【政治学】おすすめ政治学本(その他)ランキングベスト4【オールタイムベスト】
作品の感想
「イワンのばか」トルストイ 評価:1点|ロシアの文豪が著したシンプルな勧善懲悪寓話【海外文学】
「戦争と平和」「アンナ・カレーリナ」等の作品で有名なロシアの文豪トルストイが著した寓話。富を求めることや暴力による解決に疑義を呈し、素朴な信仰に基づく生活がよいという直截なメッセージが印象的な作品です。しかし、物語の内容があまりにも単純な勧善懲悪に過ぎ、もうすこし工夫がないと楽しみようがないと思ってしまう作品でした。あらすじとある国のとある場所には、軍人の長男セミョーン、商人の次男タラース、ばかの三男イワン、啞の妹マルタがいた。ある日、悪魔が遣わした二匹の小悪魔のために、セミョーンとタラースは軍隊と財産を失い、イワンのもとへ身を寄せることになった。一方、イワンに遣わされた小悪魔は、腹痛中でも農作業を続けるイワンの真面目さに太刀打ちできずたイワンを不幸にしてしまう目論見が破綻。それどころか、三匹の悪魔はイワンの純真さのために捕らえられ、イワンに贈り物をして消えていく。兄たちはイワンにその贈り物を使って軍隊や財産をつくるように要求し、そのおかげで王様となる。しかし、イワンだけは農民として朴訥とした生活を送るのだった。やがて、イワンたちが住む国の王女が病気だという噂が立ち......。感想純...
【変身】ある朝、目覚めると、自分の身体が巨大な虫に「変身」していた 評価:2点【フランツ・カフカ】
「審判」「城」などでも有名なフランツ・カフカの作品です。降りかかる不条理に対して主人公が何を思い、どう行動するか。そして、それを取り巻く家族の反応とその悲しい結末。そのような描写は鋭くかつユーモアに富んでおり、文学界に新風をもたらしたのは理解できるのですが、物語の展開が「当然の結末」だらけで意外性がなく、その点の面白さが欠ける小説でした。あらすじある朝目覚めると、グレゴール・ザムザは一匹の巨大な虫に変身していた。真面目な勤め人だったグレゴール。失業中の父の代わりに一家を支え、妹を音楽学校へと進学させるべく辛い仕事に耐えていた。しかし、変身してしまった彼を家族は恐れるようになる。妹のグレーテだけがかろうじて世話をしてくれるものの、虫になってしまったグレゴールの人間性は次第に失われていく。一家の生活も困窮していき、金策として、家の一部を客人へと間借りさせることにしたザムザ一家。ある日、間借り人をグレーテがバイオリンでもてなしていると、そこにグレーゴルが降りてきて.......。感想読む人によって様々な比喩を想起させる作品です。突然、大病を患って要介護になってしまった人や、働き過ぎて精神病に...
「センセイの鞄」川上弘美 評価:2点|穏やかな大人の恋愛小説【純文学】
芥川賞作家、川上弘美さんのベストセラー小説です。谷崎潤一郎賞を受賞した「純文学」なのですが、異例なほど売れた作品。小泉今日子さん主演で映画化もされています。大人の恋のなかにある淡くて切ない心境に感動できる一方、登場人物の現実感や物語の起伏という点ではイマイチな作品でした。あらすじ37歳独身のOL、大町月子は居酒屋で高校の恩師と再会する。「センセイ」こと松本春綱は月子の30歳年上。奥さんを亡くしているセンセイと、彼氏のいない月子。二人は居酒屋で、あるいはキノコ狩りで、徐々に打ち解けあってゆく。そんな中、高校の同級生である小島孝が月子にアプローチする。月子はその誘いを断り、自分の中での先生への想いを明確にしていく。それでも、なかなか決定的なところまで踏み出せない。しかし、小島孝に旅行に誘われたことをセンセイに打ち明けると、意外にもセンセイが「島に行きませんか」と誘ってきて......。感想紳士的で穏やかなセンセイとの、大人の恋愛。センセイに惹かれていく月子の内面が抒情的に描かれ、こちらにまで切ない気持ちが伝わってきます。ただ、この小説の良いところはその一点のみ。センセイにも月子にも、まるで...
【共感は欺瞞】小説「異邦人」カミュ 評価:3点【海外文学】
ノーベル賞作家、アルベール・カミュの代表作です。面白いと思う人とつまらないと思う人が分かれる作品ですが、私は好みです。「共感」ばかりが重要視され、真実を客観的に見る視点を失った現代社会。「誰もがそう思っている」に過ぎない「常識」が、まるで「道徳・正義」のように扱われる今日。そのような風潮に疑問を投げかけ続ける古典の佳作です。あらすじ主人公、ムルソーの母が養老院で亡くなるところから物語は始まる。葬儀に参加するために養老院へ向かうも、涙一つ見せず、母の死体も見ず、ミルクコーヒーを楽しむムルソー。その翌日には恋人のマリィと海水浴に行き、映画を見て笑う。何事にも動じず、淡々と過ごす彼だが、頼まれれば友人を助け、話を聞き、遊びに誘われればついてゆく。その理由は「それをしない理由がないから」だとムルソーは言う。理性・感情を持ちながら、一切の「人間らしさ」がないように見えるムルソー。ある日、彼はビーチでアラビア人を殺し、裁判にかけられることになったのだが......。感想味のある良い作品だと思います。母の死に涙を流し、我を忘れるほど思いつめること、その後しばらくは立ち直れないこと。そんな人物を、我々...
「ラフ」あだち充 評価:2点|あだち充の定番展開が詰め込まれた、熱心なファン向け作品【水泳恋愛漫画】
「タッチ」「みゆき」等で有名なあだち充さんの作品。高校水泳部を舞台にしていますが、ストーリー展開はいつものあだち充パターンが全開。スポーツ万能な主人公、訳ありな関係の幼馴染、立ちはだかるライバル。そして誰かが死ぬ(もしくは重傷)。その意味であだち充らしさがふんだんに盛り込まれた作品なのですが、悪く言えば「あだち充止まり」の作品。ファン層以外には受けづらいのではないでしょうか。一般的な漫画ファンとしては+αが欲しいところでした。あらすじ舞台は私立栄泉高校水泳部。競泳の大和やまと圭介けいすけと飛び込みの二ノ宮にのみや亜美あみは幼馴染だがぎくしゃくした関係。その理由は、お互いの実家がライバルの和菓子屋であること。しかも、先代が経営していた際に「やまと」が「にのみや」のパクリ商品で人気を得てしまったという因縁があった。高校生活の偶然を通じて誤解が解け、惹かれあう二人。しかし、二ノ宮に想いを寄せる人物がもう一人いた。その名前は仲西なかにし弘樹ひろき。自由形100mの日本記録保持者である。恋と水泳。大和はその両方で仲西に勝つことができるのだろうか......。感想悪い点はないのですが、良い点もない...
【青春・恋愛・ジャズ】漫画「坂道のアポロン」小玉ユキ 評価2点【青年漫画】
「このマンガがすごい! 2009」オンナ編で1位となり、アニメ化もされた本作。ジャズという珍しいテーマと、1960年代という時代設定は確かに面白いと思いました。ただ、ストーリーに捻りがないのは非常に残念。ベタ展開に次ぐベタ展開で起伏がなく、最後も高校生活の枠内で納めきれずに駆け足で大学→社会人としてしまったところに作者の力量不足を感じてしまいました。あらすじ主人公、西見薫(にしみ かおる)は父の都合で横須賀から佐世保の高校へと転校することになった。幼いころから転校ばかりだった西見は秀才だが人見知り。そんな西見がひょんなことから出会ったのが不良として知られる川渕千太郎(かわぶち せんたろう)。正反対の二人だが、千太郎の趣味であるジャズに薫が惹かれ始めたことをきっかけに、二人はかけがえのない友人となっていく。しかし、二人を巡る恋模様は複雑。薫は千太郎の幼馴染である迎律子(むかえ りつこ)が好きだが、律子は千太郎に想いを寄せており、その千太郎は上級生の深堀百合香(ふかほり ゆりか)に恋をしている。そんな百合香の想い人とは、「淳兄(じゅんにぃ)」と千太郎から慕われている桂木淳一(かつらぎ じゅ...
「本能寺ホテル」鈴木雅之 評価:1点|若い女性と織田信長、束の間の交流が生み出す人生の転機【日本映画】
監督は「プリンセストヨトミ」を手掛けた鈴木雅之さん、主演は綾瀬はるかさんという映画。京都を訪れた若い女性が「本能寺の変」が起こる直前の本能寺と現代の京都を行き来しながら自分の人生を見つめ直すという、歴史的事件を梃に使ったヒューマンドラマとなっております。全体的な感想としては、面白くなくはないのですが、これといって取り上げるべき特長もない、どこまでも凡庸な作品だったという評価です。娯楽の選択肢が少なく、暇つぶしに映画を見る時代であればこれでよかったのかもしれませんが、厳選された一部作品だけに焦点が当たる今日の状況において流行る映画ではないでしょう。あらすじ結婚を控え、彼氏である吉岡恭一(平山浩行)の実家がある京都を訪れた倉本繭子(綾瀬はるか)。しかし、予約に手違いがあり、繭子は当初予定していたホテルに泊まれなくなってしまう。そこで、偶然目についたホテルに泊まることにする。その名は「本能寺ホテル」。繭子がホテルのエレベーターに乗ると、なんと戦国時代の本能寺に辿り着いてしまう。しかも、日時は「本能寺の変」の前日。織田信長(堤真一)はその懐の広さによって繭子の存在を受け入れ、繭子は信長や森蘭丸...
「檸檬」梶井基次郎 評価:2点|詩情溢れる耽美で大胆な短編集【純文学】
詩情豊かな作風で日本文学史に名を残す梶井基次郎の短編集です。梶井の代表作であり、表題作ともなっている「檸檬」。人気のライトミステリシリーズのパロディ元にもなるなど引用されることが多い「桜の樹の下には」。教科書にも採用され、目にしたことのある人も多いであろう「Kの昇天」。独特な感覚による日常の観察と、清新さと陰翳を併せ持つ文体に酔わされます。あらすじ「檸檬」肺病に苦しみ、借金取りに追われる男は、日常の何もかもを楽しめないでいた。そんな時、男は果物屋でレモンに魅入られる。そのレモンを買い、丸善に向かった男がとった行動とは......。「Kの昇天」ある日、「私」はK君が溺死したとの手紙を受け取り、かつてK君と過ごした 1ヶ月ほどの期間を思い出す。K君は砂浜で、下を見ながら行ったり来たりを繰り返していた。月の夜に自分の影を見ていると、だんだんと影が人格を持ち始め、本当の自分は月へ昇っていくような感覚になるという。そう、K君はついに月に昇りきったのだ。「私」はそう直感する。「桜の樹の下には」桜の樹の下には屍体が埋まっている。桜が醸し出す幻覚のような神秘的雰囲気を不思議に思っていた主人公はその原因...
「陽だまりの彼女」越谷オサム 評価:1点|ご都合主義的な展開と不自然なヒロインが織り成す駄作【恋愛小説】
「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」そんなキャッチコピーのもと、一時期は書店でかなりプッシュされていた作品。売り上げはミリオンセラーにまで至り、映画も大人気とのことですが、物語の構造的にちょっとこれを楽しむのは無理があるだろうという点が多くある作品で個人的には駄作だと感じました。あらすじ主人公、奥田浩介は交通広告代理店の若手営業マン。ある日、営業先のランジェリーメーカーを訪れたとき、ある女性と再会する。その女性の名前は渡会真緒。浩介と彼女はかつて中学校の同級生であった。非常に頼りなかったかつての彼女とは打って変わって、いまやデキるキャリアウーマン街道まっしぐらの真緒に、浩介は驚きを隠せない。そんな真緒も、浩介との再開を喜んでいた。かつて中学校でいじめられていたところを浩介に救われた彼女は、浩介と過ごした日々を大切に想っていたのである。社会人として出会った二人だったが、その仲が縮まるのに時間はかからなかった。無事、幸せな結婚生活が始まったのだが、しばらくすると、彼女に体調不良が頻発するようになり、身体も痩せ細っていってしまう。病院に行っても「異常なし」と診断されるが、浩介は真緒の...
「O・ヘンリ短編集」O・ヘンリ 評価:3点|短編の名手が贈る風格と哀愁の作品集【海外文学】
第一巻19世紀に活躍した短編の名手、O・ヘンリの作品集。アメリカの都会に生きる人々の哀愁と情緒あふれる生活がシニカルさと人情味をもって描かれている、そんな作品たちでした。あらすじ「緑の扉」ルドルフ・スナイダーは街を歩いているとき、チラシ配りの男から「緑の扉」と書かれたチラシを受け取った。不審に思いもう一度チラシ配りの前を通ってみるが、やはり他の人とは違い、自分にだけそのチラシは配られる。周囲を見渡し、緑の扉のアパートを発見したスナイダー。彼がドアを開けると、そこには女性が倒れていて.....。「ハーグレイブズの一人二役」ワシントンのある家に間借りしているのは、南部出身の堅物、トールボット少佐。そのあまりに古風なふるまいを周囲は嗤うのだが、ただ一人、 ハーグレイブズ青年だけは彼の昔話を熱心に聞いていた。感心するトールボット少佐だったが、ある日、トールボット少佐が劇を見に行くと、そこにはおもしろおかしく少佐の真似をする役者ハーグレイブズがいて......。以上2編を含む16編を収録。感想どの話もウィットが効いていて非常に面白いです。人間のちょっと間の抜けたところや勘違い、思わぬ行き違いなど...
【暗いところで待ち合わせ】視覚障がい者の住む家に身を潜めた殺人容疑者の運命やいかに 評価:4点【乙一】
人気作家、乙一さんの文庫書き下ろし作品です。類を見ない斬新な設定と普遍的で温かな感情を共存させたこの作品。私としては乙一さんの最高傑作だと思っています。あらすじ視力を失い、保険金で日々を静かに暮らすミチル。そんなミチルは、最近、自宅で奇妙な感覚に襲われていた。擦れるような小さな音が頻繁に聞こえ、誰もいないはずの空間から空気の揺らぎを感じる。一方、とある殺人事件の犯人として追われていたアキヒロは、ミチルの家に逃げ込み、部屋の一角を居場所としていた。偶然が起こした不思議な同居。それぞれが異なる理由で怯える両者だったが、やがてその関係にも変化が訪れる。死んだように暮らしているミチルと、孤独に生きてきたアキヒロ。二人の運命やいかに......。 感想素晴らしい作品、傑作です。人との関りが苦手、という二人が出会う物語なのですが、まず、その「孤独」描写が秀逸。ただ単に「暗いと呼ばれていた」「人を避けがちだった」と描写するだけでなく、馬鹿にされたときの心理や、悔しくやり切れず、怒りを感じながらも何もできない感情。他人に「怯える」とはどういう状態かということが緻密に描かれており、物語に切迫感と現実感を...
【理想的な高校生活】漫画「天使なんかじゃない」矢沢あい 評価:2点【少女漫画】
「NANA」で大ブレイクした矢沢あいさんの出世作。若者の恋愛事情を描く作者得意のスタイルで、芸能人のファンなども多いのだとか。しかし、私としてはそこまで高く評価はできませんでした。そこそこ読めるのですが、一般的な人間が共感できる作品なのか、という点で大きく欠けるところのある作品だと思います。あらすじ舞台は創立したばかりの私立高校である聖学園。一期生として入学した冴島翠(さえじま みどり)は、二学期から結成される生徒会の役員候補として、クラス推薦で立候補することになってしまった。何とか演説を終えた翠だったが、マイクの線に足を引っかけて転倒。そこをフォローしたのが、不良風の容姿をした男子生徒、須藤晃(すどう あきら)だった。二人の運命の出会いとともに旗揚げされた生徒会。少し堅くて高飛車なお嬢さまである麻宮裕子(まみや ゆうこ)。長身で生徒会のなだめ役、瀧川秀一(たきがわ しゅういち)。お調子者のラグビー部員、河野文太(こうの ぶんた)。五人が過ごす、切なくて激情的で、そしてなによりも温かい高校生活。感想なんだか客観的に読んでしまうお話でした。作中、登場人物たちは様々な恋のかたちに巻き込まれ...
「教育行政の政府間関係」青木栄一 評価:2点|教育行政において地方政府が中央政府に隷属しているという通説に対する挑戦【政治学】
現在、東北大学で准教授を務めておられる著者の博士論文に改稿を加えたもので、中央政府―地方政府の関係性から教育行政においてどのように政策決定がなされているかを研究した本です。私にとって新たな発見もありましたが、全体的に著者の主張の重要性が十分に論証されていたとは言い難いと感じました。概要先行研究において、教育行政は中央政府(=文部省)が機関委任事務や国庫負担金といった制度を通じて地方政府(=都道府県、市町村)を統制してきたと考えられてきた。しかし、実際には地方政府にも一定の自律性と裁量があり、独自政策を実行する余地がある。それゆえ、中央政府も、そういった地方政府独自の取り組みや、地方政府による様々な要望を加味したうえで政策を決定している。そのため、地方政府も教育行政の政策形成に影響を及ぼしており、また、中央政府と地方政府の力関係は一方的なものではなく、双方向的に影響を与え合う類のものとなっている。目次第Ⅰ部 制度分析第1章 第Ⅰ部の課題設定第2章 戦後日本における公立学校施設整備政策の変遷第3章 国庫支出金制度の変容――時系列分析第4章 市町村公立学校施設整備事業の財政統計分析第5章 財...