スポンサーリンク

「FIRE 最強の早期リタイア術」クリスティー・シェン&ブライス・リャン 評価:4点|FIRE入門から中級クラスの知識と手法を総覧する、本場アメリカ仕込みの決定版FIRE書籍【資産運用】

スポンサーリンク
FIRE最強の早期リタイア術
スポンサーリンク

その意味で、日本でFIREするにあたり想定インフレ率をいくらに設定するかは難題になりそうです。

本章におけるもう一つの話題は保険ですが、こちらは日本における定番の保険に対するアドバイスと同じことが書いてあります。

住宅所有者保険(北米風ですね)や自動車保険は必須だが、そもそも住宅や自動車を保有する必要があるか否かを考えるべき。

生命保険については、終身保険やユニバーサル保険(貯蓄型生命保険など)は生命保険会社にとって有利な保険であり、かけるべきは定期の生命保険だけであること。

そして、その定期生命保険も必用額を精査して更新すべきと著者は助言します。

第15章のタイトルは「子どもはどうするのか」。

過激なFIRE派の中には子供を持たない人生を選ぶ人も多いように見受けられますが、やはり人生の根幹の一つとして重んじる人も相当数いるでしょう。

本書では子持ちでもFIREしているインフルエンサー(欧米人ですが)を紹介したうえで、住居費や教育費、食費といった子育てにかかる費用が計算され、それをどこまで抑えられるかが述べられます。

これらの要素は日本と北米とであまりに違いすぎるため、正直参考にはならない数値ばかりなのですが、驚いたのは既に「ワールドスクーリング」なる概念が世界には登場しているとのこと。

これは、様々な場所を移動しながら子育てをしている家族向けの教育システムで、世界中どこからでもその教育が受けられるようになっている仕組みだそうです。

そういった制度やサービスが普及してくれば、居住地を頻繁に変えて生活費を抑えるタイプのFIREで子供を持つことのハードルも下がっていきそうですね。

さて、次なる第16章のタイトルは「早期リタイアの負の側面」でなのですが、この章はわざわざ言ってもらわなくても不要といった感じの章になっております。

お金以外の面におけるFIREの弊害として、著者は「コミュニティの喪失」や「アイデンティティの喪失」を挙げます。

これに対して、本書では会社以外の新しいコミュニティを見つけること、情熱を持てる事柄(著者の場合、作家業)を見つけ出し、それに専心することが解決策として示されています。

しかしながら、集団や労働というものが極端に嫌でFIREした人にとっては「無コミュニティの獲得」や「無労働というアイデンティティの恢復」として捉えられる事象でしょうし、何かがしたくてうずうずしながらFIREした人にとっては、新しい集団や趣味に飛び込むことこそがFIREの目的なので心配無用でしょう。

第17章のタイトルは「自由になるために100万ドルは必要ない」、第18章のタイトルは「我が道を行け」ですが、これらは本書のFIRE論全体から見ればオマケのような章です。

第17章で語られるのは、副業をしたり、楽なパートタイムの仕事をしたり、生活費の著しく低い地域に住めば大金を貯めこまなくてもFIREできるということ。

少しは働いたり、発展途上国を中心に生活するという妥協がありますよというだけのことです。

第18章は逆に、お金持ちになるにも様々な方法があると説く章になっております。

つまり、自分で事業を起こしたり、投資の世界で高いパフォーマンスを上げ続ける以外にも、労働・投資・節制をバランスよく組みまわせることで金持ちになりFIREする道もあるということです。

まさに、本書を必要としているのはそういったFIREを目指すべき人でしょうし、本書が説くFIRE方法そのものの世界だと言えます。

なんとなくですが、ターゲットとなる読者を惹きつけるという意味では、最終章にではなく序章あたりに持ってくるべき内容なのかなと思います。

そんなわけで、FIREの定番書の一つとして挙げられることの多い本書を読んでみたのですが、内容が相当充実していると感じました。

よくあるビジネス書にあるような薄っぺらい論理や精神論に依拠することなく、計算によってFIREを目指していく道のりが上手く示されていますし、労働・投資・節制という三要素全てに対して適度に目配りされたバランスの良い書物になっていると感じます。

それこそ、起業や投資で大きく「当てる」ことができない人にとっての、FIREを目指すうえでの指針はもちろん、乗り越えるべき苦しみも忌憚なく記載されており、誠実な書籍だと言えるでしょう。

よくある著者の「経歴」トークにしても、中国での極貧経験など興味深いものが多く、それは恵まれてる方だろと言いたくなるようなインフルエンサーたちの「わたし可哀想」トークとは一線を画しています。

FIREという概念に触れるのが初めてならば、まさに目から鱗の著作になるでしょうし、自分が本当にFIREしたいのか/できるのか、という視点で真剣に考える際には一読しておきたい本となっております。

大学専攻選びの話から始まる点からも、なるべく働きたくないと思っている高校生(それなりの偏差値が要求されるかもしれませんが)が読んでみるのもいいかもしれません。

「なるべく働かない」ことの難易度の高さ(あるいは低さ?)を十全に感じられると思いますし、どうすればFIREできるかを真剣に考え始めたならば、それはそれで稼ぎの良い仕事に就くための勉強モチベーションアップや散財を避けたり株式投資で失敗しないためのマネーリテラシー獲得に繋がるでしょう。

「FIRE 最強の早期リタイア術」というタイトルに負けない良書だと思います。

FIREという概念に興味があるならば、是非、一読するべきでしょう。

スポンサーリンク

当ブログを訪問頂きありがとうございます

応援クリックお願いします!

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
このエントリーをはてなブックマークに追加
クリスティー・シェン (著), ブライス・リャン (著), 岩本 正明 (翻訳)

コメント