あらすじ
舞台は大正時代の日本。
竃門炭治郎(かまど たんじろう)は13歳の少年ながら一家の大黒柱として家計を支えていた。
そんなある日、炭治郎が家を空けた隙に、竃門一家は妹の禰豆子(ねずこ)を除いて鬼に惨殺されてしまう。
生き残った禰豆子も鬼と化しており、あろうことか炭治郎に襲いかかってくるのであった。
そんな炭治郎の窮地を救ったのが富岡義勇(とみおか ぎゆう)と名乗る剣士。
彼は鬼を全滅させるために組織された「鬼殺隊」の一員だと炭治郎は知るのだが……。
感想
珍しいくらいシンプルな少年漫画だったいうのが全体的な感想です。
炭治郎と鬼殺隊の仲間たちが次々と襲いかかってくる鬼たちをひたすら倒していくというだけの物語で、おそらく全体の三分の二以上をバトル描写に費やしているのではないでしょうか。
確かに、必殺技を繰り出しながら鬼の幹部たち(鬼側にも組織がある)を倒していく様子は爽快であり、チャンバラ漫画としては面白いのでしょう。
ただ、個人的には以下の2点からあまり楽しめませんでした。
①キャラクターに人間味がない
味方側の登場人部は全員が非常に優れた人格を持っています。
鬼を全滅させるという目的意識を深く共有し、そのためならば文字通り命を惜しまずに戦います。
修行等にも熱心に取り組み、それぞれ個性はあれど「嫌なやつ」は一人もいません。
なるべく楽をしたい、自分だけは助かりたい、といった言動をすることはなく、我欲や嫉妬にまみれた私情で動くことはまずありません。
それゆえ、流血量だけは凄まじい漫画であるにも関わらず、人間の世界を描いているという生々しさや緊迫感に欠けます。
怠惰や裏切りによって展開が動くこともまずありませんので、もしかしたら上手く行かないのではないかという緊張感や、いまは上手くいっていても、意外な展開が訪れるのではないかという期待感が小さいのです。
理想的な人材ばかりを揃えた組織の前に課題をぶら下げたときの様子を観察させられているような、最初から上手くいくに決まっている計画が上手くいく様子を魅せられているだけのような、そんな気持ちになります。
そんな物語は、少なくとも、ある程度年齢を重ねた人や、物語を多く嗜んできた人々にとってはあまり面白くないのではないかと思いました。
②頭脳戦が存在しない
本作はバトル漫画なのですが、バトル漫画の醍醐味の一つ、頭脳戦が一切ありません。
各登場人物が場当たり的に技を繰り出し、相手の反応を見て、また場当たり的に対応を変えていく。
その繰り返しで戦闘は進んでいきます。
やや劣勢になってくると、そこで都合良く誰かの能力が開花して強力化し、やはり力技で敵を倒していきます。
兎にも角にも創意工夫によって敵を倒す場面は存在しませんので、面白い作戦にワクワクしたり、出し抜きあう興奮といったものは存在しないのです。
読者はひたすら派手になっていく戦闘をぼんやりと眺めるだけしかやることがありません。
そうは言っても……
この漫画に評価1点(平均以下の作品・本ブログの最低評価)をつける気持ちにはなれません。
上述した特徴を含め、本作は幼稚園児〜小学校低学年を対象としたような、〇〇戦隊✕✕レンジャーに近いコンセプトの作品なのではないかと思ったからです。
複雑な人間心理や頭脳戦は扱わず、単純な勧善懲悪原理のもとで力技同士の戦闘を描き出す。
低年齢層向けの作品としては妥当ですし、本来、週刊少年ジャンプにはこれくらい低年齢層向けの作品が連載されていてしかるべきなのでしょう。
下手に高年齢層や女性人気を獲得しようとしていない、純粋な少年漫画の復古なのだと受け取りました。
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