【政治学】おすすめ政治学本(その他)ランキングベスト4【オールタイムベスト】
小説作家名「な」行
「掏摸」中村文則 評価:1点|さすらいのスリ師を襲う巨悪の陰謀【ノワール純文学】
凋落著しい純文学界隈にあってヒット作を連発し、海外でも人気の高い売れっ子作家である中村文則さん。受賞歴も非常に華々しく、新潮新人賞を「銃」で受賞すると、野間文芸新人賞を「遮光」で受賞、芥川賞を「土の中の子供」で受賞、そして、大江健三郎賞を本作で受賞するなど、国内の文学賞を次々と陥落していきました。前述の通り諸外国での評価も高く、 ウォール・ストリート・ジャーナルが選ぶ2012年ベスト小説10作に本作が選ばれたほか、同紙が選ぶ2013年ベストミステリーの10作に「悪と仮面のルール」が選ばれ、デイビッド・グーディス賞というノワール小説の名手に贈られる賞も受賞しています。そんな文壇の寵児にとって代表作のひとつであり、上述の通り米高級紙の評価も受けている本作なのですが、読んでみた感想はちょっと陳腐すぎるかなといったところ。文学としてもエンタメとしても凡庸未満の作品だったと感じました。あらすじ主人公は掏摸を生業にしている西村という青年。東京を仕事場に富裕層ばかりを狙って獲物を次々と盗っていく西村だが、ある日、彼は木崎という男から仕事を頼まれる。闇の社会を牛耳る黒幕である木崎の。そんな木崎の依頼を...
「こころ」夏目漱石 評価:3点|若き日の恋愛譚を題材に世代間の価値観相克を描いたベストセラー小説【古典純文学】
日本文学を代表する作家、夏目漱石のそのまた代表作といってもよいでしょう。長年の高校教科書掲載作品としても有名で、書籍を手に取って読んでみたことがないという人でも教科書掲載部分の内容くらいはなんとなく覚えているのではないでしょうか。また、累計発行部数は700万部を超えており、日本で最も売れている小説であることから、書籍として手に取り通読したことがあるという人もそれなりにいるのだと思います。そんな本書は恋愛の三角関係が物語後半の枢要を占めることもあり、殊更に恋愛小説面を強調したプロモーションがかけられることも多いように感じられます。しかし、本書の主題は「時代の趨勢と人々の『こころ』」であり、漱石自身もそれを意識して書いたという解釈が通説となっております。派手なアクションシーンや意外などんでん返しなどがあるわけではなく、ぐいぐい感情を揺さぶられるというわけではありませんが、手堅い面白さのある作品です。あらすじ東京帝国大学の学生である「私」は夏休みに訪れていた鎌倉の海岸で「先生」と出会う。ひょんなことから「先生」との交流を始めた「私」だったが、「先生」にはどこか謎めいたところがあり「私」には「...
小説 「西の魔女が死んだ」 梨木香歩 星1つ
1.西の魔女が死んだ児童文学作家である梨木香歩さんの作品。1994年に単行本、2001年に文庫化された小説で、特に文庫化の頃に爆発的に流行った記憶があります。当時のベストセラーで100万部以上売れていたうえ、いまでも「新潮文庫の100冊」でレギュラー的な扱いなので部数を伸ばしていることでしょう。ざっくり言うと「学校に行きづらくなった少女まいがお祖母ちゃんと共に田舎の家で過ごすことでその心が再生していく過程を温かく描く」という小説なのでなかなか批難しづらい小説(少しでもケチをつけると心無い人だと思われそう)ですが、そんな心理的抵抗を乗り越えつつ星1つを本ブログではつけます。中身のない小説です。2.あらすじ学校にうまく馴染めず、不登校になったしまった中学一年生のまい。母親の勧めにより、まいは田舎のおばあちゃんと一緒に過ごすことになる。そんなまいを温かく迎え入れたおばあちゃん。ジャムをつくったり鶏の世話をしたりして過ごす生活のことをおばあちゃんは「魔女修行」と呼んだ。それは 「早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」 なかで魔女としての心構えを学ぶということ。おばあ...
小説 「李陵・山月記・弟子・名人伝」 中島敦 星4つ
1. 李陵・山月記・弟子・名人伝高校の教科書掲載作品としてお馴染みの「山月記」ほか、中島敦の代表的作品を連ねた短編集です。「李陵」及び「山月記」は巻末の「参考文」にある通り実在する中国の古典を改変したもので、オリジナル作品かと問われれば結構答えに窮するのではないかと思うのですが、「山月記」の教科書掲載によりフィクション作家として多くの人に名前を知られているのが中島敦という小説家です。「山月記」はやはり名作で、多くの(国語・文学好きの)心を掴んで離さない作品としてこれからも輝き続けるのだろうと思わされました。それ以外では「名人伝」がそれなりに楽しめましたが、そのほかの作品は淡々とし過ぎてあまりよく分からなかったというのが正直な感想です。2. あらすじ・名人伝紀昌という男が天下一の弓の名人を目指し飛衛という名手に弟子入りする。しかし、飛衛は紀昌に弓を持たせず、基礎訓練として瞬きをしない訓練や視力を上げる訓練を命じるのだった。紀昌は素直に従い、鍛錬を続けること五年、ついに飛衛から奥義伝授を許可され、瞬く間に腕前を上げていく。最後には飛衛との弓対決を制するまでになった紀昌。彼はさらなる高みを目...
小説 「銀の匙」 中勘助 星2つ
1. 銀の匙大正から昭和にかけて活躍した小説家、中勘助の代表作です。夏目漱石が本書を絶賛して東京朝日新聞への連載が決まったことから中勘助は小説家として見出されていきました。また、灘中学校において橋本武先生が三年間の国語の授業を本作精読に使っていたという、伝説の授業に関連する書籍としても名前を知られています。2. あらすじ主人公である「私」は時々、書斎の棚から小さな銀の匙を取り出して眺める。それは虚弱体質だった「私」に薬を飲ませるために伯母が探してくれた特別な匙だった。痩せぎすでぼんやりとした子供だった「私」。療養のため引っ越した小石川でもその引っ込み思案は続いていたが、伯母の紹介でお国さんという女の子と遊ぶようになる。お国さんと遊ぶうちに積極性が出てきた「私」だったが、学校へ入学する年齢になると「どうしても学校には行かない」と駄々をこねるようになり......。3. 感想夏目漱石の絶賛や橋本先生の言葉に違わず、美しい日本語によって書かれているというのは納得できましたし、その濃やかさがひたひたと心に染みわたるような感覚になったのは確かです。 美しい日本語例文集としては素晴らしいとしか言い...
小説 「【映】アムリタ」 野崎まど 星1つ
1. 【映】アムリタいわゆる「ライト文芸」隆盛の火付け役の一つになったメディアワークス文庫。その新人賞に当たる「メディアワークス文庫賞」の第一回受賞作です。評判が良いようなので購入してみたのですが、ううん、これはきっと評価が分かれる作品で、あまり私の好みではありませんでした。アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)posted with ヨメレバ野崎 まど アスキー・メディアワークス 2009-12-16AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
小説 「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」 七月隆文 星1つ
1.ぼくは明日、昨日のきみとデートするミリオンセラーを達成し、人気俳優・女優主演での映画も公開間近という本作。時流に乗った人気要素を持っているのは分かりますが、後年には忘れ去られているか、少なくとも評価が割れていてほしい作品です。ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)posted with ヨメレバ七月 隆文 宝島社 2014-08-06AmazonKindle楽天ブックス
小説 「きみはいい子」 中脇初枝 星1つ
1. きみはいい子「世界の果てのこどもたち」で2016年本屋大賞3位を獲得した、いまを時めく中脇初枝さんの中編集です。本作も坪田譲二文学賞や本屋大賞4位など華々しい受賞歴を持っており、題材の社会性や深刻さなどは理解できるのですが、どうにも小説としての魅力には欠けるように思われました。(9-1)きみはいい子 (ポプラ文庫)posted with ヨメレバ中脇 初枝 ポプラ社 2014-04-04AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo