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「本能寺ホテル」鈴木雅之 評価:1点|若い女性と織田信長、束の間の交流が生み出す人生の転機【日本映画】

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本能寺ホテル
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監督は「プリンセストヨトミ」を手掛けた鈴木雅之さん、主演は綾瀬はるかさんという映画。

京都を訪れた若い女性が「本能寺の変」が起こる直前の本能寺と現代の京都を行き来しながら自分の人生を見つめ直すという、歴史的事件を梃に使ったヒューマンドラマとなっております。

全体的な感想としては、面白くなくはないのですが、これといって取り上げるべき特長もない、どこまでも凡庸な作品だったという評価です。

娯楽の選択肢が少なく、暇つぶしに映画を見る時代であればこれでよかったのかもしれませんが、厳選された一部作品だけに焦点が当たる今日の状況において流行る映画ではないでしょう。

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あらすじ

結婚を控え、彼氏である吉岡恭一(平山浩行)の実家がある京都を訪れた倉本繭子(綾瀬はるか)。

しかし、予約に手違いがあり、繭子は当初予定していたホテルに泊まれなくなってしまう。

そこで、偶然目についたホテルに泊まることにする。

その名は「本能寺ホテル」。

繭子がホテルのエレベーターに乗ると、なんと戦国時代の本能寺に辿り着いてしまう。

しかも、日時は「本能寺の変」の前日。

織田信長(堤真一)はその懐の広さによって繭子の存在を受け入れ、繭子は信長や森蘭丸(濱田岳)との交流を経て次第に彼らの持つ価値観に惹かれていく。

「やりたいことはない」「できることなんてない」

そんな自己肯定感の低さと意欲の欠如に苛まれていた繭子だったが、信長が自らの夢を熱心に語る姿を見て、繭子の心情は少しずつ変わっていくのだった。

一方、信長もまた、繭子との出会いをきっかけにその内面を変えていく。

「家臣がちっとも楽しそうではない」

繭子の何気ない指摘を重く受け止めた信長は自分と家臣の関係を良いものに変えようと動き出すのだった。

しかし、全てが良い方向に進み始めるなかで、本能寺には災厄のときが迫っていた、

「本能寺の変」が起こることを信長に話してしまう繭子。

自らの運命を知った信長、そして、自らの運命をまだ知らぬ繭子。

それぞれの下した決意とは......。

感想

自分に自信がなく、惰性で結婚を選びかけている若い女性が信長との交流を通じて変わっていく、というのがこの作品のおおまかな流れです。

「できることではなく、やりたいこと」

作中、恭一の父である征次郎(近藤正臣)が発するこの言葉が映画のテーマとなっております。

近年の映画のテーマとしてベタではあるものの十分魅力的であり、自分がどのように生きるべきか、それを掴めていない現代の若者の心情に訴えかける要素であるのには間違いないでしょう。

とはいえ、残念なのは作中でこの言葉を代弁するような行動が登場人物たちから出てこないこと。

ぐっとくるシーンは多いのですが、それがテーマに結びついていないのです。

例えば、「鬼のような方」と家臣に恐れられていた信長が繭子の言葉や態度から影響を受け、家臣と交わって童遊びをするシーンには確かに心動かされます。

しかし、これはどちらかというと「天下泰平」「世の人々の笑顔が見たい」を目標とするあまり信長が近くの者の幸せを考えられていなかったということを表現しているもので、単体では良いシーンですが作中では浮いています。

また、征次郎が「料亭 吉岡」を畳み、「大衆食堂 吉岡」を開くことを表明する場面もなかなか感慨深いものがあります。とはいえ、大衆食堂から料亭へと料理界を駆け上ってきた征次郎が「たらふく食べて笑顔になってもらう」という原点に回帰するだけであり、決して「できることではなく、やりたいこと」に直結しているわけではありません。

また、ホテルにおけるコミカルなシーンにも意味があったかは微妙なところ。映画の主たる要素である「歴史」等に絡めたものではないため、その効果を適切に発揮できてはいませんでした。

最後、繭子は歴史の教員として採用されたいことをハローワークに伝えるのですが、ここにもまた疑念があります。たまたま信長に会ったから歴史というのでは、たまたま結婚を申し込まれたから結婚するのとそれほど変わりません。

良くなる要素は多くあったにも関わらず、それをほとんど活かしきれていない。

そんな映画だったように思います。

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綾瀬はるか (出演), 堤真一 (出演), 鈴木雅之 (監督)

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