【海外エンタメ小説】おすすめ海外エンタメ小説ランキングベスト7【オールタイムベスト】
映画/アニメ
「劇場版 からかい上手の高木さん」赤城博昭 評価:2点|日常系ラブコメの新機軸を打ち出した原作の雰囲気をそのままに表現した小さな感動作【アニメ映画】
2013年から小学館の月刊誌(ゲッサンmini→ゲッサン)に連載されているラブコメ漫画「からかい上手の高木さん」をアニメ映画化した作品。テレビシリーズもしくは原作漫画を鑑賞していることが前提の劇場版となっております。原作は所謂「日常系」のラブコメなのですが、ギャグを中心としたコメディ路線でもなければ、ハーレム的な路線でもなく、主人公が何らかの努力で意中の女の子を「落とす」という昭和・平成古典路線でもない、という点がまず原作の特徴だと言えるでしょう。それでは一体、原作は何をする漫画なのでしょうか。既読者には分かりきったことでしょうが、高木さんという中学生女子が西片という同級生男子に悪戯を仕掛け、西片が動揺するのを楽しむという過程を、西片目線で楽しむという漫画です。突き放した見方をすれば、自分が特に何もしなくても同級生女子が自分のことを好きになってくれて、その女子が好意の照れ隠しとして悪戯を仕掛けてくれるという、圧倒的な精神優位の状態で敢えて弄ばれるのを楽しむ作品となっております。(読者側からすれば高木さんが西片を好きなのは明白だが、超純粋中学生男子という設定の西片はそれに気づいていない。...
「ファイト・クラブ」デヴィッド・フィンチャー 評価:3点|現代資本主義社会がもたらした精神的鬱屈に対して、奇妙で斬新な処方箋を提示する作品【アメリカ映画】
1999年に公開されたアメリカ映画であり、今日でも評価が高いハリウッド映画の古典作品の一つです。「ベンジャミン・バトン」や「ソーシャル・ネットワーク」、「ゴーン・ガール」といった作品を後に製作することになるデヴィッド・フィンチャー氏が監督を務めております。大物俳優の出演としては、主人公の相棒であるタイラー・ダーデンをブラッド・ピットが演じており、さすがの演技で魅了してくれます。不眠症に悩んでいるサラリーマンの主人公が「殴り合い」による充実感を得ることで精神的な変貌を遂げていく、というストーリーラインが鬱屈した日常を送っているであろう多くの日本人サラリーマンに刺さること請け合いでしょう。私もそんなサラリーマンの一人だけあって、序盤から中盤までの展開には興奮させられましたが、中盤以降の展開についてはやや突拍子もないものに感じられました。社会派といえばそうなのでしょうが、「社会」を描くにしては手管が大雑把過ぎるように感じられ、大仰な展開に見合うだけの説得力や感情的な揺さぶりが欲しかったところです。あらすじ主人公の「僕」は大手自動車メーカーでリコール調査の仕事に就いている。十分な給料を得ており...
「ジョーカー」トッド・フィリップス 評価:2点|格差社会における現代的な貧困が生んだ「無敵の人」による凶行を描いた点に注目が集まったバッドマンシリーズのスピンオフ【アメリカ映画】
アメリカンコミックの名作である「バッドマン」は映画シリーズとしても人気ですが、その「バッドマン」シリーズにおける悪役の一人、ジョーカーの過去を描いた所謂スピンオフが本作の位置づけとなります。とはいえ、本作が世界的に大ヒットした理由は「バッドマン」人気とは別のところにあるのです。本作の主人公であるジョーカーことアーサー・フレックは精神疾患を持った中年男性であり、僅かな賃金を得られていた職業としての道化すらクビになって貧困に苦しんでいます。認知症を患っている母と二人暮らしで、介護にも時間と気力体力を奪われる生活。彼の未来には一切の「希望」がありません。彼には失うものが全くないのです。インターネットスラングを用いるのならば、アーサーは「無敵の人」となってしまったわけです。そんな「無敵の人」が辿る人生の行方、その過程の描き方、演出方法が異常なリアリティを持っている。そういった、いわば社会派映画としての側面において本作は世界的に好評を博しているようです。しかしながら、個人的な感想といたしましては、凡庸な作品に感じられました。確かに、「無敵の人」のリアリティを描いているだとか、格差が蔓延る希望なき...
「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」アーロン・ホーバス 評価:3点|世界的な大人気ゲームシリーズがそのまま映画になって登場。手堅い面白さに一献の工夫が加えられた良作【アニメ映画】
1985年に発売されて以来、世界で圧倒的人気を獲得してきた「スーパーマリオ」というテレビゲームシリーズ。そのゲームの世界をテーマとした初のアニメーション映画が本作となります。「スーパーマリオ」というゲームシリーズ自体がアクションに重点を置いたゲームであり、ストーリー性がほとんど存在しないことから、そもそもどのような映画になるのか分からないといった前評判でしたが、ふたを開けてみれば文句なしの世界的大ヒットを記録しています。アニメ映画だけに限れば興行収入は「アナと雪の女王」シリーズの1と2に次ぐ3位につけているらしく、世界のアニメ映画界に金字塔を打ち立てたと言っても過言ではない作品となっております。そんな本作でしたが、なるほど、世界的に有名なゲームであるという下地がよく考慮されている作品であり、アクション面やストーリー面において、原作シリーズのどれかを一度でもプレイしたことがある人ならば安心感を持って楽しめる内容だと感じました。加えて、これまであまり語られてこなかった主人公兄弟(マリオとルイージ)の出自を掘り下げるような演出もあり、その点においても濃やかな配慮がなされているのには感心いたし...
「THE FIRST SLAM DUNK」井上雄彦 評価:4点|令和に舞い降りたスポーツアニメーションの傑作、最新の3DCGで蘇った伝説的バスケットボール漫画【アニメ映画】
1990年代に「週刊少年ジャンプ」にて連載され、空前のバスケットボールブームを引き起こした大人気漫画「SLAM DUNK」。連載終了(1996年)から26年の時を経て映画化されることとなり、2022年の12月から上映されております。現在のところ商業的には非常に成功しておりまして、観客動員数も興行収入も大ヒットレベルに到達。公開されている映画の観客動員数ランキングでは毎週のように首位を獲得するなど、まさに破竹の勢いで観客を増やしている作品となっております。私もミーハー的な動機から映画館に足を運んでみたのですが、実際のところ、予想を遥かに上回る感動があり、名作だったな、というのが正直な評価です。「血と汗と涙のスポ根」物語を背景に、原作でも最も人気の高い湘南高校V.S.山王工業高校戦が描かれるという構成は長期連載作品である「SLAM DUNK」を一本の映画として纏めるのに相応しいばかりではなく、近年のフィクション作品に欠ける「情熱と友情」の大切さを赤裸々に押し出しながらも古臭さを感じさせません。むしろ、「SLAM DUNK」を未読の世代にとっては極めて清新かつ斬新な側面すらあり、こうした種類...
「ショーシャンクの空に」フランク・ダラボン 評価:4点|無実の罪で投獄された銀行員が刑務所で起こす奇跡の軌跡、王道ハリウッド映画の名作【アメリカ映画】
1994年公開ながら今日においても非常に高い評価を受けている、ハリウッド映画を代表する作品の一つです。刑務所を舞台としている映画ということで、公開当初はそれほどヒットしなかったとのことですが、批評家による評価は公開当初から高く、アカデミー賞へのノミネートなどを通じて人口に膾炙。現在ではアメリカ映画のベストXX等の企画が持ち上がる際には必ずランキング入りする古典的名作の地位を得ております。そんな映画をこのたび初視聴してみたのですが、評価に違わず非常に良い作品だった、というのが率直な感想です。刑務所という特殊な陰惨な環境の中に、不屈な前向きさを備えた主人公が数々の「希望」を持ち込んでいくなかで生まれるドラマの数々。しかし、それでも社会にはのっぴきならないことがあって、そんな事象に直面した主人公が最後に行う決断とは.....。名作という看板に相応しい、ヒューマンドラマの王道的作品です。あらすじ主人公のアンドリュー・デュフレーン(以下、アンディー)は若年ながら銀行で課長を務めており、極めて優秀な銀行員として勝ち組の生活を送っていた。しかし、彼の妻は愛人をつくって浮気をしており、アンディーは二人...
「海がきこえる」望月智充 評価:2点|スタジオジブリの若手スタッフたちによって製作された爽やかな青春映画【アニメ映画】
1993年に公開されたスタジオジブリのアニメ映画。監督が宮崎父子でもなければ高畑功でもないというジブリ映画の例外的な作品となっております。というのも、本作が若手スタッフに全てを任せて製作させてみるというジブリ内での企画により出来上がったという背景があります。原作は当時全盛を誇っていた集英社コバルト文庫のスター作家、氷室冴子さんの同名小説であり、確かに、男性作家が青春恋愛物語を描く際に生じがちな少女に対するギトギトした視点がなく、それでいて(友情と恋愛以外では)家族の問題に焦点を当てているという、典型的な女性作家らしい作品だったなと感じました。とはいえ、全体的な評価としては凡作という判断であります。確かにこれといった欠点は見当たらないのですが、かといって推せるポイントもなく、なんとも薄味な作品だったというのが率直な感想です。あらすじ舞台は高知県に存在する中高一貫の私立高校。高校二年生の二学期、主人公である杜崎もりさき拓たくが在籍するクラスに一人の少女が転校してくる。彼女の名前は武藤むとう里伽子りかこといい、田舎街には珍しい、東京からの転校生だった。成績優秀で運動神経抜群、容姿端麗な美少女...
「桐島、部活やめるってよ」吉田大八 評価:3点|スクールカーストという虚像、努力と情熱という実像【青春映画】
2012年8月に公開された映画で、朝井リョウさんのデビュー作となった同名小説が原作です。学園ものだけあって生徒役に若手俳優が起用されているのですが、主演の神木隆之介はもちろん、橋本愛や東出昌大、山本美月、松岡茉優といった後の大物俳優たちが共演している点もいまとなっては本作の魅力を構成しているといえるでしょう。公開当初の注目度が高かった作品ではなかったのですが、好評を得てロングランヒット作となり、第36回日本アカデミー賞の最優秀作品賞をはじめ数々の賞を獲得する結果となりました。現在でも人気は根強く、2022年においても10周年記念上映が行われるほどです。私も本年になってようやく鑑賞したのですが、評判に違わず面白い作品であり、穿ったような邪道作品にみせかけておいて、最終的には王道作品として締める技法には感動いたしました。スクールカーストに囚われた日本の典型的な教室風景を描きつつ、スクールカーストという眼鏡をかけたまでは見ることができない、学校生活において特別な輝きを放つ本物の英雄を劇的な演出で見出すことに成功している、そんな佳作です。あらすじバレーボール部においても教室においても中心人物で...
「流浪の月」李相日 評価:1点|誘拐犯と少女が育んだ不思議な愛のかたち。十五年後の再会は二人を不思議な運命へと導いていく【恋愛映画】
2022年5月13日に公開された邦画で、主演は広瀬すずと松坂桃李。脇役も横浜流星や多部未華子といった著名な俳優で固められており、力の入っている作品だといえるでしょう。原作は凪良ゆうさんの同名小説であり、第17回本屋大賞受賞作にして累計発行部数80万部突破の人気作。かつて誘拐犯と誘拐された少女という立場だった二人が十五年後に再開を果たし、友情とも恋情とも違った関係をあの頃と同じように取り結んでいくという不思議な物語の大枠自体は原作準拠のようです。そんな本作ですが、少なくとも映画の方はイマイチな出来だったと言わざるを得ないのではないでしょうか。いわゆる「盛り上がる」ような題材の作品ではなく、たおやかな雰囲気にならざるを得ない作風とはいえ、さすがに映画鑑賞体験として「盛り上がり」を感じられる場面が皆無に近く、だからといって「ぐっとくる」ような場面もなかったというのが正直なところです。一般的には理解を得づらいはずの二人の関係を、いかに「あり得る」魅力的な関係として描き出すかというのが本作の肝となり得るはずですが、そこの説得力には欠けるばかりで、誰が本作に共感するんだろうと思ってしまいました。も...
「すずめの戸締り」新海誠 評価:2点|冒険・社会性・家族愛。全要素が中途半端になってしまった新海監督の最新作【アニメ映画】
「君の名は。」の衝撃的な大ヒットで邦画界にセンセーションを起こすと、続く「天気の子」も成功させて国民的アニメ映画監督の地位を固めつつある新海誠さん。そんな新海監督の最新作であり、2022年11月11日から公開されているのが本作となります。本記事執筆時点で興行収入は既に90億円近くに達しているようで、2022年における日本での興行収入ベスト5に入ることを確実にしています。そのうえ、三作連続での100億円超えも視野に入るという人気ぶりなのですから、単なる話題作という以上に多くの人が楽しんで鑑賞しているのでしょう。そんな本作ですが、個人的にはやや凡庸というか、面白い作品になりきれていないように思われました。少女と青年の出会いから始まる日本縦断のロードムービー、自然災害や過疎を題材にしているという現代性、日本的な神事から着想を得た物語展開、そしてもちろん、美麗な映像と音楽の組み合わせ。「面白そう」な要素が揃い踏みしていることは確かなのですが、その全ての要素について掘り下げが中途半端に終わってしまった結果、何とも長所を見出しづらい映画となっております。あらすじ物語の起点は九州某所の田舎町。女子高...
「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲」原恵一 評価:2点|大人たちが選ぶのは無邪気な享楽か責任ある幸福か、子供向け映画の異色作【アニメ映画】
1992年に始まり、現在まで続く大人気アニメシリーズ「クレヨンしんちゃん」の劇場映画シリーズ第9作目にあたる作品です。放映当初はその下品な内容から猛烈な批判を浴びるも、絶大な子供人気を誇ったことからゴールデンタイムのアニメとして定着。その後、徐々に家族愛を中心としたハートフル寄りの作風が意識されるようになり、いまなお地上波で放送され続ける超長寿アニメの一つとなっております。そんな「クレヨンしんちゃん」シリーズは毎年アニメも放映しているのですが、中でも大きな人気を得ているのが本作。「クレしん」らしいギャグテイストな作風を基調としながらも、当時の大人世代をターゲットにした切なくノスタルジックなテーマで物語がつくられており、子供は爆笑し大人は泣いた作品として知られています。そんな本作をいまになって見返してみたのですが、印象的な場面は多いものの物語の作り込みが甘く、一本調子感が拭えない映画であるように思われました。基本的には子供に向けた作品でそこまで複雑な脚本にはできないだろうという批判は正論として受け取りますが、大人受けという意味で見ても、当時における題材の斬新さが良かったまでで、物語作品と...
「マイ・インターン」ナンシー・マイヤーズ 評価:2点|若き女社長が直面する人生の課題と彼女が出会うシニアインターンの紳士【アメリカ映画】
2015年に公開されたハリウッド映画で、監督は「ハート・オブ・ウーマン/What women want」や「恋愛適齢期/Something's Gotta Give」で知られるナンシー・マイヤーズ氏。若い女性が創業者社長を務める新進気鋭のベンチャー企業に老齢のインターン生がやってくるという、産業の新陳代謝が速いアメリカならではの設定が独特な映画です。また、配役にも個性があり、敏腕女性経営者役をアン・ハサウェイが演じたのはいかにも王道と言えますが、老インターン生についてはロバート・デ・ニーロが務め、非常に温和な性格を与えられるなど、意外性のある抜擢がなされております。そんな本作ですが、筋書きは良いのだが細部が雑だった、というのが正直な感想です。老インターン生が持つ様々な経験や人間としての滋味が若手女社長に良い影響を与え、かけがえのない存在になっていくという枠組み自体は心動かされるものがあるのですが、その過程で起こる具体的な出来事一つ一つがどれもややインパクトに欠けるもので、地味とまでは言わないものの、いわゆる「映画」のテンプレ通りに物事が進んでしまったという印象を受けました。意外ながらも...
「フォレスト・ガンプ」ロバート・ゼメキス 評価:3点|激動の戦後アメリカを駆け抜けた、実直で不器用な男の人生【アメリカ映画】
1994年公開のアメリカ映画で、大ヒットを記録してアカデミー賞の作品賞を受賞した作品です。いまなお古典としての人気も高く、ハリウッド映画の王道的名作とされています。主人公のフォレスト・ガンプは生まれつき知能指数が低く、足も不自由という、謂わば生来の劣等生として登場するのですが、そんなフォレストが実直な性格を梃子に激動の人生を逞しく歩んでいく様子を描いた、まさに王道を往く物語です。フォレストの辿る人生には、ベトナム戦争や公民権運動、ピンポン外交といった戦後アメリカ激動の歴史が重ね合わされ、ケネディ大統領にニクソン大統領、ジョン・レノン、そしてアップルといった、当時の時代を象徴するような実在の人物や企業が登場することで、主人公の人生という小さな流れと、戦後アメリカの歴史という大きな流れが相互に影響を与え合うダイナミックさが特徴となっております。もちろん、粗を探そうと思えばたくさんあるのですが、大胆な物語構成によって「人生」の良い意味での不思議さを描く、という試みに成功している点において、いくばくかの粗による悪さを超える魅力が形成しており、総合すれば佳作と呼べる映画といえるでしょう。その評価...