【生き方】「幸福論」 バートランド・ラッセル 星3つ

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1. 幸福論

数学、論理学、哲学、そして文学の世界で多大な功績を残したイギリスの学者、バートランド・ラッセルの著作。

1950年のノーベル文学賞を受賞するほどの文筆家であったラッセルが著す「幸福論」は、ヒルティ及びアランの「幸福論」と並ぶ三大幸福論の一つとして知られています。

その内容は、この「幸福論」こそが様々な自己啓発論の源流になっているのだなと思わせられるものでした。

目新しくはないものの、現代でも様々な本で言及される「人生を幸福に生きるコツ」の最大公約数が網羅されており、やや難解な英文翻訳調の文章に対して抵抗がなければ、安っぽい自己啓発書を読むよりも本書を一読する方が良いと思われます。

また、賢者の誉れ高いラッセルらしく、自己啓発の域を超えた社会論的な側面も記述されています。

ラッセルという賢人が世の中をどのように見ていたのか、世の中がどのように変化していくと考えていたのかという思索を覗き見られるという利点も備えた作品になっております。

B. ラッセル (著), 安藤 貞雄 (翻訳)

2. 目次

・第1部 不幸の原因

第1章 何が人びとを不幸にするのか
第2章 バイロン風の不幸
第3章 競争
第4章 退屈と興奮
第5章 疲れ
第6章 ねたみ
第7章 罪の意識
第8章 被害妄想
第9章 世評に対するおびえ

・第2部 幸福をもたらすもの

第10章 幸福はそれでも可能か
第11章 熱意
第12章 愛情
第13章 家族
第14章 仕事
第15章 私心のない興味
第16章 努力とあきらめ
第17章 幸福な人

3. 感想

目次の通り、第1部では不幸の原因が、第2部では幸福になるための手段が各章ごとに説明されております。

その中でも印象に残った箇所を挙げていきますと、まずは第7章「罪の意識」から、幼少期に両親等から注入された価値観を精査し、ときには抗うべきだとした以下の文章。

あなたの幼年時代を支配した人たちの想い出に対する不敬を恐れてはならない。当時、彼らが強く賢く見えたのは、あなたが弱くて愚かだったからにほかならない。いまや、あなたは弱くも愚かでもないのだから、あなたの仕事は、彼らの見かけ上の強さと賢さを点検し、あなたがいまだに習慣の力で払っている尊敬に、はたして彼らが値するかどうか考えてみることだ。伝統的に子供たちにほどこされている道徳教育によって、はたして世の中がその分だけよくなったかどうか、真剣に自問してみるがいい。

大人になってくると、両親や周囲の大人から教え込まれた価値観に疑問を感じることもあると思います。

そんなとき、その価値観を客観的に観察して、ときにその価値観から脱するほうが自分のためになるという場合もあるでしょう。

ただ、家庭や学校での環境から得てしまった価値観に縛られているからこそ、「みんなに迷惑をかけないように」そんな価値観を守ってきたからこそ、「自分のため」という軸で物事を考えられない人もいるのではないでしょうか。

そんなとき、ラッセルのこの考え方は光ります。

「伝統的に子供たちにほどこされている道徳教育によって、はたして世の中がその分だけよくなったかどうか、真剣に自問してみるがいい」

こう考えることで、あるアイデアに思い至る人もいるのではないでしょうか。

自分が信奉している価値観は、両親や教師が彼ら自身に都合良くなるように編み出したものであって、自分のためになっていないのはもちろん、世のためにもなっていないのではないか。

視点を「両親や教師と自分」から「自分」だけに狭めるのではなく、両親や教師を飛び越えて「自分+世間」にまで広げてみると思いがけない発見があるかもしれません。

次に印象に残ったのは、第9章「世評に対するおびえ」です。

やや長いですが、とても重要なことを言っていると感じたので引用します。

非常に多くの人は、おのれの生来の趣味が命じるのとはまるで違った仕方でお金を使っている。それは、ただ、隣の人に尊敬されるか否かは、立派な車を持っているとか、立派な晩餐会を開く能力があるとかにかかわっている、と思っているからにすぎない。

世評に対する恐れは、他のすべての恐れと同様に、抑圧的で、成長を妨げるものである。この種の恐れが強く残っているときには、いかなる種類の偉大さをも達成することは難しいし、真の幸福を成り立たせている精神の自由を獲得することは不可能である。

私たちの生き方が、たまたま隣人であったり親戚であるような人たちの偶然の趣味や希望によって決まるのではなく、私たち自身の深い衝動からうまれてくることが、幸福にとって不可欠であるからである。

付言の余地がないくらいすっきりと大事なことが述べられていると思います。

私も、人生で最も無駄な消費(お金・時間)とは他人に見栄を張るための消費であり、何かに挑戦するときに最も足を引っ張るのは世間体を気にすることだと考えています。

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