小説 「光の帝国 常野物語」 恩田陸 星2つ

光の帝国 常野物語
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1. 光の帝国 常野物語

多くの人気作を世に送り出してきた恩田陸さん。彼女の初期の作品で、伝承のような雰囲気を持つ落ち着いたファンタジーです。

ややホラー気味の不思議な話を独特の語りで書くという恩田さんの十八番。それを体現した作品ではあり、一つ一つの発想は面白いと思うのですが、やや散漫な印象も受けた作品であります。

2. あらすじ

かつて東北のある地域に集まって住んでいた「常野」の一族。完全な記憶力、遠くの出来事を察知する能力、未来を見通す力。彼らにはそれぞれ特別な能力があるものの、普段はひっそりと、日本中に散り散りになって生活している。

そんな彼らの歴史と、彼らに関わった人々が紡ぎだす、哀しくも愛おしい連作短編集。

3. 感想

雰囲気で読ませる作品で、それ以上にはなっていないという感想です。

不思議な能力を持った一族が分散して世に紛れている。彼らと交流する一般人が体験する不思議、そして、彼らの悲しい過去。

そう書くと魅力的に見えるかもしれませんが、一つ一つのストーリーに必然性がなく、必ずしも繋がっていないために、「だから?」で終わってしまう短編が多いです。

第四話「オセロ・ゲーム」、第八話「草取り」なんかそうでしょう。また、悲しい過去も戦時中の迫害という内容で、凄惨な内容に心が痛みますが、所詮は作り話。フィクションでなら悲惨な内容はいくらでも書くことができるため、ただ悲惨という以上の何かが欲しいところですが、それはありません。

また、全体として特殊な一族の話であるため、一般人である読者がどれだけ感情移入できるかは疑問なところ。私自身もそこまでのめりこむことはできませんでした。

ただ、恩田さんの技量により、一場面、一場面を切り取れば、良い描写、技術のある書きぶりも見られます。

そういった意味で星2つをつける作品でした。

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