漫画 「ゴールデンライラック」 萩尾望都 星2つ

ゴールデンライラック
スポンサーリンク

1. ゴールデンライラック

本ブログでも既に2作品を紹介している萩尾望都さんの作品。往年の少女漫画家らしい、近世ヨーロッパを舞台にした恋物語です。萩尾さんの中では有名な作品ではありませんが、文学作品のような味わいや構成にはやはり萩尾さんらしさがあります。紹介済みの2作品は以下の通り。

本作の評価は「トーマの心臓」より下、「ポーの一族」よりは上、本ブログで「普通」を表す星2つとします。ひねりが少なく、良い意味では定番・王道という印象、悪い意味ではやや退屈という印象を受けました。

2. あらすじ

両親を亡くし、親戚中をたらい回しにされていたビリー・バン。そんなビリーを引き取ったのは裕福なスタンレィ家。そこでビリーが出会った少女こそヴィクトリアであり、ヴィクトリアはビリーの初恋の人になる。

もらわれ子であるものの幸福に過ごしていたビリーだったが、ある日、ヴィクトリアの父が倒れ、運営する銀行が倒産したことを機に生活は一変する。一家は小さなアパートに移り住み、ビリーとヴィクトリアは幼くして働きに出なければならなくなってしまったのだ。

貧しさに耐える生活の中、ヴィクトリアは当初、ホテルのメイドとして雇われていたが、より稼げる仕事である会員制クラブの踊り子へと家族に黙って転職していた。偶然にヴィクトリアの踊り子姿を目撃して衝撃を受けるビリー。しかも、会員制クラブでは美しいヴィクトリアに言い寄る男がいた。それは裕福なスティーブンス男爵であり、葛藤の末、ヴィクトリアはスティーブンス男爵との結婚を受け入れてしまう。

恋に破れたビリーはその埋め合わせのため、子供の頃からの夢、空を飛ぶことを叶えるため空軍に入隊する。そして始まる第一次世界大戦。ビリーは生きて帰ってこれるのか、ヴィクトリアと再び交わりを持つことはあるのか、そして、二人の心の奥底で密かに燃え続ける恋の炎の行方やいかに.......。

3. 感想

裕福だった生活からの転落、初恋の人は貧困に耐えかね、玉の輿を狙って結婚。追い打ちをかけるように始まる戦争。奇跡的な帰還、そして大人になった二人を再び惹き合わせる運命の悪戯。

このように書くと起伏に富んだ物語に見え、実際にそうといえばそうなのですが、どれも少しベタすぎるというか、少女漫画の定番すぎて本作品ならではの意外性に欠けるように思われました。「予想通りの所謂『意外な展開』」が続いてしまい、すらすらと読み進めるものの、興奮も絶望もそれ以上ではないという状態に陥ってしまいます。

加えて、起こる出来事や台詞にいつも唐突感がつきまとってしまうのも残念。ヴィクトリアとスティーブンス男爵が仮初だった愛を確認し合いながらそれでいてお互いを想う気持ちを深め合うシーンなどは確かに魅力的なのですが、二人の生活が濃密に描かれているわけではないので、やはり感動もそれなりのものに留まります。貧乏一家へと没落するシーン、ヴィクトリアがスティーブンス男爵と結婚してしまうシーン、友人が戦死したという報をヴィクトリアが受け取るシーン、スティーブンス男爵が亡くなるシーン、そして、ビリーがヴィクトリアの娘をフランスの医者まで飛行機で運ぶシーン。一つ一つの劇的なシーンに入るまでの、「溜め」、つまり、貧しくなる前の豊かな生活の描写や、貧しさの中でもビリーとヴィクトリアがお互いを意識する描写、友人との友情譚、ヴィクトリアとスティーブンス男爵の結婚生活に関する濃やかな描写、ヴィクトリアの娘の愛らしさの描写。それらが足りないがために、いざなにかが失われたり失われかけても、それが読者にとってまだ「大切なもの」になっていない段階で喪失シーンが来てしまうため、どこか心の底までは響かなくなってしまっているのです。

プロットは綺麗でそつのない物語なのですが、演出にいまいちさが残る作品。中編程度ではなく、せめて単行本一冊を使った長辺ならばもっとやり方もあったのではないかと思ってしまいます。

4. 結論

そつはないけれども、深さや衝撃は物足りない、普通だなぁという意味で星2つです。

コメント