「氷点」三浦綾子 評価:3点|「汝の敵を愛せよ」ならば、娘を殺した犯人の子供を引き取ってみせる【古典純文学】
キリスト教文学の名手である三浦綾子さんのデビュー作にして代表作。1963年に朝日新聞社が開催した、賞金1000万円の懸賞小説にて見事当選を果たした作品です。現在よりも遥かに物価の低い1963年に賞金1000万円の賞を獲った作品ということで、非常に注目を浴びました。圧倒的な前評判を背負って出版された本作でしたが、期待を裏切ることはありませんでした。素晴らしい売り上げを見せつけた末に何度もドラマ化され、大人気番組となる「笑点」のタイトルも本作から取られるなど、当時の国民的ベストセラーとなります。そんな作品を令和の今日なって読んでみた感想ですが、サスペンス的なエンタメ性を備えつつも、テーマである「人間の原罪」について巧妙な掘り下げが為されている作品であると感じました。旧い作品にありがちな冗長性は否めませんが、おそらく唯一無二であろう優れた設定と、そこから展開される痛切で悲哀に溢れる物語の様相が光ります。まさに「氷点」を感じるような、冬の夜長にお薦めの作品です。あらすじ旭川にある辻口病院の病院長、辻口啓造(つじぐち けいぞう)が主人公。妻の夏枝(なつえ)と長男徹(とおる)、長女ルリ子(るりこ)...
2022.01.03
三浦綾子☆☆☆(小説)作品の感想