【アニメ映画】おすすめアニメ映画ランキングベスト5【オールタイムベスト】
☆☆☆(映画/アニメ)
「ファイト・クラブ」デヴィッド・フィンチャー 評価:3点|現代資本主義社会がもたらした精神的鬱屈に対して、奇妙で斬新な処方箋を提示する作品【アメリカ映画】
1999年に公開されたアメリカ映画であり、今日でも評価が高いハリウッド映画の古典作品の一つです。「ベンジャミン・バトン」や「ソーシャル・ネットワーク」、「ゴーン・ガール」といった作品を後に製作することになるデヴィッド・フィンチャー氏が監督を務めております。大物俳優の出演としては、主人公の相棒であるタイラー・ダーデンをブラッド・ピットが演じており、さすがの演技で魅了してくれます。不眠症に悩んでいるサラリーマンの主人公が「殴り合い」による充実感を得ることで精神的な変貌を遂げていく、というストーリーラインが鬱屈した日常を送っているであろう多くの日本人サラリーマンに刺さること請け合いでしょう。私もそんなサラリーマンの一人だけあって、序盤から中盤までの展開には興奮させられましたが、中盤以降の展開についてはやや突拍子もないものに感じられました。社会派といえばそうなのでしょうが、「社会」を描くにしては手管が大雑把過ぎるように感じられ、大仰な展開に見合うだけの説得力や感情的な揺さぶりが欲しかったところです。あらすじ主人公の「僕」は大手自動車メーカーでリコール調査の仕事に就いている。十分な給料を得ており...
「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」アーロン・ホーバス 評価:3点|世界的な大人気ゲームシリーズがそのまま映画になって登場。手堅い面白さに一献の工夫が加えられた良作【アニメ映画】
1985年に発売されて以来、世界で圧倒的人気を獲得してきた「スーパーマリオ」というテレビゲームシリーズ。そのゲームの世界をテーマとした初のアニメーション映画が本作となります。「スーパーマリオ」というゲームシリーズ自体がアクションに重点を置いたゲームであり、ストーリー性がほとんど存在しないことから、そもそもどのような映画になるのか分からないといった前評判でしたが、ふたを開けてみれば文句なしの世界的大ヒットを記録しています。アニメ映画だけに限れば興行収入は「アナと雪の女王」シリーズの1と2に次ぐ3位につけているらしく、世界のアニメ映画界に金字塔を打ち立てたと言っても過言ではない作品となっております。そんな本作でしたが、なるほど、世界的に有名なゲームであるという下地がよく考慮されている作品であり、アクション面やストーリー面において、原作シリーズのどれかを一度でもプレイしたことがある人ならば安心感を持って楽しめる内容だと感じました。加えて、これまであまり語られてこなかった主人公兄弟(マリオとルイージ)の出自を掘り下げるような演出もあり、その点においても濃やかな配慮がなされているのには感心いたし...
「桐島、部活やめるってよ」吉田大八 評価:3点|スクールカーストという虚像、努力と情熱という実像【青春映画】
2012年8月に公開された映画で、朝井リョウさんのデビュー作となった同名小説が原作です。学園ものだけあって生徒役に若手俳優が起用されているのですが、主演の神木隆之介はもちろん、橋本愛や東出昌大、山本美月、松岡茉優といった後の大物俳優たちが共演している点もいまとなっては本作の魅力を構成しているといえるでしょう。公開当初の注目度が高かった作品ではなかったのですが、好評を得てロングランヒット作となり、第36回日本アカデミー賞の最優秀作品賞をはじめ数々の賞を獲得する結果となりました。現在でも人気は根強く、2022年においても10周年記念上映が行われるほどです。私も本年になってようやく鑑賞したのですが、評判に違わず面白い作品であり、穿ったような邪道作品にみせかけておいて、最終的には王道作品として締める技法には感動いたしました。スクールカーストに囚われた日本の典型的な教室風景を描きつつ、スクールカーストという眼鏡をかけたまでは見ることができない、学校生活において特別な輝きを放つ本物の英雄を劇的な演出で見出すことに成功している、そんな佳作です。あらすじバレーボール部においても教室においても中心人物で...
「フォレスト・ガンプ」ロバート・ゼメキス 評価:3点|激動の戦後アメリカを駆け抜けた、実直で不器用な男の人生【アメリカ映画】
1994年公開のアメリカ映画で、大ヒットを記録してアカデミー賞の作品賞を受賞した作品です。いまなお古典としての人気も高く、ハリウッド映画の王道的名作とされています。主人公のフォレスト・ガンプは生まれつき知能指数が低く、足も不自由という、謂わば生来の劣等生として登場するのですが、そんなフォレストが実直な性格を梃子に激動の人生を逞しく歩んでいく様子を描いた、まさに王道を往く物語です。フォレストの辿る人生には、ベトナム戦争や公民権運動、ピンポン外交といった戦後アメリカ激動の歴史が重ね合わされ、ケネディ大統領にニクソン大統領、ジョン・レノン、そしてアップルといった、当時の時代を象徴するような実在の人物や企業が登場することで、主人公の人生という小さな流れと、戦後アメリカの歴史という大きな流れが相互に影響を与え合うダイナミックさが特徴となっております。もちろん、粗を探そうと思えばたくさんあるのですが、大胆な物語構成によって「人生」の良い意味での不思議さを描く、という試みに成功している点において、いくばくかの粗による悪さを超える魅力が形成しており、総合すれば佳作と呼べる映画といえるでしょう。その評価...
「サマーゴースト」loundraw 評価:3点|高校生たちと幽霊によるひと夏の不思議な経験【アニメ映画】
2021年11月12日に公開された上映時間40分の短編アニメーション映画です。監督はイラストレーターのlaundrawという方で、近年書店でよく見かけるようになった青春系ライト文芸の表紙イラストを多く手掛けている人物。やたらに青色で窓や空から光が神々しく射しているあの画風ですね。イメージとしては、以下のような小説の表紙が代表的だと言えるでしょう。また、脚本はエンタメ小説家として往年の売れっ子である安達寛高(=乙一)さんが務めており、イラストレーター出身者による監督と小説家出身者による脚本という野心的な意欲作となっております。上映館も多くない作品ですので、そこまで期待せずに観に行ったのですが、思っていたより良質な作品だったという印象。高校生たちが経験したひと夏の不思議な体験がさらりと描かれており、気軽に鑑賞するには十分な作品です。あらすじインターネットを通じて知り合った3人の高校生、友也、あおい、涼。特定の場所で夏に花火をすると現れるという幽霊「サマーゴースト」を呼び出すため、三人は空港の跡地へと向かう。滑走路の上で次々と花火を消費していく三人。やっぱり、単なる都市伝説だったのか。そう思...
【大人になれ、オトコになれ】映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」庵野秀明 評価:3点【アニメ映画】
1990年代に放映されたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版であり、原作を再構築(リビルド)した作品として製作されております。90年代の作品ではあるものの、凄まじい人気はいまでも健在。現実世界でも様々なコラボが行われているため、アニメ好きという方でなくとも名前くらいは知っているのではないでしょうか。そんな名作のリメイクである映画シリーズは4部作となっており、これまで3作品が公開されております。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」舞楽における幕構成の概念「序破急」からタイトルが取られており、公開年はそれぞれ、2007年、2009年、2012年と、長い時間をかけて製作されているシリーズになっております。ファンの方々の忍耐強さと、人気の根強さが伺えますね。そんな三作品を視聴してみたのですが、特に「序」と「破」は良作だと感じました。頼りなくて幼稚な自己認識・世間理解しか持っていなかった少年が大人の「オトコ」になっていく。その過程を生々しく迫力満点に描写している側面に文学性すら感じる作品です。(本記事では「序」の感想を述べ、「破」以...
【大人になりたい夏の旅】映画「菊次郎の夏」北野武 評価:3点 【日本映画】
1999年公開の映画で、監督は北野武。主演である菊次郎役も北野監督本人が勤めております。暴力性の強い映画で知られる北野監督ですが、本作は不良中年男と小学生の少年がひと夏の不思議な旅を経験するロードムービー。北野監督独特のクセが強いながらも、基本的には人情感動路線の作品です。 そんな本作を鑑賞してみたのですが、なかなか魅力的な映画でした。物事について一面的な見方をせず、酸いも甘いもある「人間」を描こうとしている意欲作。あまりにも清潔になりすぎた現代社会では失われてしまった人間臭さと、その中にある「大切だったかもしれないもの」について思いを馳せられる作品です。あらすじ小学三年生の正男(まさお)は、東京の下町で祖母と二人で暮らしている。家庭は貧しく祖母は毎日働きに出ており、両親もいないため、夏休みだというのに正男は旅行に行くこともできない。父親は正男が小さい時に他界し、母親は遠くに働きに出ている。祖母からそう聞かされていた正男だったが、あまりにも惨めな状況にいてもたってもいられなくなり、正男は僅かなお小遣いを握りしめ、母を探す旅に出ることを決意する。しかし、駅に着くまでもなく正男は近所の中学...
【偽物の世界から脱出せよ】映画「トゥルーマン・ショー」ピーター・ウィアー 評価:3点 【アメリカ映画】
1998年公開のアメリカ映画。ある凡庸な男の人生が本人には知らされることなく全世界に放映されている、という突飛な設定が関心を惹く作品です。監督は「いまを生きる」等の作品で知られるピーター・ウィアー。“Yes Man”の主演等で知られるジム・キャリーが主人公のトゥルーマンを演じています。全体的な感想としては、初期設定の面白さはよく効いていたものの、その突飛な設定から展開される面白さ以上の工夫がやや薄く感じられました。あらすじ主人公の名前はトゥルーマン・バーバンク。離島に存在する小さな町、シーヘブンで保険会社に勤務する30歳の男性である。凡庸ながら幸福な日常を送る彼の人生には、他の人の人生とは決定的に異なっている点があった。それは、このシーヘブンという街自体がリアリティ番組のセットであり、彼の人生は30年に及ぶリアリティショーとして世界中に放映されているという点。トゥルーマンは30年間この事実に気づかないでいたが、番組側のミスが重なり、トゥルーマンは徐々に世界の「おかしな」在り方に気づいていく。真実を知ろうと敢えて奇行を繰り返すトゥルーマン。数奇な人生を送る彼が最後に導き出した答えとは……...
映画 「ロミオとジュリエット」 監督:フランコ・ゼフィレッリ 星3つ
1. ロミオとジュリエット1968年公開の映画で、言わずと知れたシェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」の映画化作品です。近年流行りの「新解釈」などではなく、原作に忠実な脚本となっているのですが、それでいて当時は大ヒット。アカデミー撮影賞、アカデミー衣装デザイン賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞など様々な賞を受賞しました。そんな作品を2020年に鑑賞してみたわけですが、なかなか良かったというのが率直な感想です。シンプルでハイテンポな恋愛劇というまさに古典王道を感じさせる作風で、しらけるような場面もなくずっと見ていられます。凝った作品が見せる深い感動はありませんが、ハラハラ、ドキドキ、いちゃいちゃ、そして胸を衝く悲しみという要素が揃ったエンタメの良作でした。2. あらすじ部隊は中世イタリアの都市ヴェローナ。この街では、モンタギュー家とキャピュレット家という二つの名家が長年にわたって抗争を繰り広げていた。そんなある日、モンタギュー家の嫡男ロミオは、友人たちとともにキャピュレット家のパーティーに忍び込む。そこでロミオが出会ったのは、キャピュレット家の一人娘であるジュリエット。たちまち恋...
漫画&アニメ映画 「この世界の片隅に」 著者:こうの史代 監督:片渕須直 星3つ
1. この世界の片隅に2019年1月現在において「この世界の片隅に」といえばアニメ映画を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。事務所との係争により「のん」への改名を余儀なくされ、仕事が激減していた能年玲奈さんを主演声優に迎えてたった63館での公演と、マイナー映画的な興行から始まったにも関わらず口コミによって人気が広まった本作。最終的には30億円近い興行収入を獲得し、世界60ヶ国以上で公開されるようになるなどまさに日本映画界のシンデレラといってもよい作品でしょう。2019年12月20日には新カットを加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」として改めて公開される予定で、その勢いは留まるところを知りません。本作が公開された2016年は本作のほかにも「君の名は。」「聲の形」といったアニメ映画界の転換点となる作品が公開された年であり、いまや日本の映画シーンを牽引している「子供向けでもオタク向けでもないアニメ映画」というジャンルの礎を築いた作品でもあります。「君の名は。」「聲の形」は本ブログでも既にレビュー済み。これでようやく三作品コンプリートとなりました。続いて原作漫画の紹介になります...
「天気の子」新海誠 評価:3点|美麗な音楽と情景描写、ハイテンポな物語が見どころの青春ファンタジー【アニメ映画】
「君の名は。」で記録的な大ヒットを獲得し、アニメーション映画監督としての名声を一気に高めた新海誠監督3年ぶりの新作。今月(2019年7月)に封切られたばかりの作品ですが、既に「君の名は。」を超える速度で興行収入を伸ばしているという情報まであるほどで、映画ファンの新海誠監督に対する期待の高さが伺えるところです。凡庸な少年と天気を自在に操ることのできる少女のボーイ・ミーツ・ガール物語という触れ込みでしたが、公開初日に大雨からの晴れという天気が実際に起こったりと、まさに現代日本を覆う異常気象の片鱗とマッチした点でも天命に恵まれた作品になりました。当ブログでも「君の名は。」については2回ほど記事にしており、本作「天気の子」についても公開を楽しみにしておりました。また、同監督の作品では2013年公開の「言の葉の庭」も記事にしております。そんな「天気の子」ですが、感想としてはストーリーが中の上、キャラクターの魅力は中の中から中の下といったところでしょうか。ただ、演出やテンポといった面では相当優れていたほかうえ、他の側面においても要素要素を見れば魅力的な点も多々あり、それゆえ評価3点(平均を超える作...
「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」石原立也 評価:3点|スポ根要素と人間関係要素の両輪が魅力の青春吹奏楽アニメシリーズ続編映画【アニメ映画】
同名の小説を原作とするアニメシリーズの第3期に相当する部分ですが、TVシリーズとしてではなくアニメ映画として公開されました。原作の著者は武田綾乃さん。アニメ版は京都アニメーションが手掛けています。原作はともかくアニメ版は私もファンでありまして、本ブログでも継続して取り上げている作品の一つです。アニメ版の第1期、第2期のレビュー及び原作小説のレビューは以下の通りです。序盤~中盤にかけての部活人間関係&スポ根の在り方という本作の原点にまつわる展開の良さに敬意を表しつつも、2冊分の小説を1つの映画に纏めているからか、終盤を中心に粗雑さや異様な駆け足感もあってやや「濃密さ」の不足を感ましたので、評価は3点(全体のレベルが一定以上、なおかつ胸を揺さぶる要素が一つ以上ある佳作)といたしました。お勧めできる作品ではあります。面白かった前半部、イマイチだった後半部に分けて感想を述べていきます。【前半部】あらすじ悲願の全国大会出場を果たした北宇治高校吹奏楽部だったが、全国大会での評価は最低ランクである銅賞。悔しさを噛みしめながらもさらなる躍進を胸に秘める部員たち。しかし、3年生が引退したいま、目下の課題...
アニメ映画 「言の葉の庭」 監督:新海誠 星3つ
1. 言の葉の庭2013年公開のアニメ映画。「君の名は。」で一躍有名となった新海監督の作品で、「君の名は。」の一つ前の作品にあたります。「君の名は。」は本ブログでも一度星2つで評価した後、考えを改めて評価を上げています。新海監督特有の映像美の素晴らしさはもちろんのこと、「人生に迷う高校生」と「精神的に追い込まれている社会人」の交流というテーマで(ファンタジー色なく)アニメ映画を描こうとしたのも斬新で評価できます。物語面でやや瑕疵を感じましたが、それでも鑑賞後は胸のすくような気分にさせてくれました。2. あらすじ高校生の孝雄は靴職人という一風変わった将来の夢を持っており、現実味のない夢に没頭してしまう自分に思い悩んでいた。そんな孝雄は、雨の日の午前だけは学校をサボってよいという自分ルールを作って新宿御苑のベンチに足を運び一人で靴のデザインを考えるのだった。ある雨の朝、いつものように孝雄が新宿御苑に行くと、そこには先客がいた。その若い女性はチョコレートをつまみにビールを飲み、スーツを着ていながら「会社をサボっちゃった」と言って新宿御苑に来ている。この日から、孝雄が新宿御苑に行くと必ずいるそ...