社会学・歴史・スポーツ

☆☆(新書・教養書)

新書 「江戸東京の明治維新」 横山百合子 星2つ

1. 江戸東京の明治維新 帯の煽り文は「150年前の胸に刺さる現実」。明治維新といえば通常、政府高官として新しい日本をつくりあげていく明治の元勲たちに焦点が当たるか、もしくは、幕府側の将軍とその側近であったり、最後まで佐幕派として戦った武士たちに焦点が当たるかの2択になってしまいがちなところ、本書は旧江戸・新東京に生きた庶民たちの生活について説明しようとしているという点で差異化が図られております。 著者は国立歴史民俗博物館教授の横山百合子さん。東大の学部を卒業後、社会科教員として勤めた後に博士課程を経て大学教員としてのキャリアを歩み始めたという人物です。本筋からは逸れますが、リカレント教育の重要性が盛んに言及される中で、今後、日本でもこのような経歴を持つ人が増えるといいな感じます。 そして肝心の中身ですが、題材は新鮮だけれどもやや散漫というイメージ。庶民の生活変化の全体像をとらえるというよりは事例集という形式になっており、下級武士の誰それはこう生きた、遊女の誰それはこう生きた、賤民の誰それはこう生きたというような記述が続きます。その生き様の書かれ方は具体的で面白いの...
☆☆☆(新書・教養書)

新書 「日本社会のしくみ」 小熊英二 星3つ その2

1. 日本社会のしくみ その2 日本の特徴的な雇用慣行の形成過程を国際比較や歴史的観点から解説する分厚い(600ページ!)新書。レビューも長くなって「その1」を受けての「その2」になります。「その1」はこちら。 感想欄の記述は「その1」から直に繋がっておりますので、「その1」を読んでからご覧ください。 2. 目次 序章第1章 日本社会の「三つの生き方」第2章 日本の働き方第3章 歴史の働き第4章 「日本型雇用」の起源第5章 慣行の形成第6章 民主化と「社員の平等」第7章 高度成長と「学歴」第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか 3. 感想 それでは、どうしてこのような差が生まれたのでしょうか。その理由は歴史的経緯の違いであり、その解説こそ本書のメインディッシュになります。欧州では中世の「ギルド」からの名残りで職種別組合が発展し、組合が特定技能の教育・技術認定を行ったほか、組合が同一技能だと認めた職人同士が所属企業の違いという理由で給与差が生まれないようはたらきかけたためです。一方...
☆☆☆(新書・教養書)

新書 「日本社会のしくみ」 小熊英二 星3つ その1

1. 日本社会のしくみ その1 あとがき・参考文献一覧含めると600ページにも及ぶ新書として一部界隈で有名になった作品で、定価も税別1300円と新書らしからぬ値段です。しかしながら、それに値する中身も備わっておりました。 著者は慶応大学総合政策学部教授の小熊さん。本ブログでは若き日の傑作「単一民族神話の起源」をレビュー済みです。 「単一民族神話」からはうって変わって「日本の雇用慣行」がテーマの本作。しかし、ステレオタイプを退け、データや具体例をもとに社会の構造や傾向を解き明かしていこうとする姿勢は変わっておりません。より現代的なテーマになり、新書という枠組みで著すにふさわしい時機を捉えた作品になっていると感じました。 2. 目次 序章第1章 日本社会の「三つの生き方」第2章 日本の働き方第3章 歴史の働き第4章 「日本型雇用」の起源第5章 慣行の形成第6章 民主化と「社員の平等」第7章 高度成長と「学歴」第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか 3. 感想 「日本社会のしくみ」...
☆☆☆(新書・教養書)

教養書 「単一民族神話の起源」 小熊英二 星3つ その2

1. 単一民族神話の起源 その2 「日本人は1つの民族を起源としている」「日本人は全員、大和民族の末裔である」「 日本人は農耕民族」「日本人気質」「島国根性」「統一性が高い」。 日常生活のから政治の場まで、いたるところで耳にする、ある種の「日本人単一民族」論。 厳密な意味であれ比喩的な意味であれ、日本人が単一の属性を持っている、もしくは、単一の民族から構成されているという言説や意識はどこから来るのか。 明治時代から遡り、その起源を明らかにする「単一民族神話の起源」の感想その2です。 前稿である「その1」はこちら。 「その1」では「第一部 『開国』の思想 」について記述しましたので、本稿では「第二部 『帝国』の思想 」及び「 第三部 「島国」の思想」 を取り上げます。 2. 目次 第一部 「開国」の思想第二部 「帝国」の思想第三部 「島国」の思想 3. 感想 第二部では、日本が「帝国化」していく中で唱えられた様々な民族論が紹介されます。 まず最初に紹介されるのは、歴史家である嘉田貞吉の取り組...
☆☆☆(新書・教養書)

教養書 「単一民族神話の起源」 小熊英二 星3つ その1

1. 単一民族神話の起源 その1 「日本人は1つの民族を起源としている」「日本人は全員、大和民族の末裔である」。政治に関心のある人ならば、そんな言説をどこかで耳にしたことがあるかもしれません。 あるいは、「日本人は農耕民族」「日本人気質」「島国根性」「統一性が高い」くらいならば政治に関係のない(と言うと政治に関心の高い人からは怒られるかもしれませんが)日常生活の中でも一度は聞いたことがあるに違いありません。 しかしながら、 厳密な意味であれ比喩的な意味であれ、日本人が単一の属性を持っている、もしくは、単一の民族から構成されているという言説や意識はどこから来ているのでしょうか。 よくよく考えるまでもないことですが、人類の祖先はアフリカのとある地域から世界各地へ広がったのですし、定住が始まって以降も世界との様々な交流の中で人類の混血は進んでいて、何がしかの意味で日本人(その定義自体も微妙ですが)の起源が特別に単一であるということはないでしょう。それでも、私たちの日常生活には広く「単一民族意識」的なものが敷衍しています。 「民族」という言葉はそれこそ定義...
☆☆☆(新書・教養書)

新書 「忘れられた日本人」 宮本常一 星3つ

1. 忘れられた日本人 国際化が進み世界的に人の交流が活発になっていく中で、国境の存在感がますます曖昧になっている現代。欧米では移民に対する反発を通じて、「~国民であること、~民族であること」を強調する集団が力をつけてきています。日本でも観光客のみならず、事実上定住している外国人の数は増え続けており、更に外国人労働者の受け入れ条件が緩和されるなど、国際化の波に乗ろうとしているわけですが、その一方で、外国人への侮蔑的な発言を公然と行う人も、SNS上であれ、路上であれ、増加しているように感じます。 もちろん、日本人のマジョリティとは異なる文化的背景の中で育ってきた人々の数が増えてくれば、 お互いの文化が溶け合って、折衷的な良い新文化が生まれることも期待できる一方で、 既存の日本的文化との軋轢も当然に生まれてくるでしょう。 そういった点で、差別心とまでは言わないまでも、日本人的に暮らしてくれないなら、日本のルールを守ってくれないなら(この「ルール」は法律というより慣習のことです)、来てくれなくてもいい、あるいは、来るのは仕方がないが、既存の秩序や生活が乱されないか心配だと...
☆☆(新書・教養書)

新書 「スポーツ国家アメリカ」 鈴木透 星2つ

1. スポーツ国家アメリカ 著者は慶応大学教授でアメリカ文化研究が専門の鈴木透教授。「民主主義と巨大ビジネスのはざまで」というサブタイトル通り、政治や経済との関わりが意識された内容でした。帯には伝説の野球選手であるベーブ・ルースや、近年興隆するアメリカ女子サッカーの一場面を捉えた写真と共にトランプ大統領がプロレスのイベントに参加する写真も掲載されており、本書の雰囲気が伝わってきます。 ただ、内容の質としては、知識面においてWikipedia記事の寄せ集め、論理面においてやや強引なこじつけが多くみられました。「アメリカ・スポーツ・政治・ビジネス」に関心があり、最初からある程度の知識がある人は読む必要がなく、そうでない人にわざわざ推奨するほどの本でもないというのが正直な感想です。 スポーツ国家アメリカ - 民主主義と巨大ビジネスのはざまで (中公新書) posted with ヨメレバ 鈴木 透 中央公論新社 2018-03-20 Amazon Kindle 楽天ブックス
☆☆☆☆(新書・教養書)

教養書 「孤独なボウリング」 ロバート・パットナム 星4つ

1. 孤独なボウリング 「社会関係資本」という概念に光をあて、様々な分野に影響を与えた本です。著者のパットナム教授はこの本で一躍スター研究者となりました。 ご近所づきあいや会合などの社会的紐帯の減少という、誰もが個人としては感じていることを米国全体というスケールで分析し、その原因、そして影響を社会的・政治的なものに結びつけた大著。 もはやどの分野でも無視できなくなった「社会関係資本」をアカデミック界に知らしめた作品として、非常に読みごたえがありました。 孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生 posted with ヨメレバ ロバート・D. パットナム 柏書房 2006-04-01 Amazon Kindle 楽天ブックス
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