確かに、遺伝子操作が当たり前になった時代において、遺伝子操作なしで生まれてきた人間が宇宙飛行士を目指す物語として全体的に妥当な流れが続くという点で物語に破綻や矛盾はなく、理解に苦しむ展開もないのですが、一方で、そういったSF的初期設定の意外性からさらに加点できるような、物語の中での起伏という魅力に欠ける作品です。
唯一見どころがあるとすれば、ヴィンセントが宇宙飛行船に乗り込む前の、抜き打ち身体検査の場面でしょうか。
この身体検査は本当に抜き打ちで行われ、ヴィンセントは何も対策をしていなかったので、宇宙に飛び立つ直前ながら絶望的な諦念へとその心情は突き落とされます。
しかし、検査官のレイマー医師は「息子があなたのファンだ」と言ってヴィンセントの身体検査結果を偽装し、ヴィンセントを宇宙へと送り出すのです。
レイマー医師はヴィンセントの入社当初から遺伝子サンプルの偽装工作を見抜いていたのですが、遺伝子に問題を持っている息子に想いを馳せ、敢えてその偽装を見逃し続けていた、というわけです。
本作において意外な展開に驚かされ、その人情にぐっとくる、なんて場面はここだけなのですが、こういった場面を作り出せる技量があるのなら、なぜ随所にこのような場面を挿入しないのか、とつい憤りを感じてしまいます。
テーマは良いが、物語としては凡庸、鑑賞するのが苦痛ではないが、これといった美点を見つけるのも難しい。
という結論を置いて、本作の評価は2点(平均的な作品)といたします。
コメント