作品の感想

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新世紀エヴァンゲリオン

【駄作への急落】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」庵野秀明 評価:1点【アニメ映画】

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の感想はこちらあらすじエヴァ初号機と第10使徒との交戦により発生したニア・サードインパクトから14年が経過。葛城ミサトは反NERV組織WILLEを率い、NERVによる人類補完計画を阻止するべく戦いを続けていた。そんな中、14年振りに目覚めた碇シンジはWILLEの旗艦Wunder内部で葛城ミサトや式波・アスカ・ラングレーと再開する。ところが、二人がシンジに向ける言葉や行動は非常に冷たく、シンジは異常を感じ取る。WILLEの艦隊がNERVによる強襲を受けると、シンジは綾波レイ搭乗のエヴァ初号機と接触。初号機に連れられてWunderを脱出し、レイとともにNERVへと向かうのだった。NERVでレイとも顔を合わせ、新しい友人である渚カオル(なぎさ かおる)とも親しくなったシンジ。ようやく元気を取り戻しかけたシンジだが、4年前に起こったニア・サードインパクトとその後の顛末を知ることになり……。感想何もかもぶち壊しにしてしまったという印象です。シンジがエヴァンゲリオンのパイロットという経験を通じて大人になっていく物語としての、ヒューマンドラマとしての魅力に溢れた物語か...
☆☆☆☆(教養書)

【経済学入門の王道】教養書「マンキュー経済学 ミクロ編」グレゴリー・マンキュー 評価:4点【経済学】

目次第Ⅰ部 イントロダクション第Ⅱ部 市場はどのように機能するか第Ⅲ部 市場と厚生第Ⅳ部 公共部門の経済学第Ⅴ部 企業行動と産業組織第Ⅵ部 労働市場の経済学第Ⅶ部 より進んだ話題感想世界で最も有名な経済学の教科書であり、特にアメリカでは長年に渡り有名大学で採用されてきた入門書です。近年ではその古典派的な傾向が批判され、より(アメリカ的な意味での)リベラルな教科書への置き換えが進む傾向にあるという記事もありますが、本書こそ伝統的な経済学の考え方を学ぶにはうってつけだという証左でもあるのだと思います。(よりリベラルな教科書となるとクルーグマンあたりでしょうか)オーソドックスな経済学の思考枠組みが丁寧に語られるという内容のため、経済学についての新しい知見という意味での驚きは少なかったのですが、大変優れた「教科書」であることはひしひしと実感できたため、本記事では本書の「教科書」としての美点を3つ語っていきます。①一から十まで論理的かつ丁寧に説明する社会的な事象に関心があり、進学校卒業程度の知識や思考力は持つが、経済学のことは全く知らない。そんな人に向けて、経済学についての考え方をゼロから頭の中...
マーク・トゥエイン

【古き良き時代の小学生男子物語】小説「トム・ソーヤーの冒険」マーク・トゥエイン 評価:2点【海外文学】

あらすじ時代は19世紀中盤、舞台はミズーリ州の田舎町セント・ピーターズパーク。10歳の少年トム・ソーヤーは大変な悪戯好きで、いつも騒動を巻き起こしては育ての親であるポリー伯母さんに叱られている。塀のペンキ塗りを巧みな手腕で友人たちに押し付けたり、新入りの少年と取っ組み合いの喧嘩をしたり、同級生の少女ベッキー・サッチャーにアプローチしてみたり、ホームレスの少年ハックルベリー・フィンと一緒に家出をしてみたりと、トムの日常は大なり小なりの冒険に溢れている。そんなある日、トムは真夜中の墓地で殺人事件を目撃してしまう。恐怖に駆られながら町に戻ったトム。しかし、彼には更なる試練が訪れる。真犯人のインシャン・ジョーは犯罪の隠匿を画策、マフ・ポッター老人に罪を被せようとしていて……。感想子供向けの純粋なエンタメ冒険小説です。小学校高学年男子がやりそうな悪戯や、やってみたいと思うような冒険(家出をして森で寝泊まりしたりなど)のエピソードが散りばめられており、児童文学としてはまずまず面白いのではないでしょうか。ただ、その「小学校高学年男子」像がやや古いかもしれず、いまの子供に共感してもらえるかと言われれば...
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鬼滅の刃

【理想的過ぎる物語】漫画「鬼滅の刃」吾峠呼世晴 評価:2点【少年漫画】

あらすじ舞台は大正時代の日本。竃門炭治郎(かまど たんじろう)は13歳の少年ながら一家の大黒柱として家計を支えていた。そんなある日、炭治郎が家を空けた隙に、竃門一家は妹の禰豆子(ねずこ)を除いて鬼に惨殺されてしまう。生き残った禰豆子も鬼と化しており、あろうことか炭治郎に襲いかかってくるのであった。そんな炭治郎の窮地を救ったのが富岡義勇(とみおか ぎゆう)と名乗る剣士。彼は鬼を全滅させるために組織された「鬼殺隊」の一員だと炭治郎は知るのだが……。感想珍しいくらいシンプルな少年漫画だったいうのが全体的な感想です。炭治郎と鬼殺隊の仲間たちが次々と襲いかかってくる鬼たちをひたすら倒していくというだけの物語で、おそらく全体の三分の二以上をバトル描写に費やしているのではないでしょうか。確かに、必殺技を繰り出しながら鬼の幹部たち(鬼側にも組織がある)を倒していく様子は爽快であり、チャンバラ漫画としては面白いのでしょう。ただ、個人的には以下の2点からあまり楽しめませんでした。①キャラクターに人間味がない味方側の登場人部は全員が非常に優れた人格を持っています。鬼を全滅させるという目的意識を深く共有し、そ...
新世紀エヴァンゲリオン

【大人になれ、オトコになれ】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」庵野秀明 評価:4点【アニメ映画】

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の感想はこちらあらすじエヴァンゲリオン初号機のパイロットとして幾度かの戦闘に参加し、戦果を収めてきた碇シンジ。彼の住む第3新東京市に新しいエヴァンゲリオンとそのパイロットが現れる。エヴァンゲリオン2号機と共に現れた少女の名前は式波・アスカ・ラングレー。シンジとアスカ、そして零号機のパイロットである綾波レイは共闘して使徒と戦い、勝利を得る。深まる三人の友情と、各所から寄せられる称賛にシンジは充実感を覚えていた。そんなある日、アスカがエヴァンゲリオン3号機起動実験のテストパイロットとして起用されることになる。しかし、3号機は突如暴走を開始。シンジ搭乗の初号機が3号機を止めるために出撃するのだが……。感想「序」に引き続き、少年がどのように大人になっていくかが描かれます。最序盤では精神的に幼いシンジと周囲との差が間接的に描写されることが印象的でした。3人目のパイロットとしてアスカが来日するのですが、アスカはレイとシンジのことをそれぞれ「えこひいき」「七光」と呼んで馬鹿にします。確かに、綾波レイも碇シンジも正統な手続きを踏まずに軍属となり、特別な地位であるエヴァン...
砂時計

【物語論】00年代の恋愛漫画「砂時計」から感じる現代の少女漫画から失われたリアリティについて

2000年代前半に雑誌連載され、人気を博した「砂時計」という恋愛漫画があります。植草杏(うえくさ あん)が小学生のときに東京から島根へと転向して同学年の北村大悟(きたむら だいご)と出会う場面から始まり、社会人になってから杏と大悟が結婚するまでの経緯が描かれる漫画です。北村夫妻は結婚後島根県で暮らすことになり、杏は介護の現場で、大悟は小学校教員として働きます。差別や偏見、倫理や道徳の問題に踏み込むような言動かもしれませんが、現実問題として、少女漫画(あるいは恋愛漫画)のヒロインが最終的に介護職員になるのはかなり珍しいのではないでしょうか。大悟と結婚する以前、杏は東京でも働いていたのですが、そのときも派遣の事務職員として働いていました。経済的に成功している、という類の職業ではありませんし、いわゆるヒロインが就きそうなキラキラした職業でもありません。一方、大悟の小学校教員という職業はどうでしょうか。それなりに社会的地位が認めらている職業ではありますが、決して高給ではありませんし、近年はブラックな労働環境について報道されることも多い職種です。また、小学校教員になるには大学で教職課程を履修しな...
エンタメ

【創作論】「1518! イチゴーイチハチ!」の設定から考える、現代の学園漫画において生徒の多様性を描く困難

「1518! イチゴーイチハチ!」という漫画が好きです。王道の青春学園漫画であり、真摯に楽しく高校生活を謳歌する登場人物たちの姿に胸をうたれる作品になっております。そんな「1518! イチゴーイチハチ!」の舞台になっているのが「松栢学院大付属武蔵第一高校」という埼玉県の私立高校。コースが偏差値順に「選抜」「特進」「情報」の3つに別れており、それぞれのコース内でクラスが組まれています。「情報」にはスポーツ推薦で入学した生徒も多いため、スポーツコースと茶化されたりもするという設定。本作は生徒会活動を中心に描いた作品ですので、それぞれのコースから集まった生徒会役員たちが友情を深めていく物語になっております。読んでいるあいだは夢中になって気づかなかったのですが、あらためてこの設定を眺めると、上手く考えたなと思います。現実問題として、都市部であればあるほど一つの高校には同質な生徒が集まりやすい傾向があります。普通科の高校は偏差値ごとに階層が細かく区切られているため、知能や家庭環境の似通った生徒が集まりやすくなっており、工業や商業、情報系や芸術系といった特色ある学科にはその学科に惹きつけられるよう...
楽曲紹介

【中森明菜】「セカンド・ラブ」という曲の歌詞に感動した話【昭和歌謡】

1980年代アイドルの筆頭といえば松田聖子さんが挙げられると思いますが、松田聖子さんと双璧を成した存在として中森明菜さんも非常に有名です。私は1980年代を生きたことがないので当時の感覚ついては造詣がないのですが、人気では常に松田聖子さんに次ぐ二番手であり、松田聖子さんが光ならば、中森明菜さんは影というような、まるで漫画の設定かと思われるような対称性を持つ二人だったようです。そんな中森明菜さんのサードシングルにして代表曲が「セカンド・ラブ」という曲です。歌詞の冒頭、私が感動した箇所を引用しましょう。恋も二度目なら 少しは上手に愛のメッセージ 伝えたいたったこれだけのフレーズなのですが、恋愛について歌った女性歌手の曲としては非常に斬新な表現になっています。通常、恋愛について歌った曲は2種類に分けられます。一つ目は、積極性や性愛に対する奔放さを前面に押し出した曲です。女性が男性に対して積極的にアプローチをかける様子だったり、世間の目や抑圧的な価値観に反抗してでも性的な事柄への素直な欲求を表明する自分、というものが表現されます。中森明菜さんもセカンドシングルである「少女A」はこのタイプの曲だ...
新世紀エヴァンゲリオン

【大人になれ、オトコになれ】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」庵野秀明 評価:3点【アニメ映画】

1990年代に放映されたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版であり、原作を再構築(リビルド)した作品として製作されております。90年代の作品ではあるものの、凄まじい人気はいまでも健在。現実世界でも様々なコラボが行われているため、アニメ好きという方でなくとも名前くらいは知っているのではないでしょうか。そんな名作のリメイクである映画シリーズは4部作となっており、これまで3作品が公開されております。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」舞楽における幕構成の概念「序破急」からタイトルが取られており、公開年はそれぞれ、2007年、2009年、2012年と、長い時間をかけて製作されているシリーズになっております。ファンの方々の忍耐強さと、人気の根強さが伺えますね。そんな三作品を視聴してみたのですが、特に「序」と「破」は良作だと感じました。頼りなくて幼稚な自己認識・世間理解しか持っていなかった少年が大人の「オトコ」になっていく。その過程を生々しく迫力満点に描写している側面に文学性すら感じる作品です。(本記事では「序」の感想を述べ、「破」以...
エンタメ

【思春期の蹉跌】Adoの「うっせえわ」は良い曲だが、有線では流さないであげてほしい

Adoの「うっせえわ」という曲が流行しているようです。思春期の少年少女を彷彿とさせる非常に反抗的な歌詞が特徴的で、尾崎豊の「卒業」やチェッカーズの「ギザギザハートの子守唄」を連想する方々もいらっしゃるとのこと。個人的にも、この「うっせえわ」という曲は非常に好みで、流行していることを喜ばしく思っています。メロディも歌詞も特段良いなどどは感じないのですが、現代を生きる十代の少年少女たちだってこのような曲が好きなのだと思うと、日本からはまだ一番大切なものが失われていないのだと感じます。ところで、この「うっせえわ」が店内の有線放送で流れているのを耳にしたのですが、思わず苦笑してしまって、さすがに有線では流さないであげて欲しいと感じました。本当にこの曲が好きな少年少女にとって、人が集まる場所でこの曲を聞くことほど気恥ずかしいこともないでしょう。学校という社会、あるいは、家庭という地獄からも逃れた場所で、自分の抱える不満や鬱憤を代弁してくれる作品。そんな楽曲は、部屋の中で一人で聞くのが正しく効用的で耽美であるのです。あんな歌詞とメロディの曲が、「流行ってますよ」なんて顔して公共のBGMに供されてし...
菊次郎の夏

【大人になりたい夏の旅】映画「菊次郎の夏」北野武 評価:3点 【日本映画】

1999年公開の映画で、監督は北野武。主演である菊次郎役も北野監督本人が勤めております。暴力性の強い映画で知られる北野監督ですが、本作は不良中年男と小学生の少年がひと夏の不思議な旅を経験するロードムービー。北野監督独特のクセが強いながらも、基本的には人情感動路線の作品です。 そんな本作を鑑賞してみたのですが、なかなか魅力的な映画でした。物事について一面的な見方をせず、酸いも甘いもある「人間」を描こうとしている意欲作。あまりにも清潔になりすぎた現代社会では失われてしまった人間臭さと、その中にある「大切だったかもしれないもの」について思いを馳せられる作品です。あらすじ小学三年生の正男(まさお)は、東京の下町で祖母と二人で暮らしている。家庭は貧しく祖母は毎日働きに出ており、両親もいないため、夏休みだというのに正男は旅行に行くこともできない。父親は正男が小さい時に他界し、母親は遠くに働きに出ている。祖母からそう聞かされていた正男だったが、あまりにも惨めな状況にいてもたってもいられなくなり、正男は僅かなお小遣いを握りしめ、母を探す旅に出ることを決意する。しかし、駅に着くまでもなく正男は近所の中学...
玄侑宗久

【介護と再生】小説「龍の棲む家」玄侑宗久 評価:1点【純文学】

臨済宗の僧侶にして芥川賞作家である玄侑宗久さんの作品。母親に先立たれた父親が認知症となり、その介護を行う息子と、偶然の出会いからその介護を手伝うことになった元介護士の女性が主な登場人物。僧侶らしい題材、とまで言ってしまうのは偏見かもしれませんが、現代らしい、地味ながら重大な介護という営為を通じて人間の出会いと成長を描いています。とはいえ、その内容は予想以上に無風な物語で、それでいいの、と思ってしまうくらい盛り上がりに欠けます。そもそもが落ち着いた題材とはいえ、ここまでドラマに欠けた面白みのない小説もないだろうと感じました。あらすじ父親が認知症になり、徘徊するようになった。兄である哲也から電話でそう告げられた幹夫は、経営する喫茶店を閉じて実家に戻ることを決断する。毎日行われる散歩という名の徘徊に付き添ううちに、ふと立ち寄った公園で幹夫は佳代子という女性と出会う。以前は介護の仕事をしていたが、現在は無職だという佳代子。父親とのコミュニケーションを巧みにこなす佳代子の姿を見て、幹夫は佳代子を介護士として雇うことにするが……。感想元々は実力のある介護士だったものの、一つの大きな失敗がショックで...
LOVE理論

「LOVE理論」水野敬也・佐藤まさき 評価:3点|熱血体育教師によるモテ理論指南ラブコメ【恋愛指南漫画】

「夢をかなえるゾウ」などで有名な作家、水野敬也さんが記した恋愛指南本「LOVE理論」の漫画版です。非モテの大学生、屋良畑寛二を恋愛体育教師「愛也」が指導し、モテる男子へと導くという物語。各章で「〜理論」と称した水野流モテ理論が一つずつ紹介され、その実行を通じて屋良畑はモテる男子の話法や行動を身に着けていきます。全体的な感想としては、そこそこ面白かったといったところ。紹介される理論は納得できるものから首をかしげるものまでありますが、それを忠実かつコミカルにこなしていく漫画のテンポが良く、飽きずに読むことができます。また、どこか「いちご100%」を思わせるような絵柄でパンチラも多用されるため、往年のラブコメ読みにとってもニヤニヤできる漫画になっています。あらすじ主人公、屋良畑寛二(やらはた かんじ)は20歳の大学生。彼女いない歴=年齢の童貞であり、バイト先の可愛い同僚、吉野咲(よしの さき)にも禄に話しかけられないくらい女性が苦手な性格。そんな寛二のもとに現れたのは「愛也」と名乗る謎の幽霊。彼は寛二の祖父が天国から送り込んできた恋愛体育教師であり、1年以内に寛二に彼女ができなければ屋良畑...
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