人気作家、乙一さんの文庫書き下ろし作品です。
類を見ない斬新な設定と普遍的で温かな感情を共存させたこの作品。
私としては乙一さんの最高傑作だと思っています。
あらすじ
視力を失い、保険金で日々を静かに暮らすミチル。
そんなミチルは、最近、自宅で奇妙な感覚に襲われていた。
擦れるような小さな音が頻繁に聞こえ、誰もいないはずの空間から空気の揺らぎを感じる。
一方、とある殺人事件の犯人として追われていたアキヒロは、ミチルの家に逃げ込み、部屋の一角を居場所としていた。
偶然が起こした不思議な同居。
それぞれが異なる理由で怯える両者だったが、やがてその関係にも変化が訪れる。
死んだように暮らしているミチルと、孤独に生きてきたアキヒロ。
二人の運命やいかに......。
感想
素晴らしい作品、傑作です。
人との関りが苦手、という二人が出会う物語なのですが、まず、その「孤独」描写が秀逸。
ただ単に「暗いと呼ばれていた」「人を避けがちだった」と描写するだけでなく、馬鹿にされたときの心理や、悔しくやり切れず、怒りを感じながらも何もできない感情。
他人に「怯える」とはどういう状態かということが緻密に描かれており、物語に切迫感と現実感を与えています。
さらに、見知らぬ二人が相手に悟られぬよう同居するという設定が不気味な緊迫感を醸し出し、物語をより一層スリリングにしています。
また、設定も奇抜ながら、その展開も「ベタ」にはならないのが本作品の魅力。
しかも、「ベタ」ではないからといって突飛で奇抜な展開というわけでもなく、現実味があって心にストンと落ちてくる納得の展開なっております。
温かさと恐ろしさ、リアリティと斬新さ。
両立が難しいこれらの要素を絶妙な均衡で成立させているのは見事だとしか言いようがありません。
本作を読んだ方はきっと「小説」とはこんなにも楽しく、衝撃的なものなのだと驚かれたことでしょう。
登場人物たちのややステレオタイプな台詞回しのために評価は5でなく4としましたが、十分に名作だと呼べる作品。
平易な文章と分かりやすい語り口のため読みやすく、小説初心者にも、小説好きにもお薦めな名作です。
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