1. ママレード・ボーイ
1990年代、毎月250万部近い発行部数を誇っていた全盛期の「りぼん」で看板級の人気を持っていた少女漫画。
累計発行部数は1000万部以上、アニメ化及びドラマ化も果たしており、時代を代表した作品の一つだと言えるでしょう。
しかしながら、個人的な感想としては凡作を下回って駄作という印象。
物語として感動するポイントが全く見当たらず、やっつけ仕事のような展開ばかりが繰り返される光景に辟易としながらなんとか読み切った次第です。
2. あらすじ
主人公は女子高生の小石川光希(こいしがわ みき)。
ある日、両親である小石川仁(じん)と小石川留美(るみ)から、離婚してそれぞれが新しいパートナーと結婚するつもりなのだと告げられる。
その新しいパートナーというのも、松浦要士(まつうら ようじ)と松浦千弥子(ちやこ)という夫婦。
いわば、小石川夫婦と松浦夫婦でパートナーを取り換えるという話なのである。
しかも、新しい家族同士で同居したいとまで言うのだから、光希の頭は大混乱。
あまりに無茶苦茶な両親の行動に対して断固反対の立場をとる光希だったが、松浦夫妻の息子である松浦遊(ゆう)はどこ吹く風。
なし崩し的にパートナー取り換えと同居が行われ、光希にとっては不服な日々が始まってしまう。
しかし、学校でも家庭でも一緒の時間を過ごすようになった遊と交流するうちに、光希は遊の性格に惹かれていく。
「ほんとはすっごく苦いとこあるのに、みんなうわべの甘さにだまされて気づいてないの」
遊のことをそんな「ママレード・ボーイ」だと評する光希。
果たして、光希の恋は成就するのか。
ママレードのように苦くて甘い青春恋愛物語。
3. 感想
物語の造形があまりにも雑で、どの側面からもあまり楽しめない作品でした。
なぜこんなにもつまらないのだろうと振り返ってみますと、以下の3点がその原因だと思われます。
①目玉設定を全く活かしていない
本作の特徴となっているのは、やはり最序盤の展開。
光希と遊の両親がパートナー入れ替え離婚&結婚を行い、さらに、2つの新家族が同居するという突飛な展開にあります。
しかし、作中でこの設定が上手く活かされることはありません。
これほど衝撃的な環境をヒロイン&ヒーローに対して用意したにも関わらず、単に光希と遊が出会うきっかけといった程度の活用しかなされていないのです。
同居しているからこそ起こるハプニングにより物語に波乱を起こしたり、物理的に近すぎる距離感から生じる交流を活かしてお互いの優しさを知るなどといった、感動的展開が生み出されたりはしません。
時おり、思い出したようにこの変則家族が同じ部屋に集合している様子が描かれたりするだけで、この同居設定が二人の恋愛事情に上手く絡んできたりしないのです。
また、両親がパートナーを入れ替えているという設定についてもそうです。
「パートナーを入れ替えたけど、お互いに友好的な雰囲気の仲良し四人組」という点が終始ほのぼのと強調されるよりほかに彼らが為すことはなく、「入れ替え結婚をした二組の夫婦」という意味でも、「同居する二組の夫婦」という意味でもその設定から何らかの悲劇・喜劇を生み出したりはしないのです。
終盤、この四人の過去についての憶測を巡って、光希と遊が兄妹なのではないかという疑惑が浮上し、二人の恋路が閉ざされてしまうという展開があるのですが、その折においてもこの二組の夫婦が物語に絡むことはほとんどなく、最後にあっさりと過去についての真相を話して終わりといった程度。
兄妹疑惑が必要なだけなら入れ替え結婚をする必要もないですい¥し、同居する必要もないのではないか、と思ってしまいます。
②エピソードが浅く、登場人物間の心理的繋がりが感じられない
本作は恋愛漫画であり、光希や遊は様々な人物からアプローチされ、また、二人以外の恋模様も物語の重要な要素として立ち現れます。
しかし、それぞれがの人物が惹かれあったり別れたりする理由が非常に浅く、感情移入の余地がないままに奇妙な恋愛話が進んでいくため、とても「恋愛」に感動できる漫画にはなっておりません。
そもそも、光希が遊に惹かれていく理由が、イケメンでスポーツ万能で勉強もできる人物がいつも自分のそばにいてくれて、ちょっと優しい言葉をかけてくれるからというもの。
もちろん、現実でそんなことがあればとても嬉しく、惚れてしまうことは間違いないのですが、フィクションの恋愛物語で「イケメンでスポーツ万能で勉強もできる人物」を登場させ、「ちょっと優しい態度を取らせてみる」が恋の決定打になる、なんて展開をされてもしらけてしまうだけです。
さらに言えば、この「イケメンでスポーツ万能で勉強もできる人物」である遊が光希に惚れる理由は全く不明。
光希が遊に気に入られようと努力する場面はほとんどなく、光希の視点から見れば「イケメンでスポーツ万能で勉強もできる人物」がなぜか魔法にかかったかのように平凡な自分に好意を寄せてくるという摩訶不思議な現象が起きているはずなのに、それをさも当たり前のように受け入れてしまっているのがとても不自然です。
こんなわたしなんかに......という心理さえ描かれません。
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