バトル

鬼滅の刃

「鬼滅の刃」で活躍する「優しさ」を持たない剣士たちの話

現代ビジネスに精神科医である斎藤環氏による面白い「鬼滅の刃」評論が掲載されていた。 この中で、斎藤氏は鬼殺隊の「柱」たちがみな鬼による加害または親による虐待を受けた被害者であり、それゆえに戦いの動機に怨恨を孕み、そのうえ、彼らの性格が狂気に満ちていることを指摘している。 ここで重要なことは、鬼殺隊の「柱」もまた、ほとんど全員が――甘露寺蜜璃を除き――鬼による犯罪被害者であるということだ(煉獄杏寿郎と宇髄天元は鬼の被害は受けていないが親からの虐待サバイバーである)。その意味で「鬼滅」とは、「正義の被害者(柱)」が「闇落ちした被害者(鬼)」と戦う物語、でもある。そして留意すべきは、「正義」はしばしばトラウマ的な出自を持つ、ということだ。鬼殺隊の人々が正義の刃を振るうのは、もちろん社会の治安と安全のためではあるのだが、その動機はしばしば怨恨であり、その向かう矛先は鬼であり鬼舞辻無惨だ。その正義は鬼退治の正義であって、その限りにおいて普遍性はない。 「正義」はしばしばトラウマ的な出自を持つがゆえに、しばしば暴走し、狂気をはらむ。「柱」の剣士たちは、そうした覚...
機動戦士ガンダム

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」村瀬修功 評価:2点|普遍的なサスペンスに見せかけたガンダムオタク向け作品【アニメ映画】

1979年から続く「機動戦士ガンダム」シリーズの最新映画で、1989年に発売された同名小説が原作となっております。 いわゆる「ガンダム世界内の歴史」においては「逆襲のシャア」という映画の続編にあたり、初代ガンダム(ファーストガンダム)が宇宙世紀79-80年を描いた作品であるところ、本作は舞台は宇宙世紀105年、つまり約35年後の世界。 とはいえ、私が鑑賞した限りでは「逆襲のシャア」を知らなくても鑑賞に問題はないと思われました。 しかし、本作の問題は別の場所にあります。 気取らないドキュメンタリー調の演出や素晴らしい作画は褒めることができますが、物語の筋があまりにも意味不明で、市街地戦は迫力がある一方でモビルスーツ同士の戦闘は魅力に欠けます。 また、登場人物たちの寒い言動も影響してか、どうしても「子供が考えた『大人の世界』を描いた映画」という印象を抱いてしまいます。 あらすじ 宇宙世紀105年。 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀と35年が経過した世界。 地球に居住できるのは選ばれた特権階級とその生活を...
新世紀エヴァンゲリオン

【苦肉の大団円】映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」庵野秀明 評価:2点【アニメ映画】

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の感想はこちら あらすじ フォースインパクトの発生後も葛城ミサト率いる反NERV組織WILLEは各地を転戦。 旧NERVユーロ支部を解放することでEVA2号機の修理パーツと8号機改造のための追加パーツを入手するなど、NERVとの最終決戦に備えた行動を執っていた。 一方、シンジとレイ、アスカの三人はニアサードインパクト後に生存者が寄り集まって出来た「第3村」へと辿り着く。 大人になった鈴原トウジや相田ケンスケと再会した三人だが、反応はそれぞれ異なっていた。 トウジの家に居候しながら恋愛関係を育むアスカ、第3村のコミュニティに入って農業に勤しむレイ。 そして、自身がニアサードインパクトを起こしてしまったという罪悪感に耐えられず、無気力に日々を過ごすシンジ。 周囲に励まされながら少しずつ自分を取り戻していくかに見えたシンジだが、NERVを離れたレイの身体には危機が迫っていて.......。 感想 どうにかこうにか「エヴァ」を終幕させた作品でした。 内容的には大絶賛できる代物ではあり...
新世紀エヴァンゲリオン

【駄作への急落】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」庵野秀明 評価:1点【アニメ映画】

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の感想はこちら あらすじ エヴァ初号機と第10使徒との交戦により発生したニア・サードインパクトから14年が経過。 葛城ミサトは反NERV組織WILLEを率い、NERVによる人類補完計画を阻止するべく戦いを続けていた。 そんな中、14年振りに目覚めた碇シンジはWILLEの旗艦Wunder内部で葛城ミサトや式波・アスカ・ラングレーと再開する。 ところが、二人がシンジに向ける言葉や行動は非常に冷たく、シンジは異常を感じ取る。 WILLEの艦隊がNERVによる強襲を受けると、シンジは綾波レイ搭乗のエヴァ初号機と接触。 初号機に連れられてWunderを脱出し、レイとともにNERVへと向かうのだった。 NERVでレイとも顔を合わせ、新しい友人である渚カオル(なぎさ かおる)とも親しくなったシンジ。 ようやく元気を取り戻しかけたシンジだが、4年前に起こったニア・サードインパクトとその後の顛末を知ることになり……。 感想 何もかもぶち壊しにしてしまったという印象です。 シンジがエヴァン...
鬼滅の刃

【理想的過ぎる物語】漫画「鬼滅の刃」吾峠呼世晴 評価:2点【少年漫画】

あらすじ 舞台は大正時代の日本。 竃門炭治郎(かまど たんじろう)は13歳の少年ながら一家の大黒柱として家計を支えていた。 そんなある日、炭治郎が家を空けた隙に、竃門一家は妹の禰豆子(ねずこ)を除いて鬼に惨殺されてしまう。 生き残った禰豆子も鬼と化しており、あろうことか炭治郎に襲いかかってくるのであった。 そんな炭治郎の窮地を救ったのが富岡義勇(とみおか ぎゆう)と名乗る剣士。 彼は鬼を全滅させるために組織された「鬼殺隊」の一員だと炭治郎は知るのだが……。 感想 珍しいくらいシンプルな少年漫画だったいうのが全体的な感想です。 炭治郎と鬼殺隊の仲間たちが次々と襲いかかってくる鬼たちをひたすら倒していくというだけの物語で、おそらく全体の三分の二以上をバトル描写に費やしているのではないでしょうか。 確かに、必殺技を繰り出しながら鬼の幹部たち(鬼側にも組織がある)を倒していく様子は爽快であり、チャンバラ漫画としては面白いのでしょう。 ただ、個人的には以下の2点からあまり楽しめませんでした。 ①キャラクターに人間味がない ...
新世紀エヴァンゲリオン

【大人になれ、オトコになれ】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」庵野秀明 評価:4点【アニメ映画】

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の感想はこちら あらすじ エヴァンゲリオン初号機のパイロットとして幾度かの戦闘に参加し、戦果を収めてきた碇シンジ。 彼の住む第3新東京市に新しいエヴァンゲリオンとそのパイロットが現れる。 エヴァンゲリオン2号機と共に現れた少女の名前は式波・アスカ・ラングレー。 シンジとアスカ、そして零号機のパイロットである綾波レイは共闘して使徒と戦い、勝利を得る。 深まる三人の友情と、各所から寄せられる称賛にシンジは充実感を覚えていた。 そんなある日、アスカがエヴァンゲリオン3号機起動実験のテストパイロットとして起用されることになる。 しかし、3号機は突如暴走を開始。 シンジ搭乗の初号機が3号機を止めるために出撃するのだが……。 感想 「序」に引き続き、少年がどのように大人になっていくかが描かれます。 最序盤では精神的に幼いシンジと周囲との差が間接的に描写されることが印象的でした。 3人目のパイロットとしてアスカが来日するのですが、アスカはレイとシンジのことをそれぞれ「えこひいき...
新世紀エヴァンゲリオン

【大人になれ、オトコになれ】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」庵野秀明 評価:3点【アニメ映画】

1990年代に放映されたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版であり、原作を再構築(リビルド)した作品として製作されております。 90年代の作品ではあるものの、凄まじい人気はいまでも健在。 現実世界でも様々なコラボが行われているため、アニメ好きという方でなくとも名前くらいは知っているのではないでしょうか。 そんな名作のリメイクである映画シリーズは4部作となっており、これまで3作品が公開されております。 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」 舞楽における幕構成の概念「序破急」からタイトルが取られており、公開年はそれぞれ、2007年、2009年、2012年と、長い時間をかけて製作されているシリーズになっております。 ファンの方々の忍耐強さと、人気の根強さが伺えますね。 そんな三作品を視聴してみたのですが、特に「序」と「破」は良作だと感じました。 頼りなくて幼稚な自己認識・世間理解しか持っていなかった少年が大人の「オトコ」になっていく。 その過程を生々しく迫力満点に描写してい...
学習漫画・世界の伝記

「ジャンヌ・ダルク」木村尚三郎・高瀬直子 評価:3点|神に愛された最強の英雄物語【学習漫画】

集英社から発売されている「学習漫画・世界の伝記」シリーズ。 世界史上で活躍した様々な人物の生涯を漫画で紹介するというシリーズの中から、今回はたまたま興味を持って読んだ「ジャンヌ・ダルク」のレビューをいたします。 小学生向けに書かれた学習漫画だけあって非常に読みやすく、(おそらく本作の狙い通りに)ジャンヌ・ダルクの生涯について知見を深めることができました。 それにしても、本当に奇跡のような生涯で、時おり起こるまさに漫画のような展開はそれが歴史的事実であるという点において驚愕させられます。 あらすじ 1412年1月6日、フランス東部ドンレミ村の農家に一人の少女が生まれた。 ジャンヌと名付けられたこの赤子こそ、後にフランスの英雄となるジャンヌ・ダルク。 このとき、フランスはイギリスとの百年戦争を戦っており、戦況は劣勢。 パリを中心とする北部はイギリス側についたブルゴーニュ公の手に落ちており、フランス側を率いるシャルル王太子はシノンという町でひっそりと身を隠している有様だった。 そんな戦争の渦中で育っていたジャンヌだったが、13歳のある日...
RWBY

【RWBY】日本アニメへのリスペクトに溢れるアメリカ産バトルアクションファンタジー 評価:3点【モンティ・オウム】

Volume1(第1期)の感想 1. RWBY volume1 Rooster Teethというアメリカのアニメーション制作会社による3DCGアニメ。 2017年7月から日本の地上波でもダイジェスト版が放送されており、10月には映画も公開されます。 日本風のキャラクター造形とアメリカタッチな掛け合い、そして華麗なアクションの組み合わせが妙味となって視聴者を楽しませてくれるアニメーション作品でした。 RWBY Volume1<通常版> posted with カエレバ 早見沙織 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2015-12-09 Amazon 楽天市場  
僕らのウォーゲーム

「ぼくらのウォーゲーム!」細田守 評価:3点|情熱と技巧と夏の切なさが詰め込まれたデジモン映画の佳作【アニメ映画】

人気シリーズ「デジモンアドベンチャー」の映画2作目。 いまでは著名となった細田監督が指揮した作品です。 アニメファンからの高評価を聞いて試聴してみましたが、40分と短い中で冒険アニメの良さを存分に引き出した作品だと感じました。 あらすじ デジモンたちと別れ、それぞれの生活を楽しむ太一たち。 しかし、西暦2000年の春休み、ネット上で生まれた新種デジモンがまたたく間に進化。 NTTからアメリカの軍事機関まで、ありとあらゆる場所を侵食していった。 このデジモンの暴走を止めるため、パートナーのデジモンたちと一緒に再び戦いへと身を投じる太一たち。 あまりにも凶悪なデジモンとの戦いは熾烈を極め、そしてついに、謎の新種ポケモンは核ミサイルを発射させてしまう。 ミサイルが着弾されるまでの時間は10分間。 太一たちは世界を救うことはできるのだろうか......。 感想 非常に巧妙で感動的な映画でした。 「大量に送られてくる応援の名を借りた迷惑メール」を最後に武器として活かす展開は意外性がありながら少年向けアニメの王道でもあ...
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