医者曰はく、彼女にはなによりも生き続けようという気力が足りないという。
しかし、ジョンジーは窓の外に見える家の壁面に這う蔦の葉を数え、その最後の一枚が落葉したとき自分も死ぬとまで言ってしまう状態。
一方、彼女たちの階下に住むベアマン老人は、いつか傑作を書くと言いつつも酒におぼれる生活を送っていた。
そんな芸術家の町に、嵐の夜がやってきて......。
都会の敗北
田舎生まれ、田舎育ちのロバート・ウォームズリー。
しかし、彼は都会で洗練され、立派な紳士となっていた。
そんなロバートは、ついに社交界の花形であるアリシアを花嫁とすることに成功する。
新婚旅行から華々しく凱旋し、栄光の絶頂にあるロバート。
そんなウォームズリー夫婦はある日、ロバートの故郷へ帰ることとなる。
郷愁を誘う農村の風景と純朴な村人たち。
それを目にしたロバートがとった行動とは......。
感想
短編なのに読み応えのある作品が多いです。
この第三巻にはやや単調な物語もありますが、だからこそ、人間の生きざまが純粋な形で立ち現れています。
特に面白かったのは上記2作品。
「最後の一葉」はありがちな人情話ながら、貧しくも夢を追う人々だけが持つ輝きや、夢破れた者でも為すことができる人としての栄光が見事に描かれています。
風にさらわれて儚く揺れる蔦の葉が物語の繊細さを優美に引き立てる傑作です。
「都会の敗北」もありがちな話ですが、やはり描写が秀逸。
都会の「気取り屋」だったロバートが田舎で大はしゃぎするシーンの躍動感は見事。
アリシアの最後の台詞もベタながら胸がじんとなること間違いなしです。
第一巻から第三巻まで、O・ヘンリが放つ作品群から漂う風格と哀愁にはただならぬものがあります。
読書家ならば、ぜひ、シリーズ全巻を手に取って頂きたいです。
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