なんとなくですが、この盗聴器が偽装工作の一環として事件後に取り付けられたと明言しないところに本作のミソがある気がします。
石神は本当に花岡母娘にとってのストーカーのような男で、毎日のように花岡母娘の日常を盗聴していて、だからこそ殺人に気づけた......のではないでしょうか。
そう思うと、本作が醸し出している「純粋な想いの悲劇的な結実」というテーマもなかなか上っ面なもので、彼もまた富樫と変わらない人間だった、という結論の方がすっきりするのかもしれません。
作中でも、トリックに関わることなのでここでは明かしませんが、なかなか非倫理的なことを平然とやってのけているので。
結論
読んでいてつまらなくはありませんが、決して大きな感動を得られる作品ではないと思います。
淡々とした筆致ですらすらと読ませる反面、その行き過ぎが感情移入を妨げています。
もう少し各人物の心理を掘り下げたり、殺人の起こる序盤や推理が披露される終盤以外、つまり、中盤に劇的な展開があったのならはもっと面白かったのではないかと感じました。
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