【政治学】おすすめ政治学本(政治過程論)ランキングベスト3【オールタイムベスト】
【海外エンタメ小説】おすすめ海外エンタメ小説ランキングベスト7【オールタイムベスト】
本ブログで紹介したエンタメ小説の中からベスト7を選んで掲載しています。「エンタメ小説」の定義は難しいところでありますが、本記事では、肩の力を抜いて楽しめる作品でありながら、同時に深い感動も味わえる作品を選ぶという方針でランキングをつくりました。第7位 「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティ【華麗な推理と意外な犯人が魅力の名作古典ミステリ小説】・あらすじ舞台は真冬の欧州を走る国際寝台列車オリエント急行の車内。ロンドンへ移動するため、名探偵エルキュール・ポワロはイスタンブール発カレー行の列車に乗車していた。しかし、猛吹雪に飲まれた列車はヴィコンツィ(クロアチア)とブロド(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)のあいだで立ち往生してしまう。不安と焦燥に包み込まれる車内、そして事件は起こる。サミュエル・ラチェットというアメリカ人実業家が刺殺された姿で発見されたのだ。ポアロは乗り合わせた乗客たちを一人一人呼び出し、尋問にかける。相矛盾するような証言はしかし、どれもが真実めいて見える。十二か所もの刺し傷を負った死体の謎。果たして、犯人は誰なのだろうか。・短評序盤で殺人事件が起きたあとは、ポワロがひたすら...
【海外純文学】おすすめ海外純文学小説ランキングベスト7【オールタイムベスト】
本ブログで紹介した海外の純文学小説の中からベスト7を選んで掲載しています。「純文学」の定義は百家争鳴でありますが、本記事では、社会や人間について深く考えさせられる作品や、人間関係の機微を描いた作品、という緩い定義のもとでランキングを作成いたしました。第7位 「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ【模範的な優等生に訪れる鬱屈と堕落の魅惑的な青春】・あらすじ田舎町の少年ハンス・ギーベンラートは幼少の頃から勉学でその才能を発揮しており、周囲の大人たちから将来を嘱望されていた。その期待に応え、ハンスは神学校の入学試験を2位という好成績で合格する。しかし、神学校で待っていたのはいままで以上に鬱屈な勉強漬けの日々。そんなハンスが神学校で出会ったのは、ヘルマン・ハイルナーという少年。おとなしい優等生ばかりの神学校で、ハイルナーは異端の生徒だった。詩歌の才能に長け、勉強はそっちのけで奔放な生活を送り、学校規則も碌に守らない。ハイルナーはハンスと真逆のような存在だったが、だからこそ、ハンスはハイルナーに惹かれていく。同性愛と友情の中間とも呼べるような関係性をハイルナーと築いていくハンスだったが、神学校の校長をはじ...
【長編漫画】おすすめ長編漫画ランキングベスト10【オールタイムベスト】
本ブログで紹介した全5巻以上の長編漫画の中からベスト10を選んで掲載しています。第10位 「堀さんと宮村くん」HERO【穏やかで切なくて少し後ろ暗くて、静かな友情と恋愛の物語】・あらすじ学校では生粋のギャルとして通っている堀ほり京子きょうこだが、家になかなか寄り付かない両親に代わって幼稚園児の弟を世話する家庭的で献身的な側面を隠し持っている。ある日の放課後、耳や唇にまでピアスを付けた男に連れられて帰宅した弟を見て、京子は狼狽を隠せない。男の説明によると、弟は犬に驚いて転んでしまい、男に慰められながら帰ってきたのだという。ひとまずは安心した京子だが、男が名乗ったことで堀の狼狽は却って最高潮に達してしまう。このピアス男こそ、クラスで一番地味な男子である宮村みやむらだったのだ......。・短評一応、青春ラブコメディというカテゴリに入れるのが正解だとは思うのですが、派手なギャグで笑わせるというよりは、地味なボケとツッコミ、的確なキャラクター性で「ふふふ」と笑わせてくれる作品。恋愛という側面では、少年漫画的でも少女漫画的でもない雰囲気が特徴で、非常にフラットで淡々とした、それでいて青春時代の心...
「ぼくは愛を証明しようと思う」藤沢数希・井雲くす 評価:2点|恋愛工学を駆使してモテ男になろう【恋愛ハウツー漫画】
外資系銀行出身で現在は作家として活躍する藤沢数希さん。そんな藤沢さんは「恋愛工学」と題した恋愛術も発信しており、その技術を纏めた著作として小説「ぼくは愛を証明しようと思う(幻冬舎刊)」があります。本作はその漫画版であり、藤沢さんが提唱する「恋愛工学」理論が物語に絡めて紹介されていくという作品になっております。先日紹介した漫画「ピックアップ」が「成長物語」を描くための道具として恋愛技術を用いていたのに対し、本作は「恋愛工学」という恋愛技術を紹介することが漫画の目的であり、そのための道具として物語形式を用いている点が対照的です。そんな本作ですが、まさに「恋愛工学入門」という位置づけに相応しい漫画であると思います。一般的な発想ではまず思いつかない「恋愛工学」の理論と技術が次々と紹介され、主人公による実践を通してその具体的な方法と成功までの道筋が描かれていきます。聞き慣れない用語が心理学的な補足を伴って上手く説明されており、そんなに都合よく「モテ」を解決してしまえるのか、と疑問に思うこともなくはないのですが、それなりに理解・納得しながら読み進めることができますので、「恋愛工学」という未知な世界...
「ピックアップ」真鍋昌平・福田博一 評価:3点|ナンパを通じて描かれる青年の成長と男同士の友情。現代社会特有の歪な男女関係を添えて【青春漫画】
「ナンパ」を題材とした全2巻の短編漫画。「闇金ウシジマくん」の作者として有名な真鍋昌平さんが原作を務めております。とはいえ、チャラいナンパ師がコリドー街や江ノ島で女性を「ピックアップ」してはセックスする様子を描いた漫画、というわけではありません。主人公はいかにも「陰キャ」な新卒社会人であり、そのバディとなるのがデキる先輩という構図。この先輩が主催する「魁ナンパ塾」に主人公が入塾し、様々なナンパ術を学びながら社会を生きる「漢」としての技量を高め、仕事でも成功していくというサクセスストーリーです。へたれ主人公が「師」の導きで成長し、強さを身に着けながら自立して一人前になっていく。そんな少年漫画を彷彿とさせる大枠ながら、自由恋愛と「男女平等」が隅々にまで行き渡った現代社会の闇を何でもないことのように描くことで却って生々しく表現しているという面白い作品。都市部で生きる若手社会人なら共感できること請け合いでしょう。あらすじ主人公の南波みなみ春海はるうみは都内の出版社に勤める新卒社会人。配属希望はマンガアプリの開発部門だったが、実際に配属されたのは女性誌の編集部。当然ながら、おしゃれ感が振りまかれ...
【政治学】おすすめ政治学本(政治過程論)ランキングベスト3【オールタイムベスト】
本ブログで紹介した政治学系の書籍から、政治過程論に纏わる書籍ベスト3を選んで掲載しています。政治過程論を本格的に学びたい人のための学術書が中心となっております。第3位 「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」山田真裕2009年の総選挙(旧民主党が政権交代を果たした)を中心に、なぜ政権交代が起き、その後、なぜ政権交代が起きる気配さえなくなったしまったのか。有権者に対するアンケート結果をもとに、その要因を統計的アプローチによって分析した学術書です。本書では特に、選挙ごとに投票先を変更した「スウィング・ボーター」に着目し、彼らこそが政権交代の鍵になったとして「スウィング・ボーター」の属性や政策選好、各政党への支持態度の変遷を提示しております。本書を読めば、当時民主党を支持した人々、政権交代の起爆剤となった有権者たちの実像を理解することができます。菅政権の支持率が下がる中で野党連合は政権交代へと意気込みを高くしている状況ですが、本書を読めば「政権交代」が起こりうる状況についての学術的な造詣を深めることができるでしょう。・感想記事はこちら
【アニメ映画】おすすめアニメ映画ランキングベスト5【オールタイムベスト】
本ブログで紹介したアニメ映画の中からベスト5を選んで掲載しております。私の好みもあり、バトルやファンタジー、ハーレムというよりはヒューマンドラマをテーマとした作品が中心となっております。第5位 「君の名は。」新海誠【恋愛とSFを見事に融合させた平成最後の大ヒットアニメ映画】・あらすじ舞台は現代の東京と、岐阜県の奥地、糸守町。 ある日、東京に住む立花たちばな瀧たきと糸守町に住む宮水みやみず三葉みつはの日常に異変が起こる。なんと、二人の身体が時々入れ替わるようになってしまったのである。突然の事態に戸惑う二人だったが、携帯電話に残したメッセージで意思疎通を図り、互いの日常に触れる中で次第に惹かれあっていく。しかし、ひょんなことから瀧が三葉に電話をかけようとし、事態は急転する。三葉への電話は決して繋がることなく、三葉の故郷、岐阜県を訪れた瀧は、そこで糸守町が三年前にティアマト彗星の衝突に遭い、住民ごと消滅してしまったという事実を知る。打ちひしがれる瀧は糸守町の事件を調べ、何とかもう一度入れ替わって三葉の死を回避しようとするのだが......。・短評アニメ映画界にセンセーションを起こした、言わず...
【転職支援】教養書「転職の思考法」北野唯我 評価:2点【ビジネス書】
博報堂やボストンコンサルティンググループで働き、いまは就職支援サービス会社ワンキャリアの取締役を勤める北野唯我さんの著書。「転職の思考法」というタイトルの通り、転職するにあたって考えるべきことや、業界・会社選びのコツが述べられているほか、そもそもどのような環境で働くべきなのかという普遍的な「仕事論」にまで言及されている著作です。一人のサラリーマンが転職について考え始めてから実際に転職するまでの物語に沿って著者の主張が述べられていくという形式を取っており、物語自体もそれなりに面白いので、読み易さという点では万民向けになっております。ただ、全体としては凡庸なビジネス書であったというのが本ブログにおける評価。良いことを言っっておりますし、間違ったことを言っているわけではないのですが、巷に溢れる転職論や仕事論からさらにもう一歩踏み込んだ言説に乏しく、やや内容的に薄い本だったと感じました。目次プロローグ このままでいいわけがない。だけど......第1章 仕事の「寿命」が切れる前に、伸びる市場に身を晒せ第2章 「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない第3章 あなたがいなくなっても、確実...
【承認欲求からの脱却】教養書「嫌われる勇気」岸見一郎他 評価:4点【自己啓発】
19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した心理学者、アルフレッド・アドラー。その心理学理論を物語形式で紹介する自己啓発本です。2013年の12月に発売されて以来、長らく人気書の地位を保持し続け、2014年にはビジネス書の売上ランキングで2位を、2015年には1位を獲得するなど、一斉を風靡した書籍となりました。心理学といえばフロイトやユングが有名ですが、アドラー心理学は彼らの理論と一線を画しており、良く言えば斬新、悪く言えば突飛な理論が連発されて幾度となく読者を驚かせます。例えば、過去のトラウマが現在の感情及び行動の理由となっている、という心理学では定番の因果関係をアドラーは否定します。それでは、現在の感情や行動を形作っているのは何なのか。アドラーに言わせてみれば、それは「目的」です。つまり、「怒っている人が怒っているのは『怒りたい』という目的(あるいは『怒る』ことによって得られる何らかの目的物)があるからであって、『怒り』を感じる以前に発生した出来事に原因があるわけではないというのです。なかなか受け入れがたい主張かもしれませんが、このような主張の数々が説得的な理由づけと一緒に展開され...
「地球から来た男」星新一 評価:2点|唯一無二の超短編作家による手軽で不思議な物語【ショートショート作品集】
「ショートショートの神様」として知られる星新一さんの作品集。ショートショートを精力的に発表し続けた異端の作家であり、1957年デビューでありながら現在においてもその作品群は根強い人気を誇っております。日本経済新聞社が毎年開催している小説新人賞「星新一賞」に名前を冠していることもその証左だと言えるでしょう。文学賞の受賞こそ2度(日本推理作家協会賞・日本SF大賞特別賞)と少ないですが、刊行された作品集の数は膨大で、漫画化やドラマ化されたメディアミックス作品も枚挙に暇がありません。そんな星新一さんの作品集の中でも、本作は2007年に角川文庫から発売された比較的新しい作品集です。SF色の濃い表題作から、ミステリ仕立ての作品、あるいはヒューマンドラマに重きを置いた作品など、バラエティ豊かな内容となっておりました。あらすじ・地球から来た男産業スパイとして活躍していた男だが、ある日、潜入先で産業スパイであることが暴かれてしまう。口封じのため、特殊な装置を使って遥か遠くの惑星に飛ばされてしまった男。しかし、男の眼前には「地球」そっくりの光景が広がっていて……。・包み五十歳を超えても貧乏画家である男の家...
【最優先事項以外は不要】教養書「エッセンシャル思考」グレッグ・マキューン 評価:3点【自己啓発】
シリコンバレーでコンサルティング会社を営むグレッグ・マキューン氏の著書。2014年の発売(邦訳版)ながらながらいまだに増刷が続くロングセラーとなっております。非常に有名な書籍ですので、ビジネス書や自己啓発本に興味がある方ならば一度くらいは耳にしたことがあるタイトルなのではないでしょうか。そんなタイトルに違わず、本当に重要なこと、エッセンシャルな事柄に人生の時間を使えという内容となっております。そう表現いたしますと、凡庸な本なのでは、と思われるかもしれませんが、多種多様な事例と軽妙で説得的な語り口、さらに、いかにして「エッセンシャル思考」を実行していくかという具体的な思考法が記述されている点に本書の妙味があります。手軽に読めるうえ、文字通りエッセンスが凝縮された本になっておりますので、「エッセンシャルな事柄に人生の時間を使う」ためには具体的どのような思考・行動をするべきなのかという視点を得るために読んでみる価値があるのはもちろん、「大事なことだけに集中する」「些末なことを切り捨てる」という大胆な生き方が重要だと頭では分かっているけれど、心では躊躇いを感じている、そんな人が読むと背中を押し...
【メディア論】なぜYouTubeだけがテレビを突き放すことができたのかを考える
一年ほど前のことになりますが、電通が発表した「日本の広告費」という資料によりますと、2019年にはついに「インターネット広告費」が「テレビメディア広告費」を超えたそうです。「インターネット広告費」が凄まじい勢いで伸びているのに対し「テレビメディア広告費」は伸び率さえマイナスですから、この差はもっと拡大していくでしょう。目下、劣勢に立たされている「テレビ」という媒体。その影響力の低下はSNS等でも盛んに言及されており、特にYouTubeとの対比で語られることが多いように思われます。そこで今回は、なぜYouTubeのような媒体がテレビを突き放しつつあるのかということを「広告」という側面から検討していきたいと思います。そもそもテレビの強みとは何だったのかテレビ番組はとても面白くて、学校や職場で話題になることが当たり前のコンテンツである。インターネットが広く普及する以前の状況を知っている方々ならば、かつて存在したこの感覚をよく理解して頂けると思います。それでは、なぜテレビは面白かったのでしょうか(あるいは、なぜ、いまでもある程度面白いのでしょうか)。番組のテーマや企画自体が面白い、という側面も...
差別をテーマにしたNIKEのCMがなぜ放映されたのかを考える【メディア論】
NIKEといえばスポーツ関連製品やスニーカーで有名なグローバル企業ですが、2020年の11月末、NIKEが製作した自社製品のコマーシャル映像がSNSで話題となりました。YouTubeでも公開されておりますので、リンクを貼っておきます。ご覧の通り、CMのテーマは「差別(に立ち向かって自分らしく生きる)」であり、在日韓国・朝鮮人や黒人、あるいは女性全体に対する、とりわけ日本における差別が少女たちの視点を通じて表現されています。「差別」は様々な意味で世論を二分する繊細なテーマであり、SNS上でも「マイノリティに対する差別を告発し、それに立ち向かう勇気を貰える良いCMだ」のような書き込みもあれば「まるで日本に不合理な差別があるかのような表現であり、NIKEは嘘を放映している」「(マイノリティを過度に優遇する)逆差別のほうが酷いのに」のような書き込みもあり、論争の種になっておりました。本稿では、このCMが日本における差別の実態を反映しているか否か、あるいは、このCMが道徳的・倫理的に正しいか否には立ち入りません。その代わり、なぜ、いまこのタイミングで、どのようなプロセスを経てこのCMが放映される...