜アニメとしてはかなりの大ヒットを記録した作品となっております。また、2019年の映画は本作の制作会社である「京都アニメーション」が死者36名を出す放火事件からの復帰後第一作にもあたり、特にアニメファンのあいだでは無事公開されたというだけでも感動はひとしおだったようです。「京都アニメーション」といえば、古くは「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん」、最近では「響け!ユーフォニアム」といったヒット作を手掛けた会社として知られており、本作の美麗な作画にはその実力が存分に発揮されているといえるでしょう。そんな本作ですが「戦争しか知らなかった元少女兵が代筆屋としての職務を通じて人間らしい心情を理解し獲得していく」という物語の大枠そのものは個人的にも好みで、20世紀前半のヨーロッパ風な世界を舞台にしている点も気に入っています。ただ、一つ一つの物語(本作は一話完結形式です)の脚本や、キャラクターの性格はまさに深夜アニメのステレオタ...
「掏摸」中村文則 評価:1点|さすらいのスリ師を襲う巨悪の陰謀【ノワール純文学】
凋落著しい純文学界隈にあってヒット作を連発し、海外でも人気の高い売れっ子作家である中村文則さん。受賞歴も非常に華々しく、新潮新人賞を「銃」で受賞すると、野間文芸新人賞を「遮光」で受賞、芥川賞を「土の中の子供」で受賞、そして、大江健三郎賞を本作で受賞するなど、国内の文学賞を次々と陥落していきました。前述の通り諸外国での評価も高く、 ウォール・ストリート・ジャーナルが選ぶ2012年ベスト小説10作に本作が選ばれたほか、同紙が選ぶ2013年ベストミステリーの10作に「悪と仮面のルール」が選ばれ、デイビッド・グーディス賞というノワール小説の名手に贈られる賞も受賞しています。そんな文壇の寵児にとって代表作のひとつであり、上述の通り米高級紙の評価も受けている本作なのですが、読んでみた感想はちょっと陳腐すぎるかなといったところ。文学としてもエンタメとしても凡庸未満の作品だったと感じました。あらすじ主人公は掏摸を生業にしている西村という青年。東京を仕事場に富裕層ばかりを狙って獲物を次々と盗っていく西村だが、ある日、彼は木崎という男から仕事を頼まれる。闇の社会を牛耳る黒幕である木崎の。そんな木崎の依頼を...
あまりにもつまらない日本社会にまつわるデータと所感
「今日の仕事は楽しみですか」というキャッチコピーを掲げた広告がSNSで大炎上したのは最近のことです。広告会社が批難され、広告が撤回されるという結末を迎えたわけですが、日本社会が抱える諸問題の結実として、目の前の一日が多くの人にとってあまりにもつまらないという現実があるのではないでしょうか。ギャラップというアメリカの調査会社によると、熱意溢れる社員の割合において、日本は139か国中132位とあまりにも低い数字が叩き出されているようです。引用元:原因はいろいろあるのでしょうが、やはり、大企業では無意味なくせに複雑で難易度の高いペーパーワークや調整作業が蔓延っており、一方、中小零細企業や介護・外食・アパレルといった職種においてはブラック労働が蔓延っていることが原因なのでしょう。大企業や公務員は年功序列賃金制が要因で、中小零細企業等や非正規・派遣労働は利益の薄さやその構造的な要因によって給料が上がりづらいことも、この「熱意」に関係しているのかもしれません。また、多くの大企業が採用しているジョブローテーションと全国転勤も人生に対する自己決定権を奪うという意味で熱意の低下に紐づいている可能性があり...
「鬼滅の刃」で活躍する「優しさ」を持たない剣士たちの話
現代ビジネスに精神科医である斎藤環氏による面白い「鬼滅の刃」評論が掲載されていた。 この中で、斎藤氏は鬼殺隊の「柱」たちがみな鬼による加害または親による虐待を受けた被害者であり、それゆえに戦いの動機に怨恨を孕み、そのうえ、彼らの性格が狂気に満ちていることを指摘している。ここで重要なことは、鬼殺隊の「柱」もまた、ほとんど全員が――甘露寺蜜璃を除き――鬼による犯罪被害者であるということだ(煉獄杏寿郎と宇髄天元は鬼の被害は受けていないが親からの虐待サバイバーである)。その意味で「鬼滅」とは、「正義の被害者(柱)」が「闇落ちした被害者(鬼)」と戦う物語、でもある。そして留意すべきは、「正義」はしばしばトラウマ的な出自を持つ、ということだ。鬼殺隊の人々が正義の刃を振るうのは、もちろん社会の治安と安全のためではあるのだが、その動機はしばしば怨恨であり、その向かう矛先は鬼であり鬼舞辻無惨だ。その正義は鬼退治の正義であって、その限りにおいて普遍性はない。「正義」はしばしばトラウマ的な出自を持つがゆえに、しばしば暴走し、狂気をはらむ。「柱」の剣士たちは、そうした覚悟を固めすぎた結果、みんなサイコパスに...
「いちご同盟」三田誠広 評価:3点|思春期の繊細な心情とその成長を描いた病室ボーイ・ミーツ・ガール【青春純文学】
1990年に出版された小説で、芥川賞作家である三田誠広さんの代表作でもあります。中学校の国語教科書に掲載されていたほか、集英社のナツイチ(夏の100冊)にも長らく選ばれ続けていたので、タイトルをご存じの方も多いでしょう。近年でも大人気漫画「四月は君の嘘」の作中でオマージュされるなど、長年にわたり根強い人気を誇り、様々な作家に影響を与えている作品となっております。都市郊外に居住する核家族的な生活感が日本の文化的メインストリームとして定着し、そのうえ、熾烈な受験戦争で生徒たちの精神がすり減らされていた1980年代。そんな時代に、自殺という選択肢に対して仄かな憧れを抱く少年と、不治の病で入院しており、死期が近い少女との、ひと夏の淡く切ない交流を描くという内容の小説。長期入院している少女と、身体は健康だが心に悩みを抱える少年のボーイ・ミーツ・ガールという「病室もの」的なジャンルを開拓した小説でもあります。勉強、スポーツ、生きるということ、死ぬということ、人生とは何か。よく言えば普遍的、悪く言えば平凡な要素がテーマとなっており、物語構成としても奇をてらわない内容の物語であるにも関わらず、本作独自...
「夏への扉」ロバート・A・ハインライン 評価:2点|夢と恋に破れた青年の鮮やかな復讐が見どころのタイムトラベル冒険小説【古典SF小説】
1957年に出版されたタイムトラベル小説の古典的名作で、SF作家であるロバート・A・ハインラインの代表作としても知られています。大昔に出版された小説ながら特に日本での人気は根強く、新装版がたびたび出版されるほどのロングセラー。2021年にも山崎賢人さん主演で映画化され、公開に合わせて新装版が発売されました。読後の感想としては、王道の物語を纏める手堅い構成には見るべきところがあるものの、肝心の「面白さ」にはやや欠ける作品という印象です。あらすじ1970年のロサンゼルスで青年ダンは絶望の淵にいた。友人であるマイルズと立ち上げた会社の業績は絶好調。しかし、マイルズと自分の秘書であるベルの奸計により、ダンは会社を追い出されてしまったのである。絶望のあまり、開発されたばかりの新技術「冷凍睡眠」を利用して長い眠りにつき、遥か未来で目覚めることにより人生をやり直そうと一度は決断するダンだったが、直前に思い直し、マイルズとベルへの復讐を実行に移す。しかし、復讐は失敗。そして、ダンは自分の意思によってではなく、マイルズとベルの計略によって強制的に冷凍睡眠をさせられることになる。ダンが目覚めたのはちょうど...
「堀さんと宮村くん」HERO 評価:3点|抑制的な作風が笑いと切なさを誘う、天然色系青春恋愛漫画【ラブコメ】
2007年からweb上で連載されている四コマ形式のラブコメディ。いまでこそ大手出版社によるweb漫画雑誌や漫画アプリが乱立しておりますが、当時は各個人がそれぞれのホームページでweb漫画を公開していた時代でした。そんな「個」の時代において圧倒的な人気を誇った作品のひとつであり、連載開始から1年に満たない2008年にはスクウェア・エニックスから単行本が発売されているなど、web漫画の単行本化による出版という流れの先駆けともなった作品です。私も一時期、HERO氏のホームページである「読解アヘン」を毎日覗いていたくらいハマっておりました。2021年にはついにアニメ化されたこともあり、再度手を伸ばしてみようと思い読んでみた次第。結論としては、当時ほど熱中しなかったにせよ、やはり他の青春漫画(特に最初から商業出版されることを前提に練られた漫画たち)にはない独特の魅力がある作品で、最終話を読んだ後は切なく優しい気持ちになりました。あらすじ学校では生粋のギャルとして通っている堀京子(ほり きょうこ)だが、家になかなか寄り付かない両親に代わって幼稚園児の弟を世話する家庭的で献身的な側面を隠し持っている...
【政治雑記】日本は残存する大選挙区制(中選挙区制)を全て廃止するべきである
1. 候補者調整の問題2021年7月5日に行われた東京都議会議員選挙は、定数127議席のうち、自民党33議席、都民ファーストの会31議席、公明党23議席、共産党19議席、立憲民主党15議席、その他6議席という結果に終わった。自民党と公明党の議席を合わせた56議席では過半数に届かず、議席の大幅減が予測されていた都民ファーストの会が45議席から14議席減の31議席と踏みとどまって第2党を確保し、立憲民主党が8議席から15議席、共産党が18議席から19議席と議席を増やしたため、自公連立政権の敗北、都民ファーストの健闘、国政野党連合の躍進だというのがマスメディアにおける報道の主たる論調のようである。(自民党は議席増、公明党は議席維持だったため、それほど手痛く敗北した印象は受けないが、本稿の主題ではないのでここでは議論しない)東京都議会議員選挙をはじめ、特に日本の地方議会選挙においてアカデミアの政治学(政治過程論)的に注目が大きいのは、タイトルにも挙げた通りその選挙制度であろう。殆どの選挙区が当選人数二人以上の大選挙区制(※)となっており、しかも、投票者は自分がもつ1票を一人の候補者に対してしか...
「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」村瀬修功 評価:2点|普遍的なサスペンスに見せかけたガンダムオタク向け作品【アニメ映画】
1979年から続く「機動戦士ガンダム」シリーズの最新映画で、1989年に発売された同名小説が原作となっております。いわゆる「ガンダム世界内の歴史」においては「逆襲のシャア」という映画の続編にあたり、初代ガンダム(ファーストガンダム)が宇宙世紀79-80年を描いた作品であるところ、本作は舞台は宇宙世紀105年、つまり約35年後の世界。とはいえ、私が鑑賞した限りでは「逆襲のシャア」を知らなくても鑑賞に問題はないと思われました。しかし、本作の問題は別の場所にあります。気取らないドキュメンタリー調の演出や素晴らしい作画は褒めることができますが、物語の筋があまりにも意味不明で、市街地戦は迫力がある一方でモビルスーツ同士の戦闘は魅力に欠けます。また、登場人物たちの寒い言動も影響してか、どうしても「子供が考えた『大人の世界』を描いた映画」という印象を抱いてしまいます。あらすじ宇宙世紀105年。人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀と35年が経過した世界。地球に居住できるのは選ばれた特権階級とその生活を支えるエッセンシャルワーカーのみとなっており、不法滞在者は宇宙に強制送還さ...