☆☆☆(教養書)

☆☆☆(教養書)

新書 「物語 フランス革命」 安達正勝 星3つ

1. 物語 フランス革命 フランス革命の経過を有名な事件のあらましや活躍した著名人のエピソードを中心として「物語」風に語っていく著作。 中公新書から出版されている本ですが、学術的な知識や思考を大衆に伝えるためというよりは、世界史の教科書やwikipediaを詳しくしたような内容になっております。 私もフランス革命の知識は高校の世界史止まりであり、「バスチーユ」や「ジャコバン派」、「ロベスピエール」といった穴埋め問題を解くレベルの断片的な文言だけが頭の中にある状態でしたが、本書を読むことでフランス革命という出来事全体が「物語」として頭の中で繋がっていく感覚を得ることができました。 2. 目次 序章 フランス革命とは第1章 「古き良き革命」の時代第2章 革命的動乱の時代へ第3章 国王の死第4章 ジャコバン政府の時代第5章 恐怖政治ー革命政府の暗黒面第6章 ナポレオンの登場 3. 目次 ルイ16世の治世下で始まった財政改革が民衆の怒りに火をつけ、王政を打倒するにまで至ったフランス革命。 バスチーユ牢獄襲撃の成功によって深まる大衆の自信...
政治制度・統治機構・法学

教養書 「コラプション なぜ汚職は起こるのか」 レイ・フィスマン他 星3つ

1. コラプション なぜ汚職は起こるのか ボストン大学の経済学者レイ・フィスマン教授とカリフォルニア大学の政治学者ミリアム・A・ゴールデン教授による「汚職」についての共著。二人とも異なるアプローチから「汚職」を研究してきたこの道の大家であり、それでいて本書は一般向け(といっても「汚職」の普遍的構造に関心を持つ「一般」向けですが)の著作になっております。 学術書ではないことから事例中心の記述となっておりますが、個々の汚職を個人の道徳的資質の問題として矮小化するのではなく、様々な汚職の事例を「均衡」という思考枠組みの中で捉え、学術的な視点から論じていくのはまさに本格派といったところ。度肝を抜かれる面白さとまではいきませんでしたが、この分野に興味がある方にとって知的な興奮をもたらしながらも肩の力を抜いて読める本だといえるでしょう。 2. 目次 第1章 はじめに第2章 汚職とは何だろう?第3章 汚職がいちばんひどいのはどこだろう?第4章 汚職はどんな影響をもたらすの?第5章 だれがなぜ汚職をするのだろうか?第6章 汚職の文化的基盤とは?第7章 政治制度が汚職に...
☆☆☆(教養書)

教養書 「戦争の世界史」その4 ウィリアム・H・マクニール 星3つ

1. 戦争の世界史 その4 「戦争の世界史」レビュー最終編になります。「その4」ではついに第一次世界大戦と第二次世界大戦が取り上げられ、いわゆる国家総力戦体制が世界市場に登場する過程が明らかにされていきます。前編「その3」はこちら。 2. 目次 ・上巻第1章 古代および中世初期の戦争と社会第2章 中国優位の時代 1000~1500年第3章 ヨーロッパにおける戦争というビジネス 1000~1600年第4章 ヨーロッパの戦争のアートの進歩 1600~1750年第5章 ヨーロッパにおける官僚化した暴力は試練のときを迎える 1700~1789年第6章 フランス政治革命とイギリス産業革命が軍事におよぼした影響 1789~1840年 ・下巻第7章 戦争の産業化の始まり 1840~1884年第8章 軍事・産業間の相互作用の強化 1884~1914年第9章 二十世紀の二つの世界大戦第10章 一九四五年以降の軍備競争と指令経済の時代 3. 概要 第九章では、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じて総力戦体制が構築される過程が説明されます。 第...
スポンサーリンク
社会学・歴史・スポーツ

教養書 「戦争の世界史」その3 ウィリアム・H・マクニール 星3つ

1. 戦争の世界史 その3 たった一人で通史を描き出した「世界史」という本で有名なマクニール教授が、今度は「戦争」という観点から世界史を描き出した本作。「その2」から続いてレビューしていきます。「その3」で取り上げるのは下巻の内容、〈戦争の産業化〉が始まる1840年以降の歴史が解説されています。 2. 目次 ・上巻第1章 古代および中世初期の戦争と社会第2章 中国優位の時代 1000~1500年第3章 ヨーロッパにおける戦争というビジネス 1000~1600年第4章 ヨーロッパの戦争のアートの進歩 1600~1750年第5章 ヨーロッパにおける官僚化した暴力は試練のときを迎える 1700~1789年第6章 フランス政治革命とイギリス産業革命が軍事におよぼした影響 1789~1840年 ・下巻第7章 戦争の産業化の始まり 1840~1884年第8章 軍事・産業間の相互作用の強化 1884~1914年第9章 二十世紀の二つの世界大戦第10章 一九四五年以降の軍備競争と指令経済の時代 3. 概要 第七章では、蒸気船と鉄道、そして工作機...
☆☆☆(教養書)

教養書 「戦争の世界史」その2 ウィリアム・H・マクニール 星3つ

1. 戦争の世界史 その2 たった一人で通史を描き出した「世界史」という本で有名なマクニール教授が、今度は「戦争」という観点から世界史を描き出した本作。「その1」から続いてレビューしていきます。 2. 目次 ・上巻第1章 古代および中世初期の戦争と社会第2章 中国優位の時代 1000~1500年第3章 ヨーロッパにおける戦争というビジネス 1000~1600年第4章 ヨーロッパの戦争のアートの進歩 1600~1750年第5章 ヨーロッパにおける官僚化した暴力は試練のときを迎える 1700~1789年第6章 フランス政治革命とイギリス産業革命が軍事におよぼした影響 1789~1840年・下巻第7章 戦争の産業化の始まり 1840~1884年第8章 軍事・産業間の相互作用の強化 1884~1914年第9章 二十世紀の二つの世界大戦第10章 一九四五年以降の軍備競争と指令経済の時代 3. 概要 第四章では、1600~1750年のあいだに進行したヨーロッパ軍隊の劇的な質的変容が語られます。 イタリア諸都市が市民皆兵から傭兵にその軍備の中...
社会学・歴史・スポーツ

教養書 「戦争の世界史」その1 ウィリアム・H・マクニール 星3つ

1. 戦争の世界史 その1 古来から、人類社会と切っても切り離せない関係にあった「戦争」という営み。本書のサブタイトルである「技術と軍隊と社会」という言葉の通り、「戦争」は人類の生活に絶え間なく影響を与え続け、いまなお私たちの生活と切っても切り離せない関係にあると言えるでしょう。 レトルト食品からインターネットまで軍事技術から生まれた製品は数知れず、また、「軍隊式」と呼ばれるような行動様式や規律保持方法は会社や学校と行った私たちの暮らしの中心となる場所に多かれ少なかれ浸透しています。軍隊の階級こそ戦後日本の企業体や雇用方式の源流になったという考え方は、「日本社会のしくみ」でも紹介されておりました。 経済という意味でも、防衛関連産業は世界各国において主力産業となっていますし、より時間を戻せば、社会経済の全てが戦争に動員されていた時期だってあるわけです。 そもそも、現存する国家(諸集団・諸社会)というものは必ず、これまでの「戦争」を生き残り滅亡を免れてきたわけですから、その歴史や特徴を考えるとき「戦争」という切り口が有効なのは火を見るより明らかでしょ...
政治制度・統治機構・法学

教養書 「市民政府論」 ジョン・ロック 星3つ

1. 市民政府論 日本国憲法が基本的人権の擁護を柱としていること、政府が存在し様々な活動を通じて国民生活を支えていること。これらは中学校の社会の教科書に載っている内容ではありますが、このような言説の中では基本的人権の存在や政府の存在が自明になっており、なぜ、基本的人権は存在する(べきな)のか、なぜ(民主的な)政府が存在する(べきな)のかといったことはなかなか語られません。 こういった発想は優等生的ではないのかもしれませんが、なぜ基本的人権や民主的な政府の存在が自明に良いとされているのか、疑問に思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 本書「市民政府論」はそんな疑問に答える著作の一つとなっております。基本的人権や民主的な政府が当たり前ではなかった時代、その存在を論理的に正当化しようとした人々がおりまして、その代表格の一人が本書の著者であるジョン・ロックになります。 なお、「市民政府論」はロックの著作である「統治二論」のうち後編にあたります。現在は岩波文庫から前後編が収録された新訳が出版されておりますので、そちらを手に取るのがいいかもしれません。 ...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「日本の税金 第3版」 三木義一 星3つ

1. 日本の税金 2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられ、同時に軽減税率も導入されました。 最近ではレジで持ち帰りだと宣言して軽減税率の恩恵を受けながら、実際にはイートインスペースで店内飲食する「イートイン脱税」が問題になるなど、前途多難の様相です。 もちろん、「イートイン脱税」は悪いことですが、「制度設計が人々の行動に及ぼす影響」としては典型的で実感しやすい例にもなっておりまして、これを機に政治・政策分野における「制度設計」の対してもっと関心が集まって欲しいと思うところであります。 さて、上述のようにわたしたちの生活に多大な影響を与える「税金」ですが、こういった個別の問題から派生して、そもそも、いったいどのような税金が日本には存在しているのか、そして、それらはどのような制度設計が為されていて、その制度設計はどのような理念に基づくものなのか、ということに興味が湧いてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで、今回紹介するのが本書になっております。題名通り日本において施行されている税金について概括的に説明した書籍になっておりまして、2...
☆☆☆(教養書)

教養書 「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」 シド・フィールド 星3つ

1. 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと 映画脚本の書き方を定式化し、今日においてもその理論は色褪せるどころか「三幕構成」として多くの創作家たちに受け入れられている脚本家、シド・フィールドの著書。映画脚本の指南書として書かれ、著者自身もそのつもりだったものの、映画に関わらず広い意味での物語創作術の古典として知られています。 内容はなかなか面白かったですね。言われてみれば当然だけれど確かにそれをやるのとしないのとでは違うだろうなぁという脚本づくりの基礎が述べられており、そもそも脚本の中の要素(主題・登場人物・ストーリーライン)がどうやって生まれてくるのか、それらをどのようなフレームワークに収めればよいのかが書かれています。やや繰り返しが多くて文章が散漫、また、具体例として言及する映画が偏っているという点に難を感じましたが、読後は物語を見る目が少し変わるかもしれません。 2. 目次 第1章 映画脚本とはなにか第2章 主題(テーマ)を作る第3章 登場人物(キャラクター)を創造する第4章 登場人物(キャラクター)を構築する 第5章 ストーリーと人物...
☆☆☆(教養書)

新書 「日本社会のしくみ」 小熊英二 星3つ その2

1. 日本社会のしくみ その2 日本の特徴的な雇用慣行の形成過程を国際比較や歴史的観点から解説する分厚い(600ページ!)新書。レビューも長くなって「その1」を受けての「その2」になります。「その1」はこちら。 感想欄の記述は「その1」から直に繋がっておりますので、「その1」を読んでからご覧ください。 2. 目次 序章第1章 日本社会の「三つの生き方」第2章 日本の働き方第3章 歴史の働き第4章 「日本型雇用」の起源第5章 慣行の形成第6章 民主化と「社員の平等」第7章 高度成長と「学歴」第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか 3. 感想 それでは、どうしてこのような差が生まれたのでしょうか。その理由は歴史的経緯の違いであり、その解説こそ本書のメインディッシュになります。欧州では中世の「ギルド」からの名残りで職種別組合が発展し、組合が特定技能の教育・技術認定を行ったほか、組合が同一技能だと認めた職人同士が所属企業の違いという理由で給与差が生まれないようはたらきかけたためです。一方...
☆☆☆(教養書)

新書 「日本社会のしくみ」 小熊英二 星3つ その1

1. 日本社会のしくみ その1 あとがき・参考文献一覧含めると600ページにも及ぶ新書として一部界隈で有名になった作品で、定価も税別1300円と新書らしからぬ値段です。しかしながら、それに値する中身も備わっておりました。 著者は慶応大学総合政策学部教授の小熊さん。本ブログでは若き日の傑作「単一民族神話の起源」をレビュー済みです。 「単一民族神話」からはうって変わって「日本の雇用慣行」がテーマの本作。しかし、ステレオタイプを退け、データや具体例をもとに社会の構造や傾向を解き明かしていこうとする姿勢は変わっておりません。より現代的なテーマになり、新書という枠組みで著すにふさわしい時機を捉えた作品になっていると感じました。 2. 目次 序章第1章 日本社会の「三つの生き方」第2章 日本の働き方第3章 歴史の働き第4章 「日本型雇用」の起源第5章 慣行の形成第6章 民主化と「社員の平等」第7章 高度成長と「学歴」第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか 3. 感想 「日本社会のしくみ」...
創作論・物語論

教養書 「千の顔を持つ英雄」 ジョーゼフ・キャンベル 星3つ

1. 千の顔を持つ英雄 哲学者・神話学者として有名なジョーゼフ・キャンベル教授の代表的著作で、ジョージ・ルーカス監督が本作を参考にして映画「スター・ウォーズ」シリーズを製作したと述べていることでも有名です。 世界各地の神話に見られる「英雄の旅」。一見、それぞれの神話は全く異なる物語や意味を提示しているようで、その実、そこには共通の構造や意味があり、それこそ過去の人々が神話を構築して後世に伝えようとしたある種の「真理」だという画期的な神話解釈で脚光を浴び、今日まで創作者のバイブルとして扱われています。 2. 目次 プロローグ モノミスー神話の原型第一部 英雄の旅第二部 宇宙創成の円環エピローグ 神話と社会 3. 感想 神話での「英雄の旅」における典型的な展開が短く説明されたのち、それを立証するために大量の古今東西神話エピソードが紹介されるという流れで基本的には話が進んでいきます。 とはいえ、さすが「哲学者・神話学者」という著者の肩書だけあって、決して読みやすい本ではありません。 紹介される神話のエピソードはほとんどが断片的なもので...
☆☆☆(教養書)

教養書 「単一民族神話の起源」 小熊英二 星3つ その2

1. 単一民族神話の起源 その2 「日本人は1つの民族を起源としている」「日本人は全員、大和民族の末裔である」「 日本人は農耕民族」「日本人気質」「島国根性」「統一性が高い」。 日常生活のから政治の場まで、いたるところで耳にする、ある種の「日本人単一民族」論。 厳密な意味であれ比喩的な意味であれ、日本人が単一の属性を持っている、もしくは、単一の民族から構成されているという言説や意識はどこから来るのか。 明治時代から遡り、その起源を明らかにする「単一民族神話の起源」の感想その2です。 前稿である「その1」はこちら。 「その1」では「第一部 『開国』の思想 」について記述しましたので、本稿では「第二部 『帝国』の思想 」及び「 第三部 「島国」の思想」 を取り上げます。 2. 目次 第一部 「開国」の思想第二部 「帝国」の思想第三部 「島国」の思想 3. 感想 第二部では、日本が「帝国化」していく中で唱えられた様々な民族論が紹介されます。 まず最初に紹介されるのは、歴史家である嘉田貞吉の取り組...
社会学・歴史・スポーツ

教養書 「単一民族神話の起源」 小熊英二 星3つ

1. 単一民族神話の起源 その1 「日本人は1つの民族を起源としている」「日本人は大和民族の末裔である」。 政治に関心のある人ならば、そんな言説をどこかで耳にしたことがあるかもしれません。 あるいは、「日本人は農耕民族」「日本人気質」「島国根性」「統一性が高い」くらいならば政治に関係のない(と言うと政治に関心の高い人からは怒られるかもしれませんが)日常生活の中でも一度は聞いたことがあるに違いありません。 しかしながら、 厳密な意味であれ比喩的な意味であれ、日本人が単一の属性を持っている、もしくは、単一の民族から構成されているという言説や意識はどこから来ているのでしょうか。 よくよく考えるまでもないことですが、人類の祖先はアフリカのとある地域から世界各地へ広がったのですし、定住が始まって以降も世界との様々な交流の中で人類の混血は進んでいて、何がしかの意味で日本人(その定義自体も微妙ですが)の起源が特別に単一であるということはないでしょう。それでも、私たちの日常生活には広く「単一民族意識」的なものが敷衍しています。 「民族」という言葉はそれこそ定...
経済・金融・経営・会計・統計

教養書 「制度・制度変化・経済成果」 ダグラス・C・ノース 星3つ

1. 制度・制度変化・経済成果 1993年のノーベル経済学賞受賞者、ダグラス・C・ノースの著書で、原著は1990年刊行ですから当時の業績を纏めた内容となっております。難解な言い回しも目立ちますが(堅い訳だからかもしれませんが)、「制度」を軸に新古典派経済学に対して大きな影響を与えた現代の古典として面白く読むことができます。 2. 目次 第Ⅰ部 制度第Ⅱ部 制度変化第Ⅲ部 経済成果 3. 感想 本書全体が問いかけることとしてまず出てくるのが、当時隆盛を誇っていた新古典派経済学(の競争と淘汰を強調する部分)に対する、「それではなぜ、『既に競争は終わっていないのか』」という語りかけです。 確かに、わたしたちの身の回りでも、あるいは様々な国の経済体制を知識として学んでいく中でも、そこには決して効率的な制度ばかりがあるわけではなく、むしろ、非効率的な制度が多く残存していることに気づきます。 なぜ、競争圧力は非効率的な制度の除去を導かないのか、導くとしても、なぜ素早くないのか。なぜ僅かな経済停滞国しか経済発展国のモデルを見習って効率的な制度を導入...
スポンサーリンク