海外文学

マーク・トゥエイン

【古き良き時代の小学生男子物語】小説「トム・ソーヤーの冒険」マーク・トゥエイン 評価:2点【海外文学】

あらすじ 時代は19世紀中盤、舞台はミズーリ州の田舎町セント・ピーターズパーク。 10歳の少年トム・ソーヤーは大変な悪戯好きで、いつも騒動を巻き起こしては育ての親であるポリー伯母さんに叱られている。 塀のペンキ塗りを巧みな手腕で友人たちに押し付けたり、新入りの少年と取っ組み合いの喧嘩をしたり、同級生の少女ベッキー・サッチャーにアプローチしてみたり、ホームレスの少年ハックルベリー・フィンと一緒に家出をしてみたりと、トムの日常は大なり小なりの冒険に溢れている。 そんなある日、トムは真夜中の墓地で殺人事件を目撃してしまう。 恐怖に駆られながら町に戻ったトム。 しかし、彼には更なる試練が訪れる。 真犯人のインシャン・ジョーは犯罪の隠匿を画策、マフ・ポッター老人に罪を被せようとしていて……。 感想 子供向けの純粋なエンタメ冒険小説です。 小学校高学年男子がやりそうな悪戯や、やってみたいと思うような冒険(家出をして森で寝泊まりしたりなど)のエピソードが散りばめられており、児童文学としてはまずまず面白いのではないでしょうか。 ただ、...
スコット・トゥロー

【波乱の法廷サスペンス】小説「推定無罪」スコット・トゥロー 評価:3点【海外ミステリ】

現役弁護士にして元検事補、作家としても活躍するスコット・トゥローの代表作。 ニューヨーク・タイムズの年間ベストセラーリストでは1987年の7位に入り、映画も2億ドル以上の興行収入を得るなど、当時の大ヒット作となった小説です。 殺人事件の捜査をしている主席検事補の主人公が、なんとその殺人事件の容疑者として起訴されてしまうという物語。 真犯人は誰なのか、というミステリ的な側面はもちろんのこと、米国独特の司法制度のもとで行われる劇的な裁判の展開や、汚職や不倫といったドロドロ要素溢れるサスペンスが興奮をそそります。 あらすじ 舞台はアメリカの田舎町であるキンドル郡。 地方検事局のトップを務める地方検事を決める選挙の真っ最中であり、現職のレイモンド・ホーガンと新人の二コ・デラ・ガーディアとの選挙戦は大接戦となっている。 そんな折、キンドル郡及び郡地方検事局を揺るがす殺人事件が発生してしまう。 キャロリン・ポルヒーマス検事補が何者かに殺害されてしまったのだ。 この事件を見事解決に導いて得点稼ぎをしたいレイモンドは、腹心の部下であるラス...
小説特集

【海外エンタメ小説】おすすめ海外エンタメ小説ランキングベスト3【オールタイムベスト】

本ブログで紹介したエンタメ小説の中からベスト3を選んで掲載しています。 「エンタメ小説」の定義は難しいところでありますが、本記事では、肩の力を抜いて楽しめる作品でありながら、同時に深い感動も味わえる作品を選ぶという方針でランキングをつくりました。 第3位 「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス 【知性を得た元知的障がい者の幸福と苦悩】 ・あらすじ チャーリィ・ゴードンは知的障がい者で、ビークマン大学知的障がい者成人センターに通いながらパン屋で下働きをしている。 読み書きも碌にできない彼だったが、ある日、ビークマン大学の二―マー教授とストラウス博士からある実験への協力を求められる。 それは、チャーリィの知能を劇的に高める手術のドナーになって欲しいというものだった。 手術を受けたチャーリーの知能はゆっくりとだが確実に向上していき、最終的には天才的な知能を得ることに成功する。 しかし、だからこそ、彼には苦難の時間が訪れるのだった。 あまりの知能の違いから人間関係に破綻が生じ始め、社会の欺瞞に気づくたびに葛藤する。 ...
小説特集

【海外純文学】おすすめ海外純文学小説ランキングベスト4【オールタイムベスト】

本ブログで紹介した海外の純文学小説の中からベスト4を選んで掲載しています。 「純文学」の定義は百家争鳴でありますが、本記事では、社会や人間について深く考えさせられる作品や、人間関係の機微を描いた作品、という緩い定義のもとでランキングを作成いたしました。 第4位 「夜間飛行」サン・テグジュペリ 【「飛行機」の黎明期を生きたパイロットたち】 ・あらすじ まだ夜間飛行が非常に危険な任務であり、その規制さえ議論されていた時代。 ある夜、パタゴニアからブエノスアイレスに向かっていた郵便飛行機が嵐に突入してしまう。 真っ暗な視界、途切れがちな地上からの連絡。 嵐からの脱出を試みる操縦士ファビアン、飛行機の到着を待つ郵便飛行会社支配人のリヴィエール、そして、リヴィエールの部下ロビノー。 不安と緊張のなか、三者三様の長い夜が幕を開ける......。 ・短評 まるで「プロジェクトX」を見ているような気分になる小説です。 危険を顧みず夜間飛行に繰り出すパイロットたちと、人類の未来のため断固とした姿勢で郵便飛行事業を営む経営者...
ミヒャエル・エンデ

【時間を蝕む現代社会】小説「モモ」ミヒャエル・エンデ 評価:2点【児童文学】

ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデの作品。 「果てしない物語」と共に彼の代表作として扱われることが多い著作ですが、日本では「モモ」の人気が非常に根強く、ドイツ語版の次に発行部数が多いのは日本語版だそうです。 「効率性」の名のもとに人間的な温かみのある要素がことごとく「悪」とされ、それでいて「効率化」を突き詰めたのに全くといっていいほど時間に余裕がない。 そんな現代社会を風刺した童話、という内容が日本人受けするのかもしれません。 全体的な感想としましては、現代社会の労働観や時間不足についての皮肉になっている個々の場面は楽しめたものの、物語の総体としてはイマイチだったという印象。 最も皮肉が効いている第6章や、近代的学校教育に対する批判精神旺盛な第13章、第16章の一部だけ読めばそれでよいと思えてしまいます。 あらすじ 舞台はローマのようでローマではない街。 主人公のモモは孤児で、街はずれの円形劇場跡に住んでいる。 両親はおらず、そのままでは食べる物にも困る立場のモモだけれど、モモの周囲にはいつも人が集まって温かな交流が結ば...
ヘルマン・ヘッセ

【優等生の哀しい青春】小説 「車輪の下」 ヘルマン・ヘッセ 星3つ

1. 車輪の下 ノーベル文学賞作家、ヘルマン・ヘッセの作品。 短編小説「少年の日の思い出」が中学校の国語教科書に長年掲載されているため、ヘッセという名前を聞いたことがないという日本人はあまりいないのではないでしょうか。 そんなヘッセの作品の中でも、「車輪の下」は特に日本で有名な作品になっております。 「新潮文庫の100冊」に長年選ばれ続けていることがその理由でしょう。 聞いたことがある作家で、本屋でも夏になると平積みされる。 だからこそよく売れているのだと思います。 そんな本作の内容は、「少年の日の思い出」を想起させるような暗くて救いのない話。 思春期特有の感情がもたらす興奮と絶望に苛まれ、一人の優等生が人生という重い車輪にゆっくりと押し潰されていく様子が描かれています。 2. あらすじ 田舎町の少年ハンス・ギーベンラートは幼少の頃から勉学でその才能を発揮しており、周囲の大人たちから将来を嘱望されていた。 その期待に応え、ハンスは神学校の入学試験を2位という好成績で合格する。 しかし、神学校で待っていたの...
☆☆☆☆(小説)

小説 「老人と海」 ヘミングウェイ 星4つ

1. 老人と海 「武器よさらば」や「誰がために鐘は鳴る」などの作品で知られるアメリカの小説家、アーネスト・ヘミングウェイの代表作で、ノーベル文学賞受賞のきっかけとなった作品だとされています。 新潮文庫の100冊に何十回も選出されるほど日本でも親しまれている作品であり、名実ともに人気を博している古典文学だといえるでしょう。 「老人を主人公とした武骨な冒険小説」という類例は現代文学に至ってもなかなか類似例がなく、文学界においていまなお稀有な立ち位置を維持しております。 そんな「老人と海」ですが、評判に違わず傑作といえる作品でした。 広漠とした海を舞台に、人間とカジキマグロが情熱的な大勝負を闘う。 その迫力と余韻の素晴らしさに、思わず感嘆のため息が出てしまいました。 2. あらすじ 舞台はキューバ、主人公は老漁師のサンチャゴ。 大型魚の一本釣りで生計を立てていたサンチャゴだったが、ある日を境に数か月もの不漁に陥ってしまう。 いつも漁を手伝ってくれていた弟子の青年マノーリンも、両親の指示によって別の漁船に乗ることになってしま...
トマス・H・クック

【米国流の青春ミステリ】「夏草の記憶」トマス・H・クック 評価:2点【アメリカ文学】

日本では「記憶」三部作で有名なアメリカのミステリー作家、トマス・H・クック。 「緋色の記憶(原題:The Chatham School Affair)」でエドガー賞を獲得し、アメリカでも一定の評価を得ております。 本作「夏草の記憶(原題:Breakheart Hill)」も日本では記憶三部作として売り出された三作品の一角。 (原題を見ての通り作品間には何の関連もないのですが、プロモーションのため強引な訳出がされています) その内容はアメリカ風青春ミステリといった嗜好の作品であり、内気な男子高校生ベンの美人転校生ケリーに対する恋愛を軸に話が進みますので、まるでよくある日本の文芸作品を読んでいるかのような錯覚に陥ります。 もちろん、青春モノとしてだけではなくミステリとしても日本国内で評価されておりまして、2000年の「このミステリーがすごい! 海外編」では3位に入っております。 そんな「夏草の記憶」ですが、普通だったというのが端的な感想です。 決定的な悪い点はなく、良い点は微妙にある作品。 3点(平均以上の作品・佳作)と2点(平均的な作品)...
ジュンパ・ラヒリ

【たおやかなインド系アメリカ文学】小説「停電の夜に」ジュンパ・ラヒリ 評価:2点【海外文学】

インド系アメリカ人の作家、ジュンパ・ラヒリさんの小説。 「インド系アメリカ人」という点がこの作家の特徴を端的に表しておりまして、アメリカに住むインド移民を主人公とした作品でアメリカ及びインドでも著名な作家となっております。 優れた筆致は確かで、評価は3点をつけようとも思ったのですが、そこに至るにはやはり、小説(=フィクション)としての面白さがやや欠けているように思われました。 描写や題材の選択は巧みなのですが、あくまで人生や日常の印象的な一場面を切り取った以上のものがなく、優れたノンフィクション(伝記・ドキュメンタリー・エッセイ)で代替できてしまう印象です。 あらすじ ・「停電の夜に」 シュクマールとショーバは夫婦であるものの、その間にはすきま風は吹いている。 激しく対立するのではなく、お互いに不穏な空気を抱えながらも、それを口に出さず、上滑りするような会話と日常を過ごしていた。 そんなある日、計画停電の通知が二人の住む家に届く。 電気のない、暗い夜。 二人はテーブルを挟み、少しだけ踏み込んだ会話をする。 ささ...
トルストイ

「イワンのばか」トルストイ 評価:1点|ロシアの文豪が著したシンプルな勧善懲悪寓話【海外文学】

「戦争と平和」「アンナ・カレーリナ」等の作品で有名なロシアの文豪トルストイが著した寓話。 富を求めることや暴力による解決に疑義を呈し、素朴な信仰に基づく生活がよいという直截なメッセージが印象的な作品です。 しかし、物語の内容があまりにも単純な勧善懲悪に過ぎ、もうすこし工夫がないと楽しみようがないと思ってしまう作品でした。 あらすじ とある国のとある場所には、軍人の長男セミョーン、商人の次男タラース、ばかの三男イワン、啞の妹マルタがいた。 ある日、悪魔が遣わした二匹の小悪魔のために、セミョーンとタラースは軍隊と財産を失い、イワンのもとへ身を寄せることになった。 一方、イワンに遣わされた小悪魔は、腹痛中でも農作業を続けるイワンの真面目さに太刀打ちできずたイワンを不幸にしてしまう目論見が破綻。 それどころか、三匹の悪魔はイワンの純真さのために捕らえられ、イワンに贈り物をして消えていく。 兄たちはイワンにその贈り物を使って軍隊や財産をつくるように要求し、そのおかげで王様となる。 しかし、イワンだけは農民として朴訥とした生活を送るのだった。...
カフカ

【変身】ある朝、目覚めると、自分の身体が巨大な虫に「変身」していた 評価:2点【フランツ・カフカ】

「審判」「城」などでも有名なフランツ・カフカの作品です。 降りかかる不条理に対して主人公が何を思い、どう行動するか。 そして、それを取り巻く家族の反応とその悲しい結末。 そのような描写は鋭くかつユーモアに富んでおり、文学界に新風をもたらしたのは理解できるのですが、物語の展開が「当然の結末」だらけで意外性がなく、その点の面白さが欠ける小説でした。 あらすじ ある朝目覚めると、グレゴール・ザムザは一匹の巨大な虫に変身していた。 真面目な勤め人だったグレゴール。 失業中の父の代わりに一家を支え、妹を音楽学校へと進学させるべく辛い仕事に耐えていた。 しかし、変身してしまった彼を家族は恐れるようになる。 妹のグレーテだけがかろうじて世話をしてくれるものの、虫になってしまったグレゴールの人間性は次第に失われていく。 一家の生活も困窮していき、金策として、家の一部を客人へと間借りさせることにしたザムザ一家。 ある日、間借り人をグレーテがバイオリンでもてなしていると、そこにグレーゴルが降りてきて.......。 感想 ...
カミュ

【共感は欺瞞】小説「異邦人」カミュ 評価:3点【海外文学】

ノーベル賞作家、アルベール・カミュの代表作です。 面白いと思う人とつまらないと思う人が分かれる作品ですが、私は好みです。 「共感」ばかりが重要視され、真実を客観的に見る視点を失った現代社会。 「誰もがそう思っている」に過ぎない「常識」が、まるで「道徳・正義」のように扱われる今日。 そのような風潮に疑問を投げかけ続ける古典の佳作です。 あらすじ 主人公、ムルソーの母が養老院で亡くなるところから物語は始まる。 葬儀に参加するために養老院へ向かうも、涙一つ見せず、母の死体も見ず、ミルクコーヒーを楽しむムルソー。 その翌日には恋人のマリィと海水浴に行き、映画を見て笑う。 何事にも動じず、淡々と過ごす彼だが、頼まれれば友人を助け、話を聞き、遊びに誘われればついてゆく。 その理由は「それをしない理由がないから」だとムルソーは言う。 理性・感情を持ちながら、一切の「人間らしさ」がないように見えるムルソー。 ある日、彼はビーチでアラビア人を殺し、裁判にかけられることになったのだが......。 感想 味のある...
☆☆☆(小説)

「O・ヘンリ短編集」O・ヘンリ 評価:3点|短編の名手が贈る風格と哀愁の作品集【海外文学】

第一巻 19世紀に活躍した短編の名手、O・ヘンリの作品集。 アメリカの都会に生きる人々の哀愁と情緒あふれる生活がシニカルさと人情味をもって描かれている、そんな作品たちでした。 あらすじ 「緑の扉」 ルドルフ・スナイダーは街を歩いているとき、チラシ配りの男から「緑の扉」と書かれたチラシを受け取った。 不審に思いもう一度チラシ配りの前を通ってみるが、やはり他の人とは違い、自分にだけそのチラシは配られる。 周囲を見渡し、緑の扉のアパートを発見したスナイダー。 彼がドアを開けると、そこには女性が倒れていて.....。 「ハーグレイブズの一人二役」 ワシントンのある家に間借りしているのは、南部出身の堅物、トールボット少佐。 そのあまりに古風なふるまいを周囲は嗤うのだが、ただ一人、 ハーグレイブズ青年だけは彼の昔話を熱心に聞いていた。 感心するトールボット少佐だったが、ある日、トールボット少佐が劇を見に行くと、そこにはおもしろおかしく少佐の真似をする役者ハーグレイブズがいて......。 以上2編を含む16編を収録。 ...
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