アニメ映画 「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」 監督:押井守 星3つ

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

1. うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

アニメ界・SF界では知る人ぞ知る名作。このように申し上げるとその界隈には怒られそうですが、世間的認知度はそんなものでしょう。

内容としても、まさに先駆的・実験的というべき作品で、面白いかどうかはともかく、「ここから始まったんだ......」という気持ちにさせられる映画でした。

2. あらすじ

諸星あたるとラムが通う友引高校は学園祭を明日に控え準備の真っ最中。2年4組の面子も普段に輪をかけて騒いでおり、お祭り前夜の興奮が学園中に充満していた。

そんな中、2年4組担任の通称温泉マークが保健室を訪れる。保健の先生であるサクラが彼に下した診断はノイローゼ。やんちゃな生徒たちへの対応でそうなったと判断したのだった。

診断を受けて自宅に帰った温泉マークだが、しばらくして、さくら先生が彼の自宅を訪れてくる。さくら先生は間違って薬の代わりに下剤を温泉マークに渡してしまったのだ。しかし、温泉マークのアパートに足を踏み入れたさくら先生が見た光景は、ほこりだらけにカビだらけ、キノコまで生えている部屋だった。

温泉マークの部屋ではキノコが育ってしまうくらいの時間が経っているのに、友引高校はずっと文化祭前夜のまま。そう、友引高校の中だけ時間の流れがおかしくなっているのだ。あたるやラムたちも事態に気づいてゆく。

あたるとラムはこの非日常から脱出することはできるのだろうか.......。

3. 感想

描写が上手く、引きこまれます。人気のない夜の街を自動車で走るシーン、電車が一周まわって元の駅に戻るシーン。異常な空間に閉じ込められてしまったことで生じる、ひたひたと迫る恐怖が絶妙に表現されています。スプラッタ映画のようにグロいシーンを用意するのではなく、B級ドラマのように安っぽい叫び声をあげさせるのでもなく、アニメーションの動きと音響でそれを視聴者に悟らせてゆくのは「映画」だと感じました。

その後、ユートピア的空間になった友引町での楽天的な暮らしぶりも却って言いえぬ空虚さを盛り上げる効果を生んでいます。

ただ、中盤から後半にかけての「バク」とのやりとりや、時間が繰り返される友引町のシステム的な面についてはやや説明が下手で、冗長で意味深なだけの長台詞がありながら、必要な説明はないという場面も多くありました。

熱心なファンはいろいろと「解釈」や「考察」をするのかもしれませんが、これでは普遍的な映画たりえないでしょう。とはいえ、ラムが「帰る方法」を告げてからの展開から最終シーンまでの勢いにはワクワクしましらし、興奮と同時に切なさも感じられるという良い幕切れでした。

時間が繰り返される、という設定でローSF・ソフトSF的な物語を創った初の作品として、これからも様々な人々、特に作品づくりを志向する人々によって観られてゆくのでしょう。

映画好き、アニメ好き、物語技術の起源を辿るのが好き、という人にはお薦めです。

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