「雑談」だけで1億円?
日経新聞の「雑談で1億円」という見出しは煽りも込みなのでしょうが、特に人気有名Vtuberたちが配信で行う「雑談」が辞書的な意味での単なる「雑談」でないのはVtuber視聴者であれば了解済みのことと思います。
彼/彼女たちは予め話題を用意し、その話題をどう料理していくかを考え、人によってはリスナーの反応まで先読みして応答を考えているでしょう。
「雑談」配信すら作りこまれたネタであり、純粋な「雑談」とは似て非なるものです。
まるで雑談をするかのように、作りこまれたネタを話す。
そのスタイルはまさに、落語と同じだと言えるでしょう。
雑談配信に限らず、例えばゲーム配信でも同じことです。
同じネタ(ゲーム等)をプレイしていても、演者によって全く違う配信になるという側面も落語に似ていますし、その日の客層や客席の反応を見て柔軟に演じ方を変えていくのも同じ。
しかも、自分自身としてではなく、架空のキャラクターになりきって演じるという点も同じです。
加えて、その架空のキャラクターの設定としての個性と、演者の個性が適度にミックスされて作品が完成する、という点もまさに落語と同じ。
落語においても、話す落語家の性格や人間性が滲み出る点こそ、落語の醍醐味であり、特定の落語家に惚れ込んでファンになるという現象が起こる証左でしょう。
加えて、動作が不完全な2D/3Dの身体を使い、一定程度は視聴者の想像力に任せてネタを進めていく点も似ています。
扇子だけでそばを啜る演技をするなんてのは、まさに落語における「不完全の完全」を表しておりますが、Vtuberの配信においても、Vtuberが表現せんとすることを視聴者が想像で補う過程すらネタの一部として成立しているのです。
落語の正統後継者なのだから、高い人気は当然である
個人的にはそのように思うんですよね。
落語の全盛期にはトップ落語家たちは芸能人の中でもトップのような扱いだったらしいですし、21世紀に相応しい新式の落語が出現したということであればそれくらいの人気は当然なのです。
付言すれば、インターネットという舞台ができたことで客席が事実上無限になり、しかもグローバルに展開できるようになったのですから、潜在的な集金力は往時の落語の比ではないでしょう。
最近は大手事務所「ホロライブ」所属のVtuberたちを中心に英語圏でも人気を獲得している日本式Vtuberシステムですが、この配信手法が日本から生まれたというのは落語文化を考慮すれば当然とは思いながらも面白い現象だと感じております。
もちろん、女性Vtuberが下ネタを中心に奇声嬌声を発する配信も多いことから一部では「バーチャルキャバクラ」と呼ばれていることも私は認識しており、現実的にそういった側面があることは否定できないでしょう。
個人的にも落語の発展形としての正統派エンタメ配信をもっと見ていきたいですね。
そして、敢えてVtuberと落語の違う点を指摘するとすれば、それは練習を重ねて一つのネタを磨いていくという形式ではなく、あくまでもライブ感を重視する配信が多いという点でしょうか。
その意味では、あまり具体案はありませんが、真打の落語のような、完全に完成されていて溜息が出るようなクオリティの生配信をいつか見てみたいですね。
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