アニメ映画 「つみきのいえ」 監督:加藤久仁生 星3つ

つみきのいえ
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1. つみきのいえ

2008年にアカデミー賞の短編アニメーション部門を受賞した作品です。日本の作品では現在のところ最初で最後の受賞作となっており、当時はマスコミ等でも多く取り上げられていた印象ですが、やはり芸術的な短編アニメーションは大衆作品となり得ないのか、近年脚光を浴びているかと言われれば否というのが答えになってしまうでしょう。

全体的な特徴としては、絵本のような作品で、かつて「みんなのうた」でよく見た画風に近い印象です。たった12分の作品ですが、無音のうちに展開されるストーリーから感じられるノスタルジーと生きることへの強い信念が際立ちます。ただ、いわゆる構成やキャラクターに趣向が凝らされたエンタメ的盛り上がりや、人生観をがつんと叩いてくるような威力はないというところは弱点です。12分の作品では仕方がないのかもしれませんが、この技法・作風では星3つが天井だとも感じました。

2. あらすじ

海面の上昇著しく、多くの人が去ってしまった街。おじいさんは積み木のように上へ上へと家屋を増築しながらこの街に踏みとどまっている。そんなおじいさんはある日、お気に入りのパイプをせり上がってきた水面に落としてしまう。沈んでいくパイプを取りにいこうとダイビングを敢行するおじいさん。無事、パイプを拾って一安心のおじいさんだが、そのとき彼の目の前には懐かしい光景が広がって……。

3. 感想

これまで増築してきた家を、今度は下へ下へと潜りながらおじいさんが思い出を辿っていくというストーリー、いまは亡きお婆さんを介護している場面から始まり、二人の子供の結婚と出産、
二人の若き日と出会い、まだ「地上」があった頃の街、と展開していきます。

つみきのように家を増築していくおじいさんは一見、単なる偏屈者なのですが、こうやって想い出を一緒に追体験し、そして最後におじいさんが普段の暮らしに戻るシーンを見せられると、その時にはおじいさんを応援したくなっているから不思議なものです。

つみきのいえには、単に物理的に積み上がっているという以上に、想い出の積み重ねがある。そんな光景を優しい画風で視聴した後には、自分が愛着を持って接している物に今一度、愛おしく触れたくなります。確かに、上昇する水面から必死に逃げるように私たちは日々を送っているのかもしれません。しかし、振り返ったときに、その必死な姿と、その中で支え合った人たちとの思い出が確かに貴重な財産として残っているでしょう。おじいさんの冒険はそんな当たり前の事実を再認識させてくれます。

つみきのいえ、そして水面の上昇は何の比喩なのか、それを意識しながら見ると味わい深い作品です。上述した理由で星を引きますが、あぁ佳作だなぁと思うこと請け合いの映画になっています。

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