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「マイ・インターン」ナンシー・マイヤーズ 評価:2点|若き女社長が直面する人生の課題と彼女が出会うシニアインターンの紳士【アメリカ映画】

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マイ・インターン
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その後、ジョンは社長(シュールズ)の運転手兼秘書的な立場として働くようになり、様々な気遣いや励ましによってシュールズの信頼を得ていきます。

もちろん、ジョンのシュールズに対する気遣いは紳士的で素晴らしいのですが、映画的に言えば凡庸な「紳士的で素晴らしい」の範囲に収まるような言動ばかりで、そこにはこの映画/作品ならではの感動がありません。

ジョンがシュールズの家族にまで溶け込んでいく様子も、もちろん、この紳士にかかればそんなこと朝飯前だというのはジョンがそういう人物だという「設定」からは十分理解可能なのですが、具体的な「言動」においてやはり特筆するべきものがなく、もはやナレーションで「ジョンはシュールズの家族とも仲良くなっていきました」と言うだけでスキップできるのではないかと思うくらい凡庸な「家族に溶け込んでいく」シーンが連発されます。

続いて、シュールズ及び職場の同僚と決定的に仲良くなるイベントとして、シュールズが母親に対する悪口メールを誤って母親のメールアドレスに送ってしまい、それをジョンと会社の男性社員たちでシュールズの実家に乗り込んで消去しに行くくだりがあるのですが、この場面こそが本作で最悪の場面です。

てっきり、母親に対する悪口メールについてジョンが上手い塩梅で諭したり、何か名言を残してシュールズの母親に対する気持ちに何かしら変化をもたらすものだと思ったのですが、ジョン自身が誤送した悪口メールを消すのにノリノリで、他人の家に忍び込んで勝手にパソコンを操作してメールを消すという方法をむしろ提案してしまうのがかなり残念でした。

もちろん、私はフィクションの中で行われる犯罪に目くじらを立てるような性格ではありませんし、むしろ現実世界においてさえイマイチなルールは老若男女問わず積極的に破っていく(程度問題はありますが)べきだと思っていますし、最近の若者は「盗んだバイクで走りだす」という歌詞を聞くと「バイクの持ち主が可哀想」という感想を言うという話を聞いて日本の将来を憂慮しているくらいです。

それでも、この場面には映画を興醒めさせる大きな欠点を抱えています。

それはリアリティラインの崩壊です。

フィクション作品は作品ごとに求められるリアリティの水準があります。

コメディ作品やファンタジー作品ですとその水準は低くなりますし、逆にシリアスな現実を描いた作品であればその作品のコンセプトとなる明示的な嘘要素以外は相当程度現実寄りにしなければ視聴者/読者は白けてしまいます。

本作でいえば、新進気鋭のベンチャー企業がふとしたきっかけでシニアインターンを雇ってしまうという点がただ一つ許される嘘になるでしょう。

それ以外の要素、つまり、ベンチャー企業で働く社長や社員であったり、そこでの仕事ぶり、彼ら彼女の性格やプライベートでの振る舞い、そしてもちろん、シニアインターンとしてやって来る高齢男性の言動は現実的でなければ視聴者の胸に感動を与えるような迫真性が現れないはずです、

しかしながら、若者と連れ立って社長の実家に侵入し、警報装置を鳴らされながら犯罪的任務を完遂したあと酒場で飲む姿に、シニアインターンのリアリティを見ることはできるでしょうか。

もちろん、高齢男性の人格にもピンからキリまであって、誰もが聖人君子というわけではありません。

とはいえ、本作に登場するシニアインターンであるジョンは、凝り固まった心で人生の課題に直面してしまい、悩みのたうち回る若い女性社長に対して寄り添いその心を溶かしていく人物として全体では描かれています。

そんな人物がこのような振る舞いをするのでは、そういった物語全体の展開に対する説得力が薄れてしまうのです

そして、ここから最終盤にかけては、単に凡庸であるのみならず、偶然を多用するような事件ばかりが起こります。

シュールズの夫であるベンが浮気をしている、というのもベタですし、ジョンが偶然に浮気場面を目撃してしまうというのもまたベタな筋書きでしかありません。

この事件を受け、出張先のホテルでシュールズがジョンと人生についての重大な相談をするのですが、シュールズとジョンが同室になる流れもホテルの火災報知器が故障するという偶然に頼りきりですし、そこからベンの謝罪と、シュールズのCEO続投というオチもそうなるための伏線が弱すぎてご都合主義に感じてしまいます。

(出張の目的は、多忙すぎるシュールズの代わりに経営を担う招聘CEO候補に会うため)

全体として、繰り返しになりますが、物語としての大枠は良いのに、細部の凡庸さ、雑さが悪さをしている作品という印象です。

もちろん、作中で起こる出来事は、凡人である私たちの日常と比べれば十分に刺激的な事柄ばかりなのですが、そもそもいくらでも嘘をつける映画作品の内容という意味ではありきたり過ぎますし、ありきたりを王道と言い直すこともできなくはないですが、やり尽くされた王道を往くならば、例えば演出面等で本作独自の美点がなければ良作だと評価するのは難しくなってしまいます。

というわけで、評価としては2点(平均的な作品)といたします。

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