第4位 「ハチミツとクローバー」羽海野チカ
【「夢」と「片想い」の甘苦い青春】
・あらすじ
東京の浜田山美術大学に通う竹本祐太は、同じく浜美生の森田忍、真山巧と一緒にボロボロの下宿アパートで生活している。
そんなある日、三人は花本はぐみという新入生と出会い、竹本と森田ははぐみに一目惚れしてしまう。
一方、真山が恋心を抱いているのは、アルバイト先のデザイン事務所のオーナーであり、若き未亡人である原田理花。
そんな真山に一途な想いを寄せているのが、浜美生である山田あゆみ。
2つの三角関係を軸に展開する、夢と片想いの青春恋愛漫画。
・短評
はぐみと竹本をヒロイン/ヒーロー格としながらも、様々な人物の視点で物語が展開する群像劇となっているのが本作の特長。
創作に没頭し、恋愛に夢中で、友達と大騒ぎをしつつ、就職を控えて将来のことを思い悩むという、美大生の青春が詰め込まれた感動作となっております。
何より素晴らしいのはそのテンポの良さと演出の巧みさで、毎回毎回、恋愛関係で波乱が起きることで読者をドキドキさせつつ、登場人物たちの切ないモノローグによって感涙させるという手管が絶妙です。
青春群像劇ということもあり、読み手によって誰に感情移入できるかは違ってくると思うのですが、私の個人的なお気に入りは竹本祐太です。
一度作り上げた卒業制作を自らの手で壊してしまうほどの葛藤を抱え、自分が何者なのか、本当は何をやりたいに人間なのかが分からず、自転車に跨り、「自分探しの旅」として東京からひたすら北上していくという若々しい情熱に心打たれました。
恋愛にも不器用で、はぐみに上手くアプローチできない点も好感度が高く、等身大の人物としての魅力があります。
旅から戻ってきて逞しくなった竹本が、寝ているはぐみの手を握るコマは本作屈指の名場面。
大学生たちの青春を描いた物語としては、間違いなく漫画史上No.1の作品でしょう。
コメント