「21世紀の資本」で知られるトマ・ピケティ教授が左派政党支持者の属性変化について語っている。
1950〜70年代にかけて、西側諸国における左派政党の票田は庶民階級だった。
庶民階級とは所得・資産・学歴が低い層のことで、労働者階級と言い換えることもできる。
しかし、80年代以降は様相が変わり、高学歴層が左派政党を支持するようになった。
無料で見られる部分はここまでだが、この後の動きは政治に関心のある方ならばよく知っているだろう。
80年代以降、各国の左派政党は金融自由化や国営・公営企業の民営化を推進するようになる。
21世紀に入ると、左派政党の政策主眼はアイデンティティ・ポリティクスに移行していく。
そこに再配分政策を掲げていた頃の面影はない。
左派政党は社会民主主義政党からリベラル政党に変化した、と言えるだろう。
そんな現代的左派政党を支持する高学歴者のことを、ピケティ教授はインドのカースト制度における上位階層になぞらえ「バラモン左翼」と呼んでいる。
そして、こうした動きが顕著になるなかで、庶民階級は左派政党を支持しなくなっていく。
庶民階級の票は困惑の中で彷徨い続けるものの、ちょうど4年前、トランプ大統領の当選で一つの結果が示された。
ラストベルトと呼ばれる貧しい白人労働者が集中している地域でトランプ大統領は得票を伸ばし、それらの接戦州を制して大統領の座をものにしたのである。
イギリスでも労働者階級の保守党支持が増加するなど、いわゆる保守政党・右派政党が旧来の左派(社会民主主義)政党支持者を取り込んでいる様子が伺える。
しかし、庶民階級の人々はそれで本当に満足なのだろうか。
共和党や保守党、日本で言えば自由民主党あたりが本当に彼らのための政策を実行するのだろうか。
ウォール街やシティから支持されている政党、経団連の肩入れがある政党に、低所得労働者を真剣に擁護するインセンティブはないだろう。
それでは、バラモン左翼政党(リベラル左派政党)を支持すればよいのだろうか。
日本で言えば立憲民主党がそれに当たけれど、こちらも期待できそうにない。
マイノリティの問題や環境問題ばかりにかまける彼らに、低所得労働者への関心はなさそうだ。
(というか、支持層が意識高い系高学歴層なのだから、所得の再分配には消極的になるはず)
ステレオタイプ的な印象で言えば日本共産党が低所得労働者を取り込めそうなものだが、ここ70年近くそれに失敗し続けている彼らにも期待できそうにない。
バブル崩壊以降、賃金が下落し日本がどんどん貧しくなる中で支持者を増やせない事実が彼らの支持獲得能力の低さを物語っている。
それ以外の選択肢はどうだろうか。
このあたりで、各政党の支持層を概観してみよう。
・自由民主党
基本的には全属性から広範な支持を受けている。
地方の選挙区で強力な支持基盤を築く一方、都市部の保守層・無党派層も選挙時には自民党に投票する。
近年では若年層の支持率が高まってきている。
・公明党
支持基盤は創価学会であることは著名だが、属性で分析すると低所得者層に強い。
これには、集団就職等で地方から都会に出てきた労働者階級を積極勧誘することで創価学会が拡大してきたという経緯が影響している。
実際、公明党が候補を出す小選挙区は従来低所得労働者の街だと認識されていた地域が多い。
具体的には、東京都北区・足立区、大阪市大正区・住吉区・西成区・此花区・淀川3区、大阪府守口市・門真市、神戸市長田区、兵庫県尼崎市、といった地域。
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