【青春夜間歩行】小説「夜のピクニック」恩田陸 評価:4点【青春小説】
長期間に渡って小説界の第一線で活躍する作家、恩田陸さんの作品。2016年に「蜂蜜と遠雷」で直木賞を獲るまでは本作が筆頭の代表作として挙げられることが多かったように思います。第2回本屋大賞を受賞してから爆発的に売れ始め、まさに発掘された名作となった作品。その内容は、高校生三年生たちが80kmの夜間歩行に挑むというだけの物語。しかし、その過程で繰り広げられるささやかな心理的すれ違いについての描写が超一級品という、特異な魅力を持った作品です。輝きと後ろめたさの両方を伴う、未熟な友情・恋愛の機微に誰もが郷愁を感じるのではないでしょうか。派手な展開ではなく、耽美で繊細な心理描写と叙情的な夜間歩行の風景描写で魅せる作品。あまり小説を読んだことがない人でも、無類の小説好きでも感動できる小説です。あらすじ甲田貴子(こうだ たかこ)が通う学校には「歩行祭」という特別な行事がある。3年生全員が体育用のジャージを身に纏い、夜を徹して80kmもの道のりを歩くという行事。当日、友人である遊佐美和子(ゆさ みわこ)と歩きながら、貴子は自分に課した一つの試練を思い返していた。その試練とは、この歩行祭のあいだに、ク...
2021.04.04
☆☆☆☆(小説)作品の感想恩田陸