「アイの歌声を聴かせて」吉浦康裕 評価:2点|AI搭載の転校生がもたらす波乱万丈の青春学園物語【アニメ映画】

アイの歌声を聴かせて

2021年10月29日に公開されたアニメ映画で、監督は吉浦康裕さん。

「イブの時間」「アルモニ」「さかさまのパテマ」等の作品を手掛けた監督で、国内の映画祭では文化庁メディア芸術祭では複数回入賞しており、アニメ映画界隈では知られた存在です。

そんな吉浦さんにとって久方ぶりの長編作品となる本作ですが、その内容は「イブの時間」 と同じく、吉浦さんのライフワークともいえる「AIとの共存」と「高校生学園もの」を掛け合わせた作品。

序盤の展開こそAIという要素を活かした面白い側面も見られましたが、全体としては凡庸な青春学園物語だったという印象があり、ぎりぎり佳作とは言えない凡作だと感じました。

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あらすじ

舞台は世界的な巨大企業「星間エレクトロニクス」のAI実験都市である景部市。

極めて同質性の高い企業城下町となっており、市立景部高校に通う生徒の親はたいてい星間の関連企業に勤めているというほど。

農業ではロボット田植え機が活躍し、市内を走るバスは無人運転など、AI実験都市らしい光景が日常に溶け込んでいる。

そんな景部市に住む高校生、天野悟美(あまの さとみ)の母親も星間エレクトロニクスに勤めており、エリート研究員が集う「研究室」の所属である母親を悟美は誇りに思っている。

そんなある日、悟美のクラスに一人の転校生が現れた。

彼女の名前は芦森詩音(あしもり しおん)。

容姿端麗なビジュアルで注目を集める詩音だが、悟美の姿を見つけるや否や詩音は悟美に駆け寄り、

「 サトミ、今、幸せ?」

という奇抜な質問を投げかけるのだった。

唖然とする悟美が何も答えられないでいると、

「わたしが幸せにしてあげる」

と言って、急にミュージカル調の歌とともに踊り出す詩音。

初日からこんな調子で悪目立ちする詩音だが、実のところ、詩音は星間エレクトロニクスが開発したAI搭載人型ロボットであり、そのプロジェクト責任者が母親であることに悟美は気づいてしまう。

母親に恥をかかせるわけにはいかない。

プロジェクトの結果を「失敗」とするわけにはいかない。

AIであることがバレないよう詩音に厳命する悟美だったが、詩音は相変わらず騒動の中心となり続ける。

そして、その騒がしい日々がクラスで孤立していた悟美の学校生活を大きく変えていく......。

感想

(以下、登場人物名は初出時のみ漢字表記を紹介し、以降、作中での愛称をカタカナ表記します)

近年「君の名は。」の二番煎じ狙いを勘繰りたくなるような若者恋愛SF/ファンタジー作品が粗製濫造されがちなアニメ映画業界でありますが、本作の序盤は久々に良い意味でオリジナリティのある作品が出てきたなと思わされました。

変わり者の転校生がやってきて、クラスで浮いている主人公に絡んでくる。

ここまではいかにもアニメ的な凡庸展開ですが、

転校生の正体が実はAI搭載ロボットで、主人公の母親が開発した。

この点については、主人公の母親を開発者とすることで、主人公側にも転校生に対して絡みに行く動機を持たせるのはななかな上手い設定ですよね。

とはいえ、肝要なのはここからです。

AI搭載ロボットだとバレないようにする、そんな命令を受けたシオンが実行したのは、学校中のAI搭載システムと「協力」して、自分が上手く学校生活を送っているという偽データを星間エレクトロニクスに送ってしまうという手法。

この本格SFを予感させる展開にはワクワクしましたね。

AIの特徴といえば、なんといってもその自律性と学習機能です。

元々は単純なプログラムに過ぎないのですが、情報を収集してある種の「解釈」を施し、それに合わせて自身の行動を変えていくAIは、傍目に見ればあたかも人間のような「心理」を持っているかのように振舞います。

「心理」のようなものを持ち、自ら考え、行動する、人間ではない存在。

このような特徴から想像される、AIが意思を持って人間に反逆するという設定はSF界における王道パターンの一つであり、他のAIと「友達」になり、協力して人間を欺きにかかるという芸当をいきなり見せてくれるシオンの姿には、ここから先の展開が平凡な学園ものになるのではなく、そうしたSF的ギミックを上手に使って楽しませてくれる展開になるのではないかと期待を抱きました。

しかしながら、中盤以降、その期待は裏切られていきます。

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