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「月刊少女野崎くん」椿いづみ 評価:3点|王道の笑いで攻める、少女漫画制作にかける青春学園コメディ【青年漫画】

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月刊少女野崎くん
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ガンガンオンラインにて2011年から連載されているウェブ漫画。

今年で連載10周年を迎えた長期連載のコメディ漫画です。

少女漫画のパロディで笑いを取るという独自性を有している作品であり、だからこそ、少女漫画ではあまり見られない「ヒロインが意中の男性の気を引くために頑張る(が空回りする)」という構図が特徴となっております。

サブキャラクターたちも個性豊かな面子が揃っており、テンポの良い4コマの中でオタク的な寒いノリに頼らない王道の笑いを提供してくれる点に本作の良さがあります。

漫画文化に浸ってきた人ならば必ず笑える作品。忙しない日常の息抜きにお薦めです。

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あらすじ

舞台は私立浪漫学園高校。

佐倉千代(さくら ちよ)は意中の人である野崎梅太郎(のざき うめたろう)に告白しようとするも、緊張のあまり「ずっとファンでした」と叫んでしまう。

そんな佐倉に、野崎はなぜかサイン入りの色紙を手渡してくれる。

サインとして記されていた名前は「ゆめの咲子」。

野崎の正体は人気少女漫画家である夢野咲子だったのである。

紆余曲折あって野崎の漫画制作を手伝うことになった佐倉だが、武骨で恋愛経験皆無、デリカシーなど欠片もない野崎の少女漫画制作は七転八倒の繰り返し。

漫画制作の現場には愉快な学園の仲間たちも加わっていき、お互いがお互いを振り回しあう抱腹絶倒の学園生活が始まるのだった。

そんな日常の中で、佐倉の想いは無事成就されるのだろうか......。

感想

自分にとって良質なコメディ漫画を探すのって、なかなか難しいんですよね。

コロコロコミックに連載されているような子供向けのネタに笑えるような年齢ではありませんし、かといって一部のオタク向けに特化した「内輪ネタ」で笑いを取るような漫画を理解できるほど首を深く突っ込んでいる界隈もありません。

となると、万民に通じるネタで笑いを取って欲しいのですが、そういった漫画は需要がないのかあまり見かけないのが現状です。

そんな中で、10年前から愛読しているのが本書「月刊少女野崎くん」です。

少女漫画というある程度一般的な題材をパロディするという作風は非常に読みやすく、標準的なボケとツッコミがテンポ良く繰り出されるので笑いが止まりません。

また、少女漫画をパロディすると言っても、皮肉っぽく冷笑的に描くのではないのが本作の良いところ。

登場人物誰もが良い漫画を描こうと努力しているのに、少女漫画特有の難しさからその境地に到達できず、四苦八苦するという過程で笑いを取りに来るのも爽やかです。

最近の連載では学園内における人間関係が物語の中心になっているのですが、個人的にはやはり、漫画づくりに苦労するという原点に回帰して欲しいところ。

よく考えると、ちょっとおかしなことばかりの「少女漫画」という世界。

少女漫画的なシチュエーションとは何か、少女漫画的に面白い展開とは何か。

そう考えながら頭を捻り、具体的に行動する。

「少女漫画」を真面目に描こうと努力して、空回りしても諦めない登場人物たちの躍動感。

それこそが本作における笑いのポイントであると思います。

また、不愛想な敏腕編集者である宮前剣(みやまえ けん)や、目立ちたがりの無能編集者である前野蜜也(まえの みつや)、前野に振り回される少女漫画家の都ゆかり(みやこ ゆかり)が登場する回なんかはいかにも「少女漫画を苦心してつくる漫画」らしくて好みです。

加えて、ヒロインである佐倉が野崎に好かれるため頑張る(が空回りする)という、少女漫画とは逆に女性が男性を追っかけるという設定になっているのもメタが効いていて面白く、ヒーローを中心とした他者に可愛がられるのではなく、他者のために頑張るヒロインという珍しい構図が出現しているのも独自の美点だといえるでしょう。

4コマなので手軽に読むことができ、漫画文化に多少の造形があれば十分に笑える作品。

感動とまではいかないので4点や5点はつけませんが、3点(平均以上の作品・佳作)としては十分の出来です。

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