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アニメ映画 「きみの声をとどけたい」 監督:伊藤尚住 星1つ

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きみの声をとどけたい
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1. きみの声をとどけたい

「キミコエ・オーディション」という新人声優発掘企画から生まれた映画。メインキャラクター7人のうち6人をオーディションに合格した新人声優が務めます。

「湘南でミニFMラジオ」というテーマや絵柄からして、食傷萌えアニメではなく正統派のストーリーアニメかと期待したのですが、なんというかその中間の、どっちつかずで魅力に乏しい作品でした。

2. あらすじ

舞台は湘南、主人公は平凡な女子高生の行合なぎさ(ゆきあい なぎさ)。なぎさは幼い頃に祖母から教えてもらった「ことだま」の存在を信じており、それゆえ、軽々しく他人の悪口を言う友達に対して微妙な感情を抱いていた。

夏休みのある日、なぎさが偶然雨宿りに訪れたのは、いまは使われていない喫茶店「アクアマリン」。無断で侵入したなぎさが発見したのはラジオの機材だった。悪戯に放送してみるなぎさだったが、なんと放送で口にした自身のアドレスにメールが届いたのである。

メールの送り主は矢沢紫音(やざわ しおん)。かつてこの喫茶店を経営し、ラジオのDJであり、いまは寝たきりの女性、矢沢朱音(やざわ あかね)の娘である。ラジオを通じて寝たきりの朱音に語りかける、という出来事をきっかけに、なぎさと紫音は二人だけのラジオ放送を開始するのだった。

そして、なぎさの友人である瀧ノ口かえで(たきのぐち かえで)や土橋雫(どばし しずく)なども加わり、なぎさたちは、かつて町に愛されていたラジオ「アクアマリン」の復活を目論むのだが.......。

3. 感想

純粋すぎる物語でしたね。ふた昔前の子供向けアニメのようです。冒頭は非常に期待させる展開でした。なぎさの所属するラクロス部は強豪私立にやられてしまうような弱小チーム。そして、軽々しく悪口を言う友人に複雑な感情を抱きながらも声を大にして自分の気持ちを表明できないなぎさ。

そんな「敗者」たる主人公がここからどう自分の人生に向き合い、成長していくのか。まさに、ひと夏の冒険モノに相応しいオープニングだったと思います。しかし、まずコケるのが主人公たちが高校生であるということ。その割に言動があまりに幼すぎます。最初は中学1年生くらいだと思っていたので、たいへん驚くとともに、「空想上の少女たち」の話であることが印象付けられてしまいました。

また、登場人物たちも全体的にテンプレートで表裏や深みがなく、現実ではありえない口調で話したりと、「萌えアニメ」的な側面が色濃く出てしまいます。さらに、ラクロスでの敗退や友人の悪口、冒頭に「言霊」で雨が降ることなどもいっさい伏線にはなっておらず、物語の展開があまりに一本調子なのは拍子抜けいたしました。

そして、結局「歌えば全て解決」というラスト。その割に、その歌にこめた想いを強調する場面はほとんど存在せず、かなり唐突な展開でありました。

加えて、「ことだま」が目に見えてしまう、という描写も個人的にはかなりマイナス。「ことだま」が「効いて」いるかいないかが視覚的に理解できてしまえばその不思議な魅力が全滅してしまいます。誰かに励まされると前向きになれたり、自分に肯定的な言葉をかけて悲しみから立ち直れたり、ここぞというところで弱音や逆なでするようなことを言うと、本当に悪いことが起きてしまたりする。

見えず、測れず、しかし、経験からは存在できると確信できる「ことだま」。だからこそ、この「ことだま」という概念に人々は魅力を感じてきたのではないでしょうか。そこを「見える」ものにしてしまったことは大失策でしょう。

夏、湘南、ラジオ、と題材は良いだけに、たいへん残念な作品でした。

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