小説 「万延元年のフットボール」 大江健三郎 星2つ

万延元年のフットボール
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1. 万延元年のフットボール

ノーベル文学賞作家、大江健三郎の代表作として挙げられることが多い作品。同賞を受賞したきっかけになった作品とも言われています。

文体や比喩表現、人物造形は独特で、確かに意味深長な文学作品ではあるのでしょう。しかし、表面上の物語、目に見える物語があまりにも面白くなさすぎます。

2. あらすじ

親友を自殺で失った根所蜜三郎。かつて60年安保闘争に敗れ、重い障害を抱えた子供を施設に預けたままとし、そしてその第一子の誕生以来、妻との性交渉ができなくなっていた。

心に闇を抱える蜜三郎のもとに、ある日、アメリカから弟の鷹四が帰ってくる。彼は劇団で学生運動家の役を演じていたが、その任を捨てて劇団から脱走したのだった。鷹四は故郷で一緒に暮らそうと蜜三郎を誘う。蜜三郎の妻である菜摘子、鷹四の友人である星男と桃子を連れ、四国の田舎に帰る兄弟。

しかし、故郷には大規模なスーパーマーケットが建っており、「スーパーマーケットの天皇」なる人物が村を牛耳っていた。鷹四は村の若者を集め、「万延元年の一揆」のようにスーパーマーケットを打ち倒そうとするのだが......。

3. 感想

安保闘争や障害児、朝鮮人との関係、近親相姦。あるいは、田舎の排他的な雰囲気といった各要素はいかにもこの時代の文学作品だと感じさせます。不能の夫とその妻、そして寝取られるという展開も、文学ってこういうの好きだよなという印象です。

そして、プチ学生運動さながらなに暴力革命でスーパーマーケットを打倒しようとする展開。そもそも、田舎の支配者がスーパーマーケットという点に、刊行された時代を感じさせます。もちろん、それらのモチーフは当時の何か重大な精神性を象徴するものなのでしょう。世代によっては感じ入る人がいてもおかしくないとは思います。

しかし、いまになって読み返してみれば、ただそれらのモチーフが流れてゆくだけの物語。特段、心に訴えかけるような、人々の喜びや悲しみ、優しさや勇気。そういったものが時代を超えて普遍的に表現されているとは言い難いものです。

兄弟がいがみ合いながら、プチ学生運動が予定通りに挫折するだけで、しかも、最後のどんでん返しもそれほど衝撃的でなく、今更それが分かってなに? というもの。

文体は読みづらさがありながらも面白く、表現の独自性は傑出しておりますが、それでも物語としては、時間とともに色褪せていくものに思われました。

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