男性を慰めるための「女の子」としては欠点だらけかもしれないけれど、だからこそ、人間的な魅力に溢れている存在。
見た目の可愛さや、所謂「女らしさ」ではないところ、人格的魅力による「恋」に目覚めていく様子がここまで細かく描かれるというのは、まさに少年誌の漫画としては異色としか言いようがありません。
さらには、天野あい特有の「電影少女」としてのSF設定が物語に緊張感をもたらします。
天野あいは「GOKURAKU」を取り巻く特殊な人々によってつくられた人造人間であり、本物の人間ではありません。
だからこそ、序盤では男性に奉仕する能力を欠いた不良品として処分されそうになり、洋太の恋愛を応援する(つまり、自分は洋太と付き合ってはいけない)という制約を秘密裏に課されながら行動することになるので、洋太に対して愛情を感じながらも距離を取らざるを得ないというジレンマに悩まされます。
一方、終盤においては、逆に洋太と結ばれなければ人間になることができず、ビデオテープの再生時間が尽きるとともに消滅するという制約に晒されます。
既に彼女(もえみ)を手に入れて幸福を感じている洋太と結ばれなければならない、しかも、恋愛関係には発展しようもない「友達」になってしまった洋太との関係をここから巻き返していかなければならない。
くっつき易いときに離れさせられ、離れると今度はくっつかなければならないと脅迫される。
このジレンマにはなかなか胸が締め付けられ、こういったSF設定も上手く活かしながら恋愛の緊張感を高めてくるところに作者の技量を感じます。
「愛情を感じてはいたけど、恋はまだしてなかったなんて」
最終版、自分の命を犠牲にしてでも洋太の恋を応援すると心に決めたのに、どうしても洋太に対してドキドキしてしまう天野あいがモノローグで放つこの台詞にはじんときました。
最後の最後はあえて辻褄が合わない「奇跡」が起こるのですが、それを含めて素晴らしかったと思えるような作品です。
性的な描写やハーレム展開等は極端に男性向けで、手放しに普遍的な最高傑作と評価できるわけではありませんが、しょせんご都合主義ハーレムラブコメでしょ、と舐めてかかると思わぬ深い感動に攫われていく作品。
ベースはご都合主義ラブコメなので「名作」とまでしてしまうのは抵抗がありますが、文学的な物語性は十分評価できますので、本ブログにおける点数は3点(平均以上の作品・佳作)といたします。
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